【連載】初歩からわかる看護研究

Step27【看護研究】わかりやすく伝わる論文の書き方

監修 富田真佐子

四国大学看護学部看護学科・教授

いよいよ看護研究もまとめの段階に入りました。今回からは「論文の書き方」について説明します。論文とは文字通り、課題について論じ文章として書き記すものです。あなたの考えを思いつくままに書き綴るのではありません。

研究論文は、どのような研究を行って、どのような結果が得られたのか、読み手に正しく伝わるように順序立てて、分かりやすく書きましょう。これまでに書いた研究計画書や概念枠組みを基に書いていくと効率よく進みます。


【看護研究まとめ記事】
* 看護研究とは?テーマ選びと書き方まとめ(計画書、文献など)

読者に内容が伝わりやすい論文の構成要素

論文の構成は、投稿する学会誌によって異なりますが、「はじめに」「方法」「結果」「考察」を基本的な柱にしています(図)。

読者に内容が伝わりやすい論文の構成要素

論文タイトル(題名)

タイトルは、研究内容を表すものでなければなりません。研究内容を表すようにするコツは、研究目的に合わせることです。タイトルを読んだだけで、誰にどんな目的で何を明らかにした研究なのかが想像でき、内容とピッタリあっていなければなりません。タイトルは、長くなるようだったら副題をつけます。

はじめに

「はじめに」は、論文の冒頭に前置きとして、研究する目的の根拠を示す部分です。「背景」「動機」「意義」「文献検討」「研究目的」「用語の操作的定義」の順に書くと話の筋が通りやすくなります。

まず冒頭の「背景」では、例えば研究対象者がどのような特徴をもっていて、どんなことに遭遇しているのかなど、これまでの経緯や現状、あるいは社会情勢などから入ります。

次に「動機」として研究をしようと思ったきっかけやあなたが日頃感じている問題点などを挙げます。「意義」では、研究しなければならない理由や研究のメリットを述べます。「文献検討」ではどこまで研究が進んでいるかを示します。

文献検討の記述は「はじめに」の中に必ず入れてください。今研究がどこまで進んでいて、どこがまだなのか、既存の研究では不十分であることを述べます。最後に、だから研究する必要があるのだと「目的」につなげます。

「目的」は、あなたの研究で何を明らかにするかを、具体的に述べてください。「看護の質を向上させる」などだけでは不十分です。そのためにあなたの研究では、何を明らかにするのかをはっきりと示しましょう。目的を箇条書きにするのも、分かりやすくするひとつの方法です。

目的の後に、主に目的で使われたキーワードについて「用語の操作的定義」をします。あなたの論文で、用語をどのような意味で使うのかを明記してください。例えば「QOL」など看護師なら誰でも知っている言葉でも、人によってとらえ方に幅があります。そこで、これから論文を読み進めていく上で、読み手の理解を統一してもらうのです。「研究目的」と「用語の操作的定義」については「はじめに」の中に含めず、「はじめに」とは別に小見出しをつける書き方もあります。

「方法」の記述ではデータ分析法や倫理的配慮を明示

方法

方法では、「対象者」「データ収集方法」「分析方法」「研究期間」「倫理的配慮」について述べます。

対象者の記述法については「結果」についての説明でも後述しますが、まず対象者の特徴や対象者となった条件を提示します。ただし対象者の条件は、個人が特定できない範囲に留めましょう。特に事例など対象者が少ない場合は注意が必要です。正確な年齢や入院期間なども場合によっては伏せておきます。

また、「○○病院の内科病棟」など対象者がどこにいるのか特定される記述は、好ましくありません。病院などの情報は、どの程度結果に影響を及ぼすかによって、例えば病院の規模が論文を読む上で重要であれば、「約200床の総合病院に通院している~」のように記述します。

データ収集方法には、収集方法、データ収集項目設定のプロセス、データの内容が含まれます。収集方法とは、質問紙法や面接法などデータ収集の手段です。質問紙法では質問紙の配布と収集をどのように行ったのか、面接法ならばインタビューガイド(【Step19】言葉のデータから答えを作り上げる(その3)参照)や面接をどのように行ったのかについて書きます。

データ収集項目の設定プロセスとは、例えば質問紙調査ならば、どのように質問項目を決めたかです。データの内容とは、質問紙法なら質問紙の項目はどのような内容かです(例「○○ について10項目…… 計30項目」)。

