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【連載】キャリアアップStory 私の「転職」と「いま」

【看護師の転職story】第9回 がん放射線療法看護の道へ21年目のキャリアアップ

取材 長島康恵

さいたま赤十字病院放射線科 がん放射線療法看護認定看護師

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がんの放射線治療は、技術の発展によって、根治目的から再発予防、症状緩和まで幅広く適用されており、身体侵襲やQOL低下も少ないため、今後もがん医療のなかで担う役割は大きくなると考えられています。

この分野では、装置や照射法の知識、セルフケア指導や有害事象対策の技術などと併せて、がん看護全般の知識をもつ看護師が求められています。今回は、がん放射線療法看護認定看護師資格の初の認定者となった看護師の1人を紹介します。

放射線療法中の体の変化に気付かない患者さんも多い

さいたま赤十字病院の地下2階にあるリニアック室(放射線治療室)。ドアを空けるとカラフルな椅子が並び、CT室やMRI室も併設されています。

ここでは、さまざまながんの患者さんが、主に通院で放射線療法を受けています。放射線による治療自体は数分で終わりますが、治療のための準備などで、待ち時間が長くなることもあります。

放射線科の常勤看護師であり、がん放射線療法看護認定看護師でもある長島康恵さんは、待合室で治療の順番を待っている患者さんの様子を観察し、気になる患者さんにそっと声をかけています。

「化学療法を経験した患者さんも多く、それに比べると放射線療法は楽だと受け止められているようです。そのため、例えば、皮膚障害などの有害事象や合併症が現れていても、『このぐらいは、大丈夫』と我慢してしまったり、治療の不安や疑問があっても、患者さんから訴えてくることはあまりないように思います」

待合室で患者さんと話す長島さんの写真

待合室で患者さんと話す長島さん。「困ったことや疑問に応える看護師として、患者さんに親しんでもらうこと」が目下の目標です。長島さんのスタンスは、あくまでも患者さんのペースに合わせて接すること。不安そうな患者さんの横にそっと座り、時にはお天気の話をしながら心を解きほぐして、患者さんの話に耳を傾ける

被ばく放射線量をチェックする機器の写真

被ばく放射線量をチェックする機器。スタッフは仕事中必ず決められた部位に装着し、定期的に累積被ばく量が確認され る

放射線療法看護に携わる看護師の役割

放射線治療の内容や有害事象については、初回の治療時に医師から時間をかけて説明し、その後、長島さんからももう一度説明するなどしてフォローしています。それでも患者さんの中には、症状がひどくなるまで気が付かない人もいます。

「最近のことですが、肝臓がんで腹部にステントを挿入している患者さんの腹部が、治療を受けに来るたびに膨らんできているのが気になっていました。患者さんに聞いても、『前にもあったから、大丈夫』と気にしていません。

私は腹水の貯留によるものではないかと思い、内科の受診を強く勧めました。そして受診した結果、腹部内で炎症を起こして腹水が貯留していることが分かり、内服薬で様子を見ることになりました。

放射線治療のために毎日来院する患者さんも、医師の診察については、毎回受けるわけではありません。特に問題がなければ、医師の診察が1カ月先という人もいます。

このように、患者さん自身は気が付かない、あるいは気にしていないような変化や異変を少しでも早く発見し、早期に対応できるように、患者さんの様子を観察したり、患者さんとの話から情報を収集するのも私の役割だと思います」

現在は、初回時の説明を口頭で行っていますが、長島さんは今後、パンフレットなどを利用して、より内容を詳しくし、患者さんが後からでも説明を確認できるような形にしたいと、準備中です。

リニアック室に常勤の看護師がいない!

同院に入職以来、循環器内科や神経内科、小児科・婦人科病棟など、さまざまな病棟での看護を経験してきた長島さん。これまでの看護について、次のように振り返ります。

「病棟を変わるたびに、新たな発見があり、勉強すべきことも出てきます。循環器内科では早期リハビリを、泌尿器科では褥瘡ケアをと、精一杯取り組んできました。ただ、内科病棟ではがんによるターミナルの患者さんが多く、毎日ケアをしていても、『私にいったい何ができるのだろうか』と考えてしまうほど追い詰められました」

そんな時期に、たまたま異動になったのが放射線科です。この外来には、自宅で生活しながら経過観察のための検査や放射線治療を受けるがん患者さんがたくさん訪れ、その姿に接することは、長島さんにとって新鮮な体験でした。しかし同時に、突き付けられたのは、リニアック室に常勤の看護師がいないという現実でした。

「患者さんは毎日通院して来るのに、治療について不安になったり、体調が悪くなっても、気軽に相談できる看護師が必ずいるとは限りません。気になる症状が出ていても、どの時点で医師の診察を受けたらいいのか分からないまま、対応が遅れてしまうこともあります。

ここに常駐の看護師が一人でもいれば、もっと生活に密着したアドバイスができるのに。患者さんのために、何とかしなければと思うようになりました」

そこで、まずは自分が相談窓口になろうと考えた長島さんは、最初は放射線技師から放射線療法について学び、学会の看護セミナーにも参加したりと、必死で勉強しました。ちょうどそんな時に、がん放射線療法看護認定看護師の教育課程ができたのです。

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