【連載】医療事故、あなたならどうする?

最終回 法律関連用語 医療事故が起きたときに生じる責任について?

監修 水島幸子

社団法人大阪府看護協会および社団法人兵庫県看護協会顧問弁護士。


今回は医療事故が起きたときに生じる責任について、法律関連用語の解説を交えながら、説明します。


医療事故が起きたとき、3つの責任が発生する

医療事故によって被害が発生した場合、事故によって発生した身体的、精神的、経済的損失などを賠償する(民事上の責任)、行為者が行為に対して国から刑罰を受ける(刑事上の責任)、事故を起こした当事者が医療従事者としてふさわしい資質を備えているかどうかを監督行政機関から判断を受ける(行政上の責任)という、3つの責任が発生します。以下に3つの責任に関連する言葉を説明します。

損害賠償責任

医療事故によって患者さんに被害が生じた場合、病院あるいは医療者個人が民事上の責任として、1)債務不履行責任、または2)不法行為責任に問われることになります。

債務不履行責任は、患者さんと医療機関との間に診療契約があることを前提とし、医療機関の開設者に対して患者側が損害賠償を求める形になります。一方、不法行為責任は契約関係の有無を問わないので、民法所定の要件を満たした場合に、加害者である病院あるいは看護師個人が、被害者である患者側に対して負うことになります。

示談(和解)

示談とは、裁判手続きによらず当事者間の話し合いで解決するということで、裁判外での和解を意味します(裁判上でも和解ができます。裁判上の和解と区別して示談といいます)。

示談(和解)では、双方が合意すれば、損害賠償の金額のみに内容を限定する必要はなく、謝罪や再発防止努力など、当事者が解決に向けて納得するための事柄を、合意内容に含むことができます。しかし話し合いで解決ができなかった場合には、裁判所の調停手続き、訴訟手続きが利用されることになります。

業務上過失致死罪

医療事故が発生した場合、医療者個人が業務上過失致死傷罪(「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する」(刑法第211条第1項前段))に問われる場合があります。

民事責任の場合と異なり刑事責任の場合は、加害者である看護師個人のみの責任が問われます。なお、刑事手続きにおいて、起訴されるまでは「被疑者」、起訴された後は「被告人」と呼ばれます。

また、刑罰として懲役、禁錮、罰金がありますが、罰金はあくまで国に納付するものであり、被害者に支払うべき損害賠償金とは異なります。罰金を払ったので損害賠償をしなくてもよい、損害賠償をしたから罰金が科されることはない、というものではありません。

そして、民事で被害者と示談が成立していたとしても、それによって刑事上無罪になるわけでもありません。ただ、被害者と示談が成立していることは、情状の一つとして重視されます。

行政処分

医療従事者としての資質等を備えているかどうかの判断を監督行政機関により受けることで、保健師助産師看護師法あるいは看護師が国家公務員や地方公務員である場合は国家公務員法・地方公務員法により、看護師免許の取り消しまたは業務の停止処分を受けたり、免職、停職、懲戒、減給、戒告などの処分を受けることです。

看護師免許と医行為

医師法17条により「医師でなければ、医業をなしてはならない」と規定され、医行為の中には医師の指示によっても看護師が行うことができないことがあるとされ、これを「絶対的医行為」といいます。

また、医師の指示があれば看護師が行うことができるのは「相対的医行為」といい、診療の補助がこれに当たります。一方、療養上の世話は看護師本来の業務であり、医師の指示によらず原則として看護師の裁量で行うことができる行為で、これを「絶対的看護行為」といいます。

看護師免許によって業として行うことが解禁されている行為は、保助看法5条によれば「絶対的看護行為」である「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話」と、相対的医行為である「診療の補助」です。そして保助看法31条には、看護師でない者がその業を行うことはできないと規定されています。

これに違反した場合は2年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処せられます(保助看法43条1項)。例えば、無資格者に看護業務を代行させていた場合などは、代行していた無資格者はもちろんのこと、代行をさせていた者も保助看法違反に問われることになります。

次ページでは、看護師のみなさんへのメッセージを掲載します。

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