【連載】初歩からわかる看護研究

Step20【看護研究】アンケート(その1)質問文と選択肢の作成ポイント

監修 富田真佐子

四国大学看護学部看護学科・教授

これまで説明したように、概念枠組みに書いた研究疑問に対する「答え」の一つひとつが質問項目です。質問紙法はType1因子探索研究以外の研究で、最もよく用いられる方法です。概念枠組みから質問項目を抽出し、それぞれの測定方法を決め、質問文や回答の選択肢を作成します。今回は、質問文と選択肢の作成する際のポイントを説明していきましょう。


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概念枠組みから質問項目を抽出し測定方法を決定する

概念枠組みの中の何がデータ収集項目になるかについては、「データ収集する前の重要なステップ」「実践の研究で問題解決を目指す」でタイプ別に説明しましたので、ご確認ください。全てのタイプの研究に共通するのは、対象者の基礎データ(基本的属性)と研究疑問に対する答えです。

さらにType3関係探索研究では「誰々の○○に影響するものは何か」の「○○」、(「データ収集する前の重要なステップ」の例では「QOL」)、Type4比較研究は「原因があるか、ないか」とコントロール、Type5準実験研究ではコントロール、Type6実践報告は、実践状況の評価と問題解決の評価(実践によって問題解決できると期待できること)が、質問項目になります。Type5準実験研究の実測データやType6実践報告の実践状況の評価を表すデータなど、研究者が記入する用紙は調査票として作成します。

質問項目は、既存の尺度を利用するのか自分で質問文を作成するのか、1項目ずつ検討していきます。できるだけ客観的に示すには精密な機器を用いて測定するのが最も望ましいのですが、心理的なことなどは機械で測定するわけにはいきません。

そこで主観的なことを客観的な数字で表すための「尺度」が数多く開発されています。尺度については、【Step22】概念枠組みをデータ収集につなげるで説明しましたが、質問文や質問順番、回答の選択肢を勝手に変えてはいけません。そのまま使用してください。

質問文と回答の選択肢を上手に作成するポイント

自分で質問文や質問文に対する回答の選択肢を作成するときは、次のことに注意してください。

分かりやすい文章にする

看護師が日常的に使っている言葉でも、一般的にはあまり使用しない用語もあります。子どもや高齢者など対象者の特性も考慮して、分かりやすいシンプルな質問文を作成してください。医学用語や看護用語などは使わず、どうしても必要な場合は注釈をつけておきましょう。

二重質問をしない

例えば、「~について不安や不満を感じたことがありますか」では「不安」と「不満」を二重に聞いています。一つの質問に二つのことを聞いているものを二重質問といいます。「不安」だけど「不満」ではない場合「はい」と回答してよいのか「いいえ」としてよいのかわかりません。この場合、質問文は2つに分けます。

曖昧な質問をしない

例えば、「お酒を飲みますか。はい・いいえ」では年に数回付き合い程度にお酒を飲むだけの場合、「はい」にすべきか「いいえ」にすべきか迷います。頻度や量を限定して質問するか、選択肢として量と頻度を別に設定するなど具体的にしましょう。

自由回答形式にしない

回答の形式は、複数回答、単数回答、自由回答があります。自由回答は、例えば図のように「退院後の生活について、分からないことがありますか。自由にお書きください」というものです。

回答形式の違い

特に研究初心者に多い質問の仕方ですが、自由回答は極力避けてください。「退院後の生活について分からないこと」は、既に研究疑問に対する「答え」として概念枠組みに記入されているはずです。この答えを回答の選択肢とします。

もし選択肢が用意できないならば、研究疑問に対する「答え」が十分に考えられていないということになります。もう一度概念枠組みに戻って考えてみてください。「答え」を質問文や選択肢として挙げ、最後に「その他」として記載できる欄を設けるのはかまいません。全てを自由回答にすることの問題点は、対象者によって書いてくれるかどうかバラツキが生じることです。

図の例で、もし何も書かれていなかったとしても、退院後の生活について分からないことがないとは限りません。書かなかっただけかもしれないのです。また、自由回答は分析に手間がかかります。度数や割合(何人、何%か)を算出することもできません。

