【連載】初歩からわかる看護研究

Step26【看護研究】統計分析を看護に適用する方法

監修 富田真佐子

四国大学看護学部看護学科・教授

統計は、あらかじめ概念枠組みに書いた研究疑問に対する答えが正しかったのかを明らかにするために行う手段のひとつです。特に推測統計を用いる場合は、分析の目的を見失わないようにしてください。p値を出したけど結果の読み方がわからなかったというのでは意味がありません。統計分析の結果をどう解釈し、看護に適用していくかが重要です。では、分析結果を看護にどのように適用していけばよいのでしょうか。研究タイプ別にみていきましょう。


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分析結果の解釈と看護への適用のポイント

Type2 実態調査研究

まず、Type2実態調査研究では、日常看護を行う上で問題と感じていたことがどのくらいの人に当てはまるのか、度数や比率で示すことによって全体像を知ることができます。問題解決に向けてどのような実態にあるのかが明らかになれば、解決の糸口が見つかるでしょう。多くの人が抱えている問題は特に優先度が高い項目です。

Type3 関係探索研究

問題と感じていることの原因や影響要因を探ります。いくつか考えた原因について分析します。ひとつの方法は【Step36】データの集計方法(その3)で説明した相関係数です。

例えば【Step21】データ収集する前の重要なステップ(その2)の概念枠組みを例にしましょう。QOL得点と影響要因として予測したひとつずつの項目との相関係数を算出します。

QOL得点と年齢の相関係数が0.234、QOL得点と孤独感の相関係数が0.546、QOL得点とソーシャルサポート得点の相関係数が0.621だとします。相関係数は1(-1)に近いほど相関が強いことを示します。

QOL得点は、孤独感やソーシャルサポートとの相関は高いが、年齢との相関は弱く、在宅療養中の一人暮らし高齢者のQOLを高めるには、年齢に関係なくソーシャルサポート体制を整えて、孤独感を和らげるなどの看護が必要であることが考えられます。

たびたび取り上げる血糖コントロールの例のように、血糖コントロールに影響を与える要因(原因)についてχ2検定やt検定(ノンパラメトリックの場合は、Mann-WhitneyのU検定)などの、差の検定を用いる場合もあります。

Type4 比較研究

経験の有無や何かがある人とない人では、結果としてどのような差があるのかを比較します。このタイプの研究は、何が先行する原因で何が後発する結果なのかが重要です。原因がある人とない人で結果の生じ方に差があるのかを分析します。

最初にそれぞれの度数や比率、クロス表などによって比べてみると、原因の有無によって結果に違いがあるかを確認できます。さらに差の検定によって自分の標本だけではなく、母集団を推測し、一般的にどのような違いがあるかを示すことができます。

例えば、一人暮らしの高齢者と家族と同居の高齢者の不安をそれぞれ尺度で測定し、不安に差があるかについてt検定を行ったところ、p値が0.05未満だったとします。このことから、一般的に一人暮らし高齢者は家族と同居している高齢者より不安が強い傾向があることが分かります。一人暮らし高齢者の不安について何か対策を取るべきだといえるでしょう。

Type5 準実験研究

実験群と対照群(非実験群)を比較したり(「独立」の差の検定)、同じ人の看護介入の前後を比較したりする「対応」の差の検定を行います。例えば、実験群で看護介入の前後に有意差があり、対照群で前後に有意差がなかったなら、そのケアは効果がある可能性が高いといえます。

ただし、もし有意差が得られなかった場合も、データ数が少なくて統計的な差が示せなかったのかもしれません。推測統計は確率ですから、データ数が少ないと明らかな差があったとしても有意差が出ないことがあります。

p値は標本数に左右されますのでデータ数も考慮して結果を読み取りましょう。また、p値だけで効果を判定するのではなく、臨床的な判断も重要です。

例えばアルブミン値の平均が、実験群が3.5g / dL、対照群が2.9g / dLだったとしても、データ数が少ないと有意な差は示せないこともあります。逆に、例えば呼吸数の平均が実験群で18.5回/分、対照群で19.1回/分であり、データ数も多くp値が0.05以下で有意な差があったとします。しかし、臨床的にみると呼吸数の0.6回/分の差は、ほとんど差がないのと同じです。

呼吸数の差0.6とアルブミン値の差0.6は、同じ値でも臨床的には意味合いが異なります。p値にばかり惑わされることなく、記述統計の結果をよく読むことも重要です。

Type6 実践報告

Type6実践報告の研究疑問は「○○を実践すると問題解決できるか」でした。問題解決ができたかどうかの評価を、度数や比率で表します。実践の前後のデータを取った場合はクロス表にして見比べるとよりはっきりします。

よい評価であったなら、今後も自信をもってその看護実践を取り入れていくことができます。もし評価がよくない項目があったら、その原因を考えて改良していってください。

なお実践報告は、病棟独自の実践であることが多く、一般化を目指していないので、推測統計は必ずしも重要ではありません。分析が無意味というわけではありませんが、推測統計を採用するにしても、あまりp値に惑わされないようにしてください。記述統計やクロス集計の結果をよく読み取ることの方が重要です。

次回からは論文の書き方について説明します。

(「ナース専科マガジン」2010年12月号より転載)

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