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【連載】フィジカルアセスメント症状別編

【黄疸の看護】原因・メカニズムと症状、アセスメント

  • 公開日: 2016/1/13

黄疸は血中のビリルビンが増加したことによって起こる症状です。黄疸が生じるメカニズムや原因疾患について整理しておきましょう。


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まずは、これを考えよう!

黄疸とは?

血中のビリルビンが増加して起こる症状

黄疸とは、血液中のビリルビンが増加して皮膚や粘膜、眼球結膜がビリルビンの黄色に染まって見える状態をいいます。ミカンなどを過剰に摂取すると手のひらが黄色くなることがありますが、これは柑皮症といって黄疸ではありません。

赤血球は120日くらいすると老化して脾臓などで壊されますが、このときヘモグロビンの一部が代謝されてできるのが非抱合型ビリルビンで、これはほぼ間接ビリルビンと言い換えられます。

間接ビリルビンはアルブミンと結合して肝臓に運ばれ、そこでグルクロン酸と結合して直接ビリルビンになります。さらに肝臓では、直接ビリルビンを主成分として胆汁が生成されると胆管に排出され、胆嚢で濃縮されて一時的に貯蔵されます。

胃に食物が入ってくると反射的に胆嚢が収縮し、胆道を通って、十二指腸に排泄されます。したがって、胆汁が黄色いのも、尿や便が黄色いのも、実はビリルビンの色というわけなのです。


白目、皮膚、尿の色などに症状が現れる

健康な人の場合、間接および直接を合わせた総ビリルビン量は血液1dL当たり1mg程度です。3mg/dLを超えると黄疸が生じるといわれています。

視診で分かりやすいのは白目の部分で、黄色っぽく見えます。5mg/dL以上になると、皮膚でも黄色が確認できるといわれています。そのほかに、尿の色が濃くなったり、皮膚のかゆみなどの症状も出現することがあります。

黄疸の原因とは?

黄疸はビリルビンの生成から排泄までの過程で問題があると起こる

黄疸といえばすぐに肝臓疾患が思い浮かぶかもしれません。しかし、肝臓疾患以外にもいろいろな原因があります。ここでは黄疸の原因について、ビリルビンの生成から排泄までの過程のどこに問題があるのか、ということに注目して考えてみましょう。

溶血性黄疸

生成段階に目を向けると、溶血性貧血などで赤血球が過剰に壊されてしまい、肝臓で処理しきれなくなると間接ビリルビンが血中にあふれてしまいます。

過剰生産ではなくても、薬剤、敗血症、ジルベール症候群などにより、間接ビリルビンを肝臓に取り込められないという事態が起これば、やはり血中にあふれてしまいます。これを溶血性黄疸といいます。

肝細胞性黄疸

次に、肝臓に取り込めても、例えば、肝炎、肝硬変、肝臓がんなど、肝臓の細胞に障害があると、間接ビリルビンを直接ビリルビンに変換できません。その結果生じる黄疸が肝細胞性黄疸です。

胆汁うっ滞性黄疸

また、せっかく直接ビリルビンに変換できても、胆汁に混ぜることができなければ、肝臓内にたまってしまうので、肝内胆汁うっ帯性黄疸を生じます。ウイルス、アルコール、自己免疫などで、肝臓内の細胆管が障害されて起こる黄疸です。

閉塞性黄疸

さらに、胆汁に混ざっても、胆管や腸管に排出するルートが閉ざされていると、肝外胆汁うっ帯性黄疸を生じます。これは閉塞性黄疸とも呼ばれています。

体質性黄疸

間接ビリルビンを肝臓で直接ビリルビンに変換する際に、必要な酵素が欠乏していてうまく変換できずに、黄疸の症状が出てしまう体質性黄疸もあります。

緊急性の判断と原因を精査しよう!

