第8回 子どもに現れる反応(後編)
- 公開日: 2011/9/6
病気に対する親の不安が、子どもの体に現れる場合も
前編で述べてきたように、親ががんになった場合、感情面、行動面での変化が子どもには多く見られます。特に、親が強い不安をもつ場合は、子どもに与える影響も大きく、子どもも強い不安を抱くようになるといわれています。泣いたり、怒ることで自分の感情を表現することもあります。
がんの親をもつ子どもは、特にネガティブな反応が見られることが多く、時に、身体的な症状がみられることもあります。この場合、どちらかというと身体に変化が生じるわけではなく、不安や恐怖などの気持ちが体に影響を与えるために起こる症状といえるでしょう。
胃痛や食欲不振は、ストレスからくる症状と考えられます。また、学校の先生から「授業中に居眠りが多くなった」と指摘されるのは、夜、不安で眠れないからかもしれません。夜眠れなかったり、気持ちが落ち着かないことで、なんとなく上の空になったり、授業中の集中力も低下し、さらにそれが長期化した場合には、成績が低下することも予測されます。
このほか、たまった我慢が、友だちと喧嘩する、物にあたるなどの行動として現れたり、友達と遊ばなくなるなど、人とかかわりを避ける傾向が見られたりします。
親の体の変化を「怖い」と感じることも
患者さんの身体的な変化に、子どもは驚くといわれています。例えば、手術痕、化学療法中の脱毛や吐気などの副作用、そして、ターミナル期ではるい痩が挙げられます。
これまでと違う親の姿に、子ども自身が「怖い」と感じることがあります。その際には、身体的な変化はあるけれども、「いままでと同じお母さん/お父さん」であることを説明し、子どもの恐怖心を和らげることが重要です。
また、親が入院中の場合、洗濯ものを取り込む、洗いものを手伝う、妹や弟の世話をするなど、子どもの家庭内での役割が増えてきます。子どもに負担となることもありますが、親の役割を担えることで、子ども自身が親のがんに向き合えることも示されています。子どもの頑張りを認め、褒めることも大切なのです。
親の死を前に、子どもは何を望んでいるか
ターミナル期にある親を看病した経験をもつ子どもに行ったインタビュー調査から、子どもがもつニーズには以下のものがあると明らかにされています。
このように、子どもなりに、「親の状況の本当のことが知りたい」「親を苦しませないでほしい」と思う一方で、「何でもなく過ごしたい」といった、相対するニーズをもっていることがうかがえます。
みなさんが勤務されている病棟に、がん患者さんの子どもが訪れた場合は、子どもがこのようなニーズをもっていることを念頭に置き、患者さんとその子どもがよい時間が過ごせるように配慮することが大切になるでしょう。
カテゴリの新着記事
グリーフケアとしての緩和ケア
がん患者の痛みや苦しみは、症状によるものだけでなく、社会的・精神的・スピリチュアルなものまでさまざまであることを、特集の冒頭でご紹介しました。緩和ケアは、このように患者がもつ全人的苦痛に対するケアといえますが、同時に家族の抱える痛みへのケアでもあるといえるでしょう。それ
-
-
- グリーフの種類(予期悲嘆、通常のグリーフ、複雑性悲嘆)
-
-
-
- 【グリーフケア】看護師はどう関わる? 死別で感じる4つの悲嘆とは
-
-
-
- ケアリングとは? 「ケアリング」で看護師が成長する!
-
-
-
- 患者の死を乗り越えるには? 看護師自身のグリーフサポート
-
アクセスランキング
心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と
心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...
【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について
血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...
吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ
*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...
人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ
みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...
採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等
採血とは 採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...
心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形
*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは 心臓には、自ら電気信...
第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、
バイタルサイン測定の意義 小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...
術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な
患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査 術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...
サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下
*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...
第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用
【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...