Type5準実験研究において何か測定したのならば、どのような器具を使って何をどのような手順で測定したか、読み手が再現できるように具体的に記します。これらのデータ収集の手順については、分かりやすく図に示すのもよいでしょう。

分析方法は、「各項目についての記述統計、および○と△のクロス表を作成しχ2検定を行った」などと、データを分析した方法を具体的に書き、研究期間はデータを収集した期間を書きます。

倫理的配慮は、どのように倫理的に配慮を行ったのか具体的に示します。対象者の権利の擁護のために、(1)研究への参加と中断の権利として対象者の自由意思を尊重した研究参加の承諾、途中で中断する権利の保障、(2)プライバシーの確保として個人情報の漏えい防止や匿名性の確保、守秘義務、データの保護の方法について、どのように倫理的配慮を行ったかについて書きます。

また安全安楽を確保するために、研究への参加による不利益や負担がかからない方策を、どのように行ったのか具体的に記します。詳しくは<【Step14】倫理に配慮するポイント(その1)~【Step16】倫理に配慮するポイント(その3)を参照してください。

また、倫理委員会の審査について承認を受けたことも記述します。時々、「倫理的配慮については倫理委員会の承認を得た」の一文のみ書かれている論文がありますが、それだけでは不十分です。上記に述べたようなことについて、具体的に何を行ったのかを書いてください。

倫理的配慮は特に重要視されており、本稿では「方法」の中に含めましたが、看護系の学術雑誌では投稿規定によって「倫理的配慮」の小見出しをつけて、方法とは別に述べるよう、規定されていることが多くなっています。

論文の要である「結果」の記述は事実だけを明確に

結果

結果は論文の中心であり、読み手にとって最も知りたい部分です。正しく結果を理解してもらうために、最初にそれがどんな人に関することなのかを説明しましょう。

それには、対象者数や対象者の基本属性(平均年齢や性別など)をはっきりさせます。対象者数については、「方法」で述べる場合と「結果」で述べる場合があります。あらかじめ対象者数が決まっていた場合などは方法に入れ、質問紙法など回収まで人数が分からなかった場合などは、結果に書くとよいでしょう。

【Step33】質問用紙の作り方(その4)でも述べましたが、質問紙法では質問紙の回収率も重要な結果です。質問紙を何名に配布し(配布数)、何名から回収できたか(回収率)、さらにその中から白紙や回答に重大な不備があったものなどを除外して(有効回答率)、結局分析対象者数は何名なのかを示します。

結果では対象者の基本属性について性別の度数や比率、平均年齢、疾患名などの情報を書きます。平均値には必ず標準偏差を付けてください(例:「平均年齢32.1±1.2歳」)。

次は、「誰がどうだった」の「どうだった」の部分です。結果は、図表などを用いてわかりやすく述べます。統計解析を行った場合、記述統計(単純集計)を省いてしまう人がいます。どんなに難しい分析を行ったとしても、最初に単純集計の結果から入りましょう。質問紙法ならば各質問項目に対する度数や比率、平均値と標準偏差、中央値などの結果を示します。

「~ですか」(質問文)に対して「はい」が○名○%、「いいえ」が○名○%……というように、全ての項目について文章にすると単調で読みにくい印象を受けます。質問文をそのまま表記する必要はありません。

○名○%という結果も全て書き連ねるのではなく、「表1に示すように、○○について『ある』と回答した者が○名○%と最も多かった」などと、特徴的な結果のみを文章にし、その他は図表に載せましょう(図表の作り方は後の回で解説予定)。ただし最低限、図表を見なくても、文章だけで結果の概要が分かる程度には書いてください。その後に相関係数や推測統計などの分析を行っていれば、その結果を示します。

結果は解釈を入れず客観的事実だけを淡々と述べ、解釈は考察で行います。例えば、「~について約半数が『ある』と回答し、多くの人が関心をもっていた」とするのは、解釈が入っています。約半数を多いと解釈するか、少ないと解釈するかは著者の考え次第です。「~について123名(45%)が『ある』と回答した」というふうに、事実だけを述べます。ただしType1因子探索研究は、研究者自身が「測定用具」ですから、結果に解釈が入る場合もあります。

次のページでは、「考察」「まとめ」「文献」について具体的に説明します。

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