【連載】今度こそ「できる!」血糖コントロール

第9回 こんなときどうする? 薬物療法を中断してしまった!

解説 牧田善二

AGE牧田クリニック・院長

薬物療法を継続していくためには、患者さんが疾患や治療に対してどのように感じているかを知ることも大切です。
日常生活において負担を感じているのであれば、その原因を解消できるようなサポートをしていきましょう。


▼糖尿病、血糖コントロールの記事をまとめて読むならコチラ 関連記事
【糖尿病】血糖コントロールの指標と方法


ケース5 薬物療法を中断してしまった!

薬物療法を中断してしまったときはこうする!

 薬物療法の中断は、1型糖尿病や若い人など昼にインスリンを打つ人に多く、周囲に糖尿病であることをオープンにしていないことが、その理由の一つに挙げられます。実際、中断してしまった会社員の男性は、会議中などには絶対に打たなかったと話していました。

 また、意図的に打たない人もいます。この場合は、糖尿病であることを受け入れられないでいる以外に、使い捨てタイプの製剤の価格が高いという経済的な理由も見受けられます。

 治療を中断してしまった場合には、まずその理由をきちんと聞くことが大切です。理由がわかったら、その解決方法を患者さんと一緒に考えていきます。

 前述の例でいえば、お昼に会社でインスリンが打てない場合、CSIIを導入すれば24時間持続するので、1日に数回の注射は不要となり、中断を免れることができます。あるいは、医師に相談して昼のみ経口薬だけにするなどの方法もあります。また経済的な理由であれば、入れ替え式のカートリッジタイプに変更する方法もあります。

 一方、病気を受け入れていない人に対しては、それまでの生活を振り返りながら、いつ頃から治療が嫌になったのか、治療の必要性を理解しているのかなど個室でゆっくり話を聞きます。どうしてもインスリン注射が嫌ならば、経口薬による治療を検討します。


 それが可能であれば、しばらくそちらを選択し、その代わり食事療法と運動療法をしっかり管理する方法もあります。そして「私は合併症になってほしくない」などのI(私の)メッセージを入れながら、お互い歩み寄る工夫をします。

 いずれにしても、それぞれの患者さんが、どのような方法であれば中断することなく治療を継続できるか、そのための選択肢を準備し、患者さん自身が選択できるような形で指導していくことがポイントです。

 そのためには、患者さんがインスリンを打てないでいることを話せる雰囲気づくり、関係づくりも大切です。「あなたが受け入れてくれるのを待っている」「いつも気にかけている」といったメッセージを積極的に伝えていきましょう。

このケースの原因をチェックしよう!

□周囲に糖尿病の治療中であることを隠している。
□インスリン製剤が経済的負担になっている。
□糖尿病であることを受け入れていない。
□治療の成果が表れていない。

ポイントを押さえて指導しよう!

 これまで、指導された方法を確実に実践し、順調に経過している患者さんの中にこそ、突然治療を中断してしまうケースが隠れていることは少なくありません。

 特に変化ステージの維持期に入り、一生懸命に頑張っても思ったような結果が得られにくくなると、イベントをきっかけに脱落してしまうことがあります。頑張り過ぎが原因なのですが、見返りがなく終わりのない糖尿病治療に、手応えを感じられなくなるのです。

 経過が順調な人に対して最も必要な介入は、頑張っていることを認め、賞賛することです。自己効力ではこうした承認・賞賛が重要で、モチベーションを上げる一つのきっかけとなり、これによって、結果が思わしくない時期にも踏みとどまり、治療を継続することができるようになります。

 問題のない患者さんであっても、3カ月に1度ぐらいは状況を確認するなど、見守り感が伝わるような工夫をして、脱落を予防することが大切です。

中断しやすいのはこんなとき

 お正月やお盆などは、ごちそうを食べたりお酒を飲んだりする機会が増えます。しかも気候も寒かったり暑かったりして、運動を中断してしまうことは少なくありません。誕生日や入学式、結婚式など、さまざまなイベントがあるときも同様です。そのためこの時期には、それまでの順調だった療養生活が乱れ、血糖コントロールがうまくいかなくなると考え、その前後のタイミングで注意を払うことが必要です。

 生活リズム、食事、運動などの面から、問題になりそうな要素を想定し、対策を考えた上で、前もって患者さんと相談することが大切になります。当院では、例えばお正月の場合、管理栄養士や健康運動指導士が指導に入り、低カロリーのお節料理の作り方、室内でできる運動方法などを患者さんや家族に伝え、無理なく血糖コントロールが維持できるような提案をしています。

 こういったイベントは生活の楽しみであることが多いもの。患者さんが、それを楽しみつつ、ドロップアウトのきっかけにならないように配慮することが必要です。

 次回は、経口薬療法うまく導入できない理由と対応を解説します。

参考・引用文献

1)牧田善二 著:糖尿病専門医にまかせなさい、文藝春秋、2009.
2)牧田善二 著:糖尿病はごはんよりステーキを食べなさい、講談社、2010.
3)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療ガイド2010、文光堂、2010.
4)日本糖尿病学会 編:糖尿病療養指導の手びき(改訂第3版)、南江堂、2007.
5)日本糖尿病学会 編:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン、南江堂、2004.
6)森加苗愛 監修:次は必ずうまくいく! 糖尿病と指導の「悩み解消」ポイント、エキスパートナース23(9)、照林社、2007.
7)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療の手びき(改訂第55版)、南江堂、2011.
8)門脇 孝、真田弘美 編:すべてがわかる 最新・糖尿病、照林社、2011.

ページトップへ