【連載】難しい患者さんの日常ケア

ドライスキンの患者さんのケアのコツ

解説 丸山弘美

東京慈恵会医科大学附属病院 皮膚・排泄ケア認定看護師

【目次】


スキンケアが難しい患者さんへの対応のキホン

スキントラブルの原因のベースは、ほとんどが皮膚の乾燥──ドライスキンです。まずはそのメカニズムを理解しておくことが基本です。

皮膚の角質は、外界からの刺激の侵入を防ぐバリア機能とともに、水分保持機能も有しています。角質細胞の水分量は、皮脂膜が皮膚表面を覆い、角質細胞間脂質が細胞を結びつけ、細胞内の天然保湿因子が水分と結びつくことで保たれています。しかし何らかの原因で、角質細胞間脂質や天然保湿因子が減少すると、細胞間にすき間ができ体内の水分が蒸発したり、水分を保持する力が弱まったりして皮膚の水分減少が起こります。これがドライスキンの状態です。

ドライスキンの状態が、さまざまなトラブルを招く

つまりドライスキンであるということは、細胞間同士の結合が弱くなっている状態。皮膚の亀裂、弾力性の喪失、わずかな刺激による表皮剥離などの症状が起こります。掻痒感も発生しやすくなります。そのおもな原因には、加齢、セラミドの代謝異常をきたす疾患、薬剤などがあります。高齢者の場合は、栄養不足などによる皮膚の脆弱化が加わり、スキントラブル発生のリスクが高くなります。スキントラブルへの対応のキホンは、ドライスキンの改善です。つまり「保湿」と「保護」が最も重要。これを徹底する一方で、症状に応じた対応を行うことが必要になるのです。

皮膚の構造図

皮膚剥離が起こりやすい患者さんにどう対処する?

〔原 因〕

表皮剥離は、ドライスキンにより角質細胞の結合力が弱まっているところに、化学的刺激や器械的刺激が加わると容易に起こります。肝疾患や腎疾患、放射線療法など、疾患や治療により脆弱化した皮膚でもリスクは高くなります。

起こりやすいのは、粘着テープ、ドレッシング材などを剥がすときです。たとえば、ストーマ創部やカテーテル固定箇所などで見られます。透析患者さんもリスクが高く、浮腫が見られる皮膚に粘着テープを使用する場合、リスクはさらに高まります。
 また、尿失禁、便失禁、ドレーンからの浸出液によるただれも原因になります。

〔対処法〕

●予防的スキンケア

剥離のリスクが高い脆弱な皮膚に対しては、予防的スキンケア──「清潔」「保湿」「保護」を行うことが基本です。また、十分な水分、栄養の摂取で体内からも乾燥を予防します。

清潔の保持は、弱酸性の石けんなどを使用し、皮脂を落とさないようにします。湯温は38℃くらいで、十分に石けんを泡立て、皮膚をこすらないようにして洗います。洗浄後は水分をタオルで押し拭きをし、
すぐに保湿剤で水分を補い、保護剤を塗って水分の蒸発を防ぎます。

●化学的刺激を軽減する対応

便失禁がある場合には、便と皮膚が接触するのを防ぐために撥水効果のある保湿剤を塗ります。1日に3回以上失禁があるときは、ただれがなくても保湿・保護を行います。

水様便では亜鉛化軟膏を、壁を作るような感じで皮膚に塗り、皮膚に便がつかないようにします。汚れた部分はつまんで捨て、欠けた部分に軟膏を補充します。ただれがひどいときは、パウダーで押さえてから軟膏を塗るときちんと覆うことができます。
ただし、軟膏を厚く塗っている場合でも、1日1回は洗い流すようにします。

●器械的刺激を軽減する対応

テープやドレッシング材を貼る、あるいは剥がすときが要注意です。テープはあらかじめ切っておき、引っ張らずにテープの中央から貼り、片方ずつ止めます。貼る位置も同じ位置ではなく、多少位置をずらします。

剥がすときは、テープ周囲の皮膚を片手で押え、テンションを掛けないよう、剥がす角度を極力180°に近づけるようにして、ゆっくりと行います。伸縮性の高いドレッシング材を剥がす場合は、皮膚と平行に伸ばしながら剥がすようにします。皮膚の変形を起こさないように剝がすことが、剥離刺激を防ぐことにつながります。

貼る際には被膜剤を、剥がすときは剥離剤を用いると皮膚への刺激はさらに低下します。粘着テープ、ドレッシング材には、シリコンなど皮膚への刺激の少ない素材のものがあるので、状態に応じて選択するとよいでしょう。

●肥厚しているときの対応

肥厚が見られた場合は、肥厚している部位の角質をふやかし、柔らかくしてから予防的スキンケアを行います。応急処置としては、尿取りパッドをぬるま湯で濡らして患部に当て、ポリエチレンフィルムで覆っておきます。30分程度経ったら洗い流し、水分を取ってから保湿・保護を行います。一度で改善させるのは無理ですが、続けていくうちに柔らかくきれいになります。

●放射線療法時の対応

放射線療法の際には、照射部位をこすらない、洗浄剤を使わない、皮膚への刺激の少ない衣服を着用するといったケアを行います。洗浄時に、ぬるま湯がしみるときは、生理食塩水を使います。

剝離が見られたら、医師と相談して対応しますが、真皮の露出がひどい場合は、外用薬(ステロイド外用剤)を塗布してから、被覆材(ポリエチレンフィルムで代用も可)を使用します。

サージカルテープ、フィルムドレッシングの説明図

掻痒感が治まらない患者さんにどう対処する?

〔原 因〕

掻痒感(かゆみ)もドライスキンが大きな原因です。皮膚の乾燥により、バリア機能が低下し、皮膚が炎症を起こすことで発生します。

〔対処法〕

●環境の改善による対応

かゆみを和らげるには、室内温度、入浴や清拭時の湯温を低めにし、身体を温め過ぎないことが大事です。冷罨法で局所を冷やしてもよいでしょう。シーツのしわや寝衣の縫い目もかゆみを増幅させます。寝衣の縫い目が触れないように裏返す、あるいは縫い目のない寝衣に交換します。

●搔かせない対応

局所を掻くと角質をさらに破損してしまうので、保湿をすることが基本です。かゆみの程度がひどい場合には、抗ヒスタミン薬などの外用剤を使用します。市販のクリームやローションにも効果が期待できるものがあるので、皮膚の状態や経済性に合わせて上手に活用しましょう。

●疾患によるかゆみの予防

肝疾患や化学療法など疾患・治療が原因の掻痒感は、その出現が予測できます。治療開始時あるいはかゆみの発生前から予防的スキンケアを実施します。症状がひどくなった場合には、一時的に外用剤(ステロイド外用剤)を使用しますが、基本は清潔、保湿、保護です。



(ナース専科マガジン2014年4月号より転載)

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