【連載】500人のギモン&お悩み徹底解決

看護師が知っておくべきMRSAに対する感染予防策

解説 熊谷祐子

現・自治医科大学看護学部 講師

MRSA(エムアールエスエー)に感染した患者さんに対して普段行っている感染予防策に加え、何か特別なことをする必要があるのでしょうか。
感染が広がるのを防ぐためにも、必要なことはしっかりと知っておきたいものです。今回は、MRSAに感染した患者さんの環境整備や病室の清掃などについて解説します。


Q MRSAの患者さんに対する感染予防策を教えてください。大部屋で対応する場合にはどのような清掃が必要ですか。また、ごみはすべて感染用袋に入れるべきですか。

A MRSAは接触感染によって伝播する感染症で、CDCガイドラインでは「標準予防策の徹底と必要時の接触予防策の適用」とされています。

標準予防策の徹底と必要に応じて接触予防策を

常在菌でもあるMRSAは日和見感染症であり、保菌しているだけでは発症せず、免疫力の低下した易感染者に感染・発症するという特徴があります。また、飛沫感染はしないことから、MRSA陽性患者さんであっても一定条件を満たしていれば個室隔離の必要はありません。その一定の条件とは、 (1)MRSAの標準予防策が徹底されている、(2)MRSAの混入した体液によって環境を汚染する可能性がない、(3)患者さんが手洗い・手指消毒を適切に実行できる、が遵守できることです。これらができない場合には、個室隔離となることがあります。

大部屋で対応する場合には、出入り口に近い側にベッドを配置します。隣のベッドとの間隔は1m以上離し、ベッド間をカーテンで仕切るようにします。 ベッドを出入り口付近にすることで、看護師が入室してすぐにカーテンの外側に置いた予防着をつけ、処置することができます。同室の患者さんへの処置が必要 な場合には、MRSA患者さんを最後にします。

続いて、医療従事者による感染拡大防止について解説します。

標準予防策を遵守することが重要

MRSA感染で最も注意しなければならないのは、汚染された医療器具や環境表面に触れた医療従事者による感染の拡大です。それには、標準予防策(手指消毒の徹底)の遵守が重要になります。患者さんに直接接触する場合には手袋、エプロンの着用、吸引時など体液に曝露する可能性のある場合ではマスクの着用も必要です。体温計や血圧計などはMRSA患者さん専用にし、共有するパルスオキシメーターやモニター類などは使用後にアルコールで清拭します。考え方の基本は、患者さんのスペースから菌を持ち出さないこと、その区域に留めておくということです。

また、MRSA感染の患者さんのケアに限らず、気をつけたいのが電子カルテです。精密機器なので消毒が容易でなく、電源を切り消毒することが必要になります。ケアの後、電子カルテを使用する際は、手洗いや手指消毒を忘れずに行います。さらに、カーテンやベッド柵などにも頻回に触れるので、退室後は衛生的手洗いを正しく行いましょう(手洗いの際には、マニキュアのエナメル質が剥がれかかった爪の縁や腕時計の跡などに、洗い残しがないように注意します)。

病室の清掃回数は1日1回を目安に

病室の清掃については、MRSAは乾燥に強く埃とともに移動するので、できるだけ埃が舞い上がらないように行うことが大切です。清掃回数は1日1回で、シーツから菌が落下するので、先にベッドメーキングを行ってから床を清掃します。埃を立てないために濡れたモップなどを使って汚れをとり、その後、乾燥させます。その区域で出たゴミはすべて専用のゴミ袋に入れて、最後に口を縛って運び出します。

面会に来られた家族に対しては、健康な人は感染しないこと、免疫力が低下したときに発症することを説明したうえで、家族が伝播者とならないために、手洗いや手指消毒の徹底への協力を求めていくことが必要になります。

次回は、清潔・不潔区域でのガウンテクニックについて解説します。

(ナース専科「マガジン」2010年5月号より転載)

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