黄疸で緊急性が高いのは劇症肝炎が原因と考えられるとき

まずは、原因疾患を治療しなければ黄疸は改善しません。ビリルビンに視点を置くと、いくつかの原因疾患リストが想定できます。さらにここで大事なのは、緊急性を要する原因疾患からリストアップして精査していくことです。

黄疸の場合、最も緊急性が高いのは、急性肝炎のなかでも特に重症な劇症肝炎です。肝臓の細胞が急激かつ大量に壊れてしまい、身体に必要な物質を合成したり老廃物を排泄したりという、肝臓が担っている生命維持機能が低下する疾患です。速やかに適切な治療を行わないと死に至る危険があります。

緊急性が高くないのは、体質性黄疸

逆に、肝臓その他に原因疾患がみられないのに軽微な黄疸が生じる場合は、体質性黄疸なので大きな心配はありません。代表的なのはジルベール症候群ですが、検診やほかの疾患の受診時に血液検査で発見されることが多いようです。

いずれにしろ、患者さんの外観や症状の訴えから黄疸が見られたり、その疑いがある場合、あるいは検査データで血清ビリルビン値が高い場合には、原因精査と同時に緊急性の判断をしましょう。

黄疸のアセスメントと看護のポイント

問診で原因を推定しながら精査する

患者さんの状態を観察しながら、問診で状態を聴き取りましょう。

1.発症時期やきっかけを聞く

いつ黄疸に気が付きましたか?

■こんな質問で絞り込もう

「誰かに「黄色い」といわれたことがありますか?」
「黄色いといわれたのはいつ頃ですか?」
「皮膚や白目が黄色いと感じますか? それはいつ頃からですか?」
「尿の色が以前より黄色くなっていますか?」
「何か薬を服用していますか? また新しく服用し始めた薬はありますか?」
「色の濃い野菜をたくさん食べたり、野菜ジュースを飲んだりしていませんか?」
「ミカンをたくさん食べましたか?」

■アセスメントのヒント

● 発症時期の確認で、急性か慢性かが判断できます。急性の場合は劇症肝炎など重篤な疾患が隠れている場合があるので、注意が必要です。ただし、私たち日本人のようにアジア系の場合、皮膚の色の変化はわかりにくいので、患者さん自身の自覚症状が乏しいことがあります。第三者に指摘されて気付くことが多く、指摘されても気に留めないで受け流してしまうことも少なくありません。そこで、発症時期を確認する質問のキーワードを工夫しましょう。
● 発症時期の直前に何かいつもと違うことがあれば、それがきっかけとなった可能性があります。
● 薬の影響で黄疸が生じることがあるので服薬にも注意しましょう。
● ミカンを食べ過ぎて生じる柑皮症や黄色い色素であるカロテンを過剰摂取した場合に出現する症状は、黄疸ではありません。
● 尿や便の色は黄疸の程度や原因の手がかりになります。
● ウイルスが原因の場合には急激に進行する恐れがあります。

2.随伴症状を聞く

ほかに気になることはありませんか?

■こんな質問で絞り込もう

  1. 「熱はありませんか?」
  2. 「お腹は痛くありませんか?」
  3. 「体がだるくないですか?」
  4. 「気持ち悪くないですか?」
  5. 「皮膚のかゆみはないですか?」

■アセスメントのヒント

● 急性肝炎は初期症として、発熱、体がだるい、右脇腹痛、吐き気などがみられます。劇症肝炎も同様ですが、これらの症状が急性肝炎より重く、急激に出るのが特徴です。
● 急性肝炎の場合、黄疸が出ると初期症状は軽くなっていきますが、劇症肝炎の場合は逆に悪化します。
● 感冒症状と消化器症状があり、さらに倦怠感がある場合は、ウイルス性肝炎の可能性が考えられます。
● 上腹部から右脇腹にかけて、急激な痛みが生じ、背中に広がったり、数分から数十分間隔で間欠的に生じたりすることがあれば、胆管結石の疑いがあります。胆管から結石を十二指腸に排泄するときに激痛が生じます。
● 結石や腫瘍などで胆汁の流れがせき止められていると、急性胆管炎を併発し、黄疸のほかに発熱や腹痛も起こります。
● 皮膚のかゆみを伴う場合には、肝硬変やウイルス性皮膚炎の可能性があります。

