【連載】初歩からわかる看護研究

Step25【看護研究】推測統計の手法(その3)

監修 富田真佐子

四国大学看護学部看護学科・教授

看護研究でよく使われる統計手法として、前回はType2実態調査研究やType6実践報告で主に使われる「χ2定数」について説明しました。今回は、Type4比較研究やType5準実験研究で効果を比較する場合に使われる「t検定」について、実際にExcelを使ったデータ分析の手順を紹介します。


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「t検定」の手順と方法

独立のt検定

独立のt 検定は、2群間の差を比較するパラメトリックの「差の検定」です。前回と同様、血糖コントロールの研究の例で説明します。

血糖コントロール良群と不良群の、食事時間の平均値を比較したとします。食事時間は連続尺度です。良群(A群)32人、不良群(B群)28人(独立のt 検定は2群の人数がそろっていなくてもよい)の食事時間の平均値は36.3±1.3分と24.6±1.2分でした。平均値を比較すると11.7分の差があります。

t検定では、データから母集団を推測したときに、平均値に差があるといえるかを確率で示します。では実際にExcel(ここではExcel2007)を使って分析してみましょう。

分析ツールのインストール

集計したデータをExcelに打ち込んでおきます。次に図の[1]~[7]の手順に従って分析ツールのインストールを行います。

「t検定」の手順と方法

分析ツールを使ってt 検定

次に、データのタブから「データ分析」を表示させます。これクリックし、ダイアログボックスを表示させ、「t 検定:等分散を仮定した2標本による検定」を選びます。([8]~[10])。

分析ツールを使ってt 検定

[図11]「変数1の入力範囲(1)」の欄をクリックして先に入力したデータの片方のデータ(A列)を選択し、「変数2の入力範囲(2)」の欄をクリックしてもう片方のデータ(B列)を選択する。

分析ツールを使ってt 検定②

結果の出力をしたいシートを出力オプションで選び、OKをクリックすると結果[図12]が表示される。

※ここではExcel2007の操作方法について紹介しています。

ここで、データ数が少なく分布のバラツキ(分散)が良群と不良群で等しいといえない場合は、「t 検定:分散が等しくないと仮定した2標本による検定」を選びます。これをWelch(ウェルチ)のt 検定といいます。

統計量t 値は2.18、p値は0.03でした。p値は片側と両側が表示されますが、良群と不良群を比較して良>不良または良<不良のどちらか一方しかあり得ない場合を除いて両側の結果を見てください。p値が0.05よりも小さいですから、仮説は棄却され「有意差がある」ということになります。

つまり、収集したデータ(標本)から母集団を推測すると、一般的に血糖コントロール良群と不良群では食事時間に差がある(不良群の方が短い)という傾向がみられるということです。すなわち食事時間も血糖コントロールに影響すると考えられます。

なお、この例ではデータ数が少なくやや偏りがあることを考えると、後述するノンパラメトリックの手法であるMann-Whitney( マン・ホイットニー)のU検定を選択することも考えられます。

対応のあるt検定

看護介入の前後のように、同じ人のデータの場合は、対応のあるt 検定を行います。対応のあるt 検定では、前後などの1組のデータが両方なければ計算ができません。両方そろっていないデータは除外します。独立のt 検定と同じ手順で、データ分析の「t 検定: 一対の標本による平均の検定」を選びます。

相関係数の有意性とノンパラメトリックの差の検定法

【Step36】データの集計方法(その3)で相関係数について説明しました。相関係数について有意性の検定を行うことができます。この場合の統計仮説は「相関係数は0である」です。ほかの統計手法と同様にp値が0.05未満のとき、相関係数は有意であるといえます。

ただし、表1の数値表のようにデータ数(標本数)が10の場合、p<0.05になるのは相関係数0.632以上です。相関係数が仮に0.500で強い相関だったとしても有意にはなりません。逆にデータ数が120ではp<0.05になるのは0.179以上ですから、相関係数が仮に0.180でほとんど相関がないとしても有意であるとなります。

相関係数は、係数の値から相関の強さを判断し、その上で相関係数が有意かどうかを解釈してください。p値が0.05以下だったとしても、「相関係数が0である」ということが棄却されたに過ぎません。

相関係数の有意点

ノンパラメトリックの差の検定

データの種類が名義尺度や順序尺度の場合やデータに偏りがある場合、データ数が少ない場合は、正規分布を仮定しないノンパラメトリックの差の検定を行います。

独立の2群を比較する「Mann-WhitneのU検定」、3群以上を比較する「Kruskal-Wallis(クラスカル・ウォリス)の順位検定」、同じ対象者の2回を比較する「Wilcoxon(ウィルコクソン)の符号付順位和検定」、3回以上を比較する「Friedman(フリードマン)検定」などがあります(表2)。

看護研究でよく使われる統計手法

これらのノンパラメトリック検定は、実データを順位のデータに変換します。例えば、「20、30、46、26」というデータを小さい方から順位で表すと「1、3、4、2」です。この順位を用いて統計量を算出します。ノンパラメトリックでは平均順位を比較します。Excelでも計算できますが、少し複雑になりますので、統計ソフトを使用することをお勧めします。

統計ソフト

ノンパラメトリックの統計手法や多変量解析、反復測定の分散分析、多重比較は、統計ソフトを使うと容易に分析することができます。SPSSやSAS、JMPなどの統計ソフトは項目数やデータ数が多くても対応でき、複雑な分析を行うことも可能ですが、かなり高額です。JSTATなど安価でインターネットからダウンロードできるソフトでも十分分析可能です。

ただし、統計ソフトは簡単に使えますが、分析の意味がわからず間違った使い方や解釈をしてしまう場合も多くみられます。統計分析の意味をしっかり理解して使用してください。

次回は分析結果の解釈と看護への活かし方について解説します。

(「ナース専科マガジン」2010年12月号より転載)

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