複数回答を分析するときは、○を付けた場合を「はい」、○を付けていなかった場合を「いいえ」と解釈します。つまり複数回答の数だけ質問をしたのと同じです。しかし、回答者によってたくさん○を付ける傾向の人とそうではない人とで、回答にバイアスがかかる可能性があります。

回答者によっては、最初の項目だけみて最後のほうの回答項目は読まないかもしれません。単数回答にして一つずつ質問する方が正確です。特にクロス集計やχ2検定(後の回で説明)を行う場合は、複数回答にしないほうがよいといわれています。

誘導しない

例えば、「糖尿病の治療として運動療法は重要です。あなたは普段運動をしていますか」という質問は、暗に「運動しなければならない」というメッセージを送っています。このような誘導は、一つの質問文の中になくても、質問紙の依頼文や説明文に入っているケースがよく見られますので注意してください。

次は選択肢の形式について説明します。

集計しやすく結果も示しやすい選択肢の形式

質問文に対する回答形式のポイントは、答えやすいことと集計しやすいことです。回答を数値データとして扱う場合の種類には名義尺度、順序尺度、連続尺度があります(図1)

回答形式の種類

例えば男性・女性など言葉に番号を付けて集計しますが、1が男性でも2が女性でも、逆でもかまいません。このように番号や順序に意味がない回答データを名義尺度といいます。

「1.そうではない・2.ややそうではない・3.ややそうだ・4.そうだ」のように順序には意味があるが、1と2の間、2と3の間といった間隔が等しいことまでは保証しないものを、順序尺度といいます。順序が4段階のものは4段階順序尺度です。図2のようにいろいろな段階の順序尺度があります。

順序尺度の例

奇数の順序尺度の場合注意しなければならないのは「どちらともいえない」です。ちょうど中間を示しているのですが、人によっては「該当しない」場合に「どちらともいえない」に○を付けてしまう人もいます。注釈を付けておくか、該当しない場合も考えられるようなら「該当しない」を別に設定し、該当しないに○を付けた場合、分析上は無回答とみなします。

また質問項目に対する順序尺度の選択肢は、統一したほうが答えやすく、後で結果も示しやすくなります。図3のように質問1問ずつに回答の言葉が違う選択肢を作成すると、回答者はいちいち選択肢を読まなければなりません。質問文を体言止めにして、選択肢をそろえると効率よく○が付けられます。

回答選択肢を統一した例

順序尺度に付ける番号ですが、例えば「不安がありますか」に対し4段階の順序尺度で、平均値が3.5だったとします。「そうだ」を4にしていれば不安の平均値3.5は高いと解釈できますが、もし「そうだ」を1にしていると、逆に不安の平均値は低いということになります。順序尺度の場合、質問に対する度合いの大きさと番号の大きさはそろえたほうが、後で平均値や相関係数を算出したときに混乱しません。

最後に、連続尺度とは血圧や身長、年齢など実数で表すものです。連続尺度はさらに間隔尺度と比尺度に分けられますが、「0」に「無」という意味があるかないかという違いだけで分析上は連続尺度と括ってしまっても問題ありません。

また、よく20歳代、30歳代のように階層別の回答を用意する場合がありますが、これでは平均値を出すことができません。階層別の集計はExcel(関数FREQUENCY)を使えば簡単にできますので、できるだけ実数のまま回答してもらったほうがよいでしょう。

Type2~4の研究タイプ別・質問文の作り方

Type2実態調査研究では、研究疑問に対する「答え」をそのまま質問文にします。Type3では、原因と結果の関係を統計的手法によって明らかにするので、原因と結果は別々に質問します。

例えば図4のようにType2実態調査研究の研究疑問が「外来患者の外来看護師に対する満足について何がどのくらいあるか」だとすると、「答え」である「外来看護師に対する満足」についてダイレクトに質問をします。Type3関係探索研究では研究疑問は「外来患者の外来看護師に対する満足に影響するものは何か」となり、結果である「満足」と原因である「答え」は別々に質問します。

Type2とType3の質問の違い

Type4比較研究では、研究疑問が「女性高齢者において転倒による骨折経験がある人とない人では身体動作能力について差があるか」(【Step23】因果関係を明確に示すデータの収集ポイント(その1))だとしたら、転倒による骨折経験の有無と「答え」である身体動作能力についての質問(この場合は測定値)が必要です(図5)。

Type4比較研究の質問文

(「ナース専科マガジン」2010年9月号より転載)

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