バイタルサインをチェックし緊急性の有無を確認する

患者さんへの問診や症状の観察、バイタルサインの測定結果から、まずは緊急性を判断します。

バイタルサインの確認

意識レベルの低下は見られないか、発熱していないかも確認します。意識レベルが低下している場合は、呼吸状態の評価も忘れないようにしましょう。

ショック症状の有無

バイタルサインに異常があった場合、冷汗や顔面蒼白などのショックの5徴候症状が見られないかを確認します。

尿・便の色の確認

蓄尿している場合は、尿の色を確認しましょう。また、可能なら便の色も確認します。

皮膚や結膜の観察

患者さんの皮膚や結膜を見て、黄疸の程度を確認します。また、浮腫の有無や掻痒感によって引っかいた跡がないかも確認します。

アセスメントを看護につなごう

劇症肝炎は黄疸の原因疾患リストの筆頭にあり、生命危機につながるので緊急性の判断や緊急対応が不可欠です。
速やかな対応が必要なのは、胆汁がせき止められて急性胆管炎を併発している場合も同様です。うっ帯した胆汁を体外に排出する胆道ドレナージが必要となります。
また、緊急性の低いその他の疾患であっても、黄疸は皮膚や尿の色、結膜の色など見た目が通常ではない症状なので、患者さんが不安やストレスを感じることがあります。そうした心理的な面にも配慮しケアを行いましょう。

意識レベルの低下など変化を見逃さない

劇症肝炎の疑いが高い場合は、意識障害を起こす可能性があります。したがって、舌根沈下や嘔吐物によって気道が塞がれないように注意し、可能なら回復体位を取るようにしましょう。
致死率が高いので、劇症肝炎の疑いがあれば、ただちに医師を呼び、緊急対応につなげる必要があります。また、急激に悪化して昏睡状態に陥ることもあるので、意識レベルを継続的に確認することも必須です。
なお、うっ帯性黄疸に伴って急性胆管炎を起こしている場合も急変の恐れがあるので要注意。進行すると意識レベルの低下やショック状態に陥り、生命危機を招くので、変化を見逃さないように注意しましょう。

不安や不快感を取り除く看護を

軽度の黄疸でも、溶血性黄疸などは貧血を伴うことがあるので、転倒・転落に注意しましょう。
黄疸は皮膚の黄染だけでなく、汗などの体液も黄色くなります。そのため、肌着なども黄染されることがあります。こうした黄染症状が出ていると、患者さんにとって、不安や不快感など精神的な苦痛につながるので、下着の交換を促したり、黄染の理由を分かりやすく説明することが心のケアにも通じます。
黄疸はかゆみを伴うこともあります。皮膚の乾燥を防ぐ、重曹入りのお湯に浸したタオルで清拭するなど、かゆみ対策を行うことも大切です。こうしたスキンケアを行うことは、黄疸に伴う苦痛の軽減や感染予防につながります。
また、薬剤が原因の黄疸である場合には、今後その薬剤を使用しない、あるいは医師に相談するよう、患者さんに伝えることも大切な看護です。

まとめ

黄疸というとすぐに肝臓疾患と短絡しがちですが、黄色く見える原因はビリルビン。ですから、ビリルビンの生成から排泄までのプロセスに目を向けると、問題の発生場所と原因疾患が推察できます。
このように、目に見える症状から、目に見えない患者さんの身体の中で起こっていることを考察して看護につなげていくのが、フィジカルアセスメントです。(ナース専科「マガジン」2010年7月号より転載)

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