【連載】今度こそ「できる!」血糖コントロール

第10回 こんなときどうする? 経口薬を飲み忘れ・飲み間違えてしまった!

解説 牧田善二

AGE牧田クリニック・院長

経口薬療法は、「飲まされている」という意識ではなかなかうまくいきません。まずは、患者さん自身に「自主的に飲んでいる」「自らが治療に参加している」という意識を持ってもらうことが重要です。
そのためには、経口薬療法や薬剤に関する知識を正しく理解してもらうことが第一歩になります。


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ケース6 経口薬を飲み忘れ・飲み間違えてしまった!

経口薬を飲み忘れ・飲み間違えてしまったらこうする!

 万一飲み忘れてしまったときのために、患者さんが自ら行う対処方法を指導しておくことは大切です。

 食後に服用するビグアナイド薬は、基本的に、食後に限らず服用してもかまいません。食直前に服用して食直後に効果が出現する、あるいは食事と混在して効果を発揮する、速効型インスリン分泌促進薬やα-グルコシダーゼ阻害薬は、食中・食直後までの間であれば飲み忘れに気が付いた時点で服用しても大丈夫です。

 しかし、食後時間を経過してから服用すると、低血糖症状を起こす可能性があるので、そのときは服用しないこと、次回服用時に2回分飲まないことなどを伝えます。薬剤によっては、決められた時間以外に服用したときの弊害があることを、きちんと理解してもらうことが重要です。


 飲み間違えについては、単純に薬剤を取り違えてしまうのか、薬剤に対する理解が間違っているのかなど、その理由によって対応は異なってきます。前者の場合は、1日量を飲む順番に合わせて分類できるケースを利用したり、1日分を小分けするなどの方法が有効です。また、理解に誤りがあるときは、薬剤師などの協力を得て、写真付きの薬剤情報説明書を活用し、飲む順番を確認・整理するとよいでしょう。

 その上で、それぞれの薬剤にどのような作用と特徴があるか、あらためて患者さんと確認することが必要です。間違える薬剤によって、低血糖状態になることもあるので、自分が飲んでいるそれぞれの薬剤が、どの時間帯の血糖値を下げるために飲んでいるのか、どの臓器に作用しているのかなどを理解しておくことが大切になります。

 さらに、飲み合わせに注意が必要な薬剤についても説明しておく必要があります。例えば、低血糖を引き起こしやすいSU薬や速効型インスリン分泌促進薬とほかの経口血糖降下薬の併用によって、低血糖症状が悪化することがあります。それぞれの薬の作用・特徴を看護師自身も把握し、患者さんに伝えていくようにします。

このケースの原因をチェックしよう!

□飲み忘れ・飲み間違えることのリスクを知らない。
□経口薬療法の特徴を理解していない。
□使用している経口薬の作用を理解していない。
□使用している経口薬の服薬方法を理解していない。

ポイントを押さえて指導しよう!

 服薬を習慣化することは難しく、つい飲み忘れてしまうことは多々あります。とはいえ、糖尿病薬の服用に関しては飲むタイミングが重要となるので、飲み忘れはとても危険です。その危険性を伝えた上で、なぜ忘れてしまうのか、話を聞きましょう。その場合、患者さんを責めるのではなく、理由を一緒に考える姿勢が大切です。

 飲み忘れがないようにするためには、理由を明らかにし、飲み方の工夫へと活かしていくことが必要です。その場合参考になるのが、上手に服薬できているほかの患者さんの工夫の仕方です。外出の際の飲み忘れを防ぐために、財布や箸箱の中に薬を入れるようにしたという患者さんもいました。うまくいっている患者さんの声をアドバイスとして紹介するのは、具体的で効果的な方法といえます。

経口薬の作用を理解してもらおう

 どうしてもインスリン療法に抵抗感を持つ患者さんは少なくありません。そのため、糖尿病に対する治療が必要とされたときには、経口薬療法を希望する人が多くなります。

 経口薬療法は、インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬、糖吸収遅延薬など複数の薬剤が使用され、食事療法と運動療法だけでは十分な血糖コントロールができない2型糖尿病の患者さんに対して行われます。患者さんの病態、合併症、薬剤の作用特性などを考慮して少量から開始し、血糖コントロールの状態によって増量していく方法がとられます。

 不足しているインスリンを補充するものではなく、主に、インスリン分泌の促進、インスリン抵抗性の改善、食後の急激な血糖値の上昇を抑制するものです。**

 経口薬療法の開始にあたっては、こうした経口薬療法に関する情報・知識を正しく患者さんに提供することが大切です。

 また、特に知っておきたいのが薬理作用です。経口薬療法では複数の薬剤を服用するケースがほとんどですが、患者さんの中には、その種類の多さに「本当に全部飲む必要があるのか」と疑問を持つ人もいます。そこで、今飲んでいる薬がどこに効いているのか、どこをターゲットにしているのかを伝えることで、患者さんも多種類の薬剤を内服する理由が理解できるようになります。また、副作用についても説明しておくことが重要です(参照)。

薬はどこに効いているのか、確認図

 糖尿病は顕著な症状がなく無自覚であるため、内服による治療効果をそれほど感じることはありません。それだけに、薬理作用の理解を通じて効果を実感できるようにしていくことは重要です。

 次回は、インスリンに対して拒否反応を示す理由と対応を解説します。

参考・引用文献

1)牧田善二 著:糖尿病専門医にまかせなさい、文藝春秋、2009.
2)牧田善二 著:糖尿病はごはんよりステーキを食べなさい、講談社、2010.
3)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療ガイド2010、文光堂、2010.
4)日本糖尿病学会 編:糖尿病療養指導の手びき(改訂第3版)、南江堂、2007.
5)日本糖尿病学会 編:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン、南江堂、2004.
6)森加苗愛 監修:次は必ずうまくいく! 糖尿病と指導の「悩み解消」ポイント、エキスパートナース23(9)、照林社、2007.
7)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療の手びき(改訂第55版)、南江堂、2011.
8)門脇 孝、真田弘美 編:すべてがわかる 最新・糖尿病、照林社、2011.

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