【連載】初歩からわかる看護研究

Step2 【看護研究】テーマのモトは現場のギモン

監修 富田真佐子

四国大学看護学部看護学科・教授

看護研究を始めると、最初に当たる関門が「テーマ決め」です。自分が何を疑問に思うのか、何を知りたいのか、これを明確にしておかないと、研究方法も決まりません。今回は現場で感じる疑問を「テーマ」にしていく過程を学びます。


【看護研究まとめ記事】
* 看護研究とは?テーマ選びと書き方まとめ(計画書、文献など)

臨床で出合う疑問から出発して「問いのリスト」に

今回から具体的な研究の進め方について説明していきます。まずは研究テーマをどうやって決めていくのか、最初の段階について説明していきましょう。

前回でもお話したように、日常の看護業務の中で感じる「疑問」や「問題」が、テーマにつながります。「患者さんのことがよくわからない」とか、「私が行っている 看護ケアって本当にこれで良いのだろうか?」と、思うことはありませんか? ほんの小さな気づき、それが看護研究の出発点です。

忙しい業務の中では何となく見過ごしてしまうかもしれませんが、「あれ?」と思うことがあったらすぐに書き留めておきましょう。看護研究のヒントになるかもしれません。

さて、何か「疑問」や「問題」が見つかったとします。その何かうまくいかない状況(例えば「患者指導がうまくいかない」等)に気がついたとしたら、その現象を書き起こしてみてください。頭の中でぼんやり考えていても、はっきりしてきません。書くことで必ず整理されていくものです。

さらに、そこから「何がわからないのか」を短い言葉にしていきます。例えば「患者さんが知りたい情報は何か」というふうに、短い言葉でいくつか挙げてみてください。あなた自身の言葉で構いません。これを「問いのリスト」(図参照)とします。

テーマの導き方

この問いのリストから重要な「問い」を選びます。何を知ることが最優先なのか、一番知りたいことは何なのか。いくつも欲張ってはいけません。ひとつ の研究の中で「問い」がいくつもあると、焦点がぼやけてわかりにくい研究になってしまいます。Simple is the Best!です。

続いては、研究の設計図となる「研究デザイン」の選び方です。

どのように研究を行うかのデザインを6タイプから考える

問いのリストの中から「問い」をひとつ選んだら、次にそれがどのような種類の問いなのかを、見極めます。研究にはいくつかの種類があります。どんな種類の研究なのかを表す研究デザインについて説明しましょう。

「デザイン」とは図案、設計図あるいは構想などを指します。洋服のデザインならまずイメージする絵を描き、それを元に型紙を作って洋服に仕上げていきますね。研究でも最初に、どのように行っていくタイプの研究なのかを大まかに示すと、わかりやすくなります。

研究デザインについて、以下6つのタイプに分類して説明しましょう。研究デザインの分類については、さまざまな分類がされています。本稿では、著者が看護研究の指導に数多くかかわった経験に基づいて、臨床でよく行われる研究を6つに分類しました。

あなたの「問い」はこれらのうちどのデザインの研究にあてはまるのかを、考えてみましょう。この分類は、「問い」についてどのくらいわかっているのか、答えが出せるのかを基準に分類しています(表参照)。

研究タイプと「問い」の例

Type1:因子探索研究

因子探索研究は、ぼんやりとそこに気になる現象があるというだけで、「問い」についてまだほとんど答えを述べることができません。これまでに同様のテーマで行われた研究も少なく、「わからないことだらけ」という段階です。ですからそこに何があるのか、話をじっくり聞いたり、観察する必要があります。

Type2:実態調査研究

実態調査研究は、そこにどんな問題があるか少し見えています。ある程度研究も行われてきています。でもまだその実態がはっきりしていません。そこで、その問題についての頻度や割合を出して、全体像をつかもうというものです。

Type3:関係探索研究

関係探索研究では「問い」についてある程度その答えが見えてきています。問題とするある現象(結果)がなぜ起こっているのか、原因がいくつか考えられますが、本当にそれが原因なのかは、まだはっきり言えません。例えば、「不安はなぜ起こっているのだろう」とか「ある症状には何が影響しているのだろう」といった「問い」です。これは、問題が起こっているという「結果」に対して、その「原因」を特定していく研究です。

Type4:比較研究

さて、問いに対する答えを出すレベルが、だんだん上がってきました。このタイプでは、気になる現象について「ある条件をもった人によく起こっているようだ」と条件を絞ります。先ほどのType3:関係探索研究では気になる現象(結果)に対してその原因がたくさんあってひとつに絞ることはできませんでしたが、このタイプでは原因をひとつに絞ります。

例えば「初産であることが出産に対する不安に影響しているのでは?」という問いならば、経産の妊婦さんと比較することによって初産の妊婦さんの特徴や、初産か否かがさまざまな不安に影響を与えているのかを知ることができます。

Type5:準実験研究

この研究は最終段階の研究です。研究が進み、気になる現象についてその原因が明らかになってきたら、その原因を取り除く看護ケアの方法を考えることができます。これは実際にその看護ケアを、実験的に行う研究です。結果の分析には統計的な手法を用います。

Type6:実践報告

臨床で活躍されている皆さんが、最もよく取り組む研究です。あなたの病棟などで起こっている問題について、それを解決するための方法として新しい看護実践を試み、どのくらい解決したかを評価します。

このデザインは、問題解決型アプローチともいわれ、「研究」に含まないとする意見もあります。このタイプは確かにほかのタイプのように、新しい発見をするものではありませんが、看護学は臨床あっての学問ですから、研究と実践は切っても切り離せない関係にあります。本稿では実践報告も、看護研究として取り上げていきます。

次回は、研究の設計図となる研究デザインの決め方について学びます。

(『ナース専科マガジン』2010年11月号より転載)

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