【連載】今度こそ「できる!」血糖コントロール

第7回 こんなときどうする? 妊婦さんの血糖値が高い!

解説 牧田善二

AGE牧田クリニック・院長

妊婦さんは、ホルモンの影響で血糖値が上昇しがちです。
妊娠中の血糖値の上昇は胎児にも大きく影響するので、血糖値の上昇には注意が必要です。また、糖尿病の患者さんが妊娠を望む場合は、しっかりとした治療計画に基づいた計画妊娠で患者さんをサポートします。


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ケース3 妊婦さんの血糖値が高い!

妊婦さんの血糖値が高い時はこうする!

 妊娠中には、卵巣や胎盤からプロゲステロンやHPL(ヒト胎盤性ラクトーゲン)などのさまざまなホルモンが分泌され、その影響でインスリン抵抗性が亢進し、インスリンの働きが悪くなって血糖値が上昇します。

 健常な妊婦であれば、より多くのインスリンを分泌してその上昇を抑えますが、何らかの理由で膵臓の機能が低下している人は、高血糖に対応できず糖代謝異常に陥ることがあります。

 妊娠中の血糖コントロールは、母体や胎児の合併症を予防するために、厳格に行わなければなりません。朝食前(空腹時)血糖値が70~100mg/dL、食後2時間血糖値が120mg/dL未満、HbA1Cが5.8%未満になるようにします。

 治療には基本的にインスリンを用います。すでに経口血糖降下薬を服用している場合、胎児への安全性が確認されていない薬剤もあるので、インスリンに切り替えます。妊娠中期以降はインスリン抵抗性が増大するので、インスリンを増量し、分娩後は速やかに減量・中止します。

 妊娠中の体重増加は、太っていない妊婦さんで8~9kg、肥満の人は5kg前後が適当とされています。

 栄養摂取量の目安としては、妊娠前の総カロリーに、妊娠前半で150kcal、妊娠後半で350kcal、授乳期で600kcalを加えることとし、体重の増加度などにより調節します。血糖変動幅を小さくし、空腹時のケトーシス(ケトン体という有害物質が発生し血液が酸性になる状態)を避けるため、食事は小分けにして摂取します。

 運動は、継続する必要はありますが、その場合は軽い散歩程度を、妊婦さんの状態をみながら行います。

 万一血糖コントロールが不良のまま妊娠してしまった場合は、胎児や母体への影響を本人と配偶者に説明し、妊娠を継続するかどうかを検討することも必要です。

このケースの原因をチェックしよう!

□妊娠による糖代謝異常である。
□以前からの糖尿病が新たに発見された。
□もともと糖尿病の患者さんが妊娠した。
□糖代謝異常(高血糖)のリスクを認識していない。

ポイントを押さえて指導しよう!

 妊婦さんの高血糖を引き起こす要因としては、妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠があります。

 妊娠糖尿病は、「妊娠中に初めて発見、あるいは発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常」と定義され、妊娠するまでは糖尿病ではなかった人が、妊娠によって糖代謝異常(糖尿病)が発症したケースと、見逃されていた糖尿病(2型)が発見されたケースがあります。

 前者は妊娠中の一時的なもので、出産がすめば妊娠ホルモンの分泌も低下し、治ります。ただし一時的な場合でも、将来糖尿病を発症する率は高くなるとされているため、長期的なチェックが必要となります。一方後者は、出産後も継続した治療が必要となります。しかし両者には、基本的に治療目標や治療法に大きな差はありません。

妊娠糖尿病の診断基準

 一方の糖尿病合併妊娠は、糖尿病患者さんが妊娠することです。この場合、胎児の発達にとっていちばん大切な妊娠初期に、血糖値が高くなっている可能性があり、とても危険です。糖尿病の女性患者さんが妊娠を希望する場合は、胎児の先天異常と母体の糖尿病合併症悪化の予防のために、妊娠前にしっかりした治療と管理を行った上で「計画妊娠」をすることが重要です。

 妊娠中の高血糖が母体に及ぼす影響としては、流産や早産、妊娠高血圧症候群、羊水過多症の危険性が高くなります。また、母体から高濃度のブドウ糖が胎児側に流れ込み、胎児のインスリン分泌が高まることが、巨大児や先天奇形、新生児低血糖症や呼吸促迫症候群などの新生児合併症を招く原因とされています。胎児が巨大児となった場合、出産が困難となります。

 次ページでは、妊婦さんの糖尿病判定と計画妊娠について説明します。

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