【連載】今度こそ「できる!」血糖コントロール

第12回 こんなときどうする? インスリン注射がタイミングどおりにできない!

解説 牧田善二

AGE牧田クリニック・院長

インスリン療法で血糖コントロールを維持していくためのカギは、日々の生活の中で、いかにインスリン注射を決められたタイミングで打ち、継続していくかです。
そのためにも、インスリン製剤に対する理解を深めてもらい、生活の中で無理なく、モチベーションを高く保って継続できるようなサポートを行うことが大切です。


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ケース8 インスリン注射がタイミングどおりにできない!

インスリン注射をタイミングどおりにできないときはこうする!

 指示どおりに注射ができる環境であるのに、タイミングを間違ってしまうという場合には、まず患者さん自身が、自分の使用しているインスリン製剤が、どのタイプにあたるのか、再確認する必要があります。

 指示されたままに機械的に注射を行っているようなケースでは、順番を勘違いしてしまうことも少なくありません。実物を手に取って薬剤名とタイプを読み上げるなど、患者さんと一緒に確認しながら、その特徴についても理解してもらえるよう説明することが必要です。

このケースの原因をチェックしよう!

□インスリン療法をきちんと理解していない。
□使用しているインスリン製剤がどのタイプかわからない。
□定期的に注射を行えない要因がある。
□介助なしで注射ができない。
□注射することに不安・恐怖感がある。
□インスリン製剤に経済的負担を感じている。

ポイントを押さえて指導しよう!

 インスリン製剤は、効果発現時間の違いによって超速効型、速効型、混合型、中間型、持効型に分類されており、打つタイミングはそれぞれ薬剤の特性によって決まっています。これらを組み合わせて、1日1?2回、1日3回、1日4回以上など、患者さんの病状や生活に合わせて注射を行うことになります。€どのインスリン製剤をどのタイミングで注射するのか整理して、薬剤の特徴と結びつけて確認しましょう。その上で、患者さんが自分なりに間違わないようにできる方法を考えていくことが大切です。

 仕事上の理由などで1日3回のインスリン注射が難しい、介助なしでは自己注射ができないなどの理由から、決まった時間にインスリン注射をするのが難しい場合には、経口薬とインスリン注射を併用する治療法「BOT」が選択されます。

自由度の高い薬物療法「BOT」とは

 BOT(Basal supported Oral Therapy)とは、経口薬に基礎分泌を補う持効型あるいは中間型のインスリン注射を追加する併用療法をいいます。薬剤が一定の効果をもたらし、足りない分をインスリン注射で補うことになるので、夜間でも低血糖の心配がなくなり、安全性も増します。

 この治療の大きな特徴は、インスリンを打つタイミングをある程度患者さんが自分で決められるところにあります。持効型は作用時間に山がなく、24時間ほぼ一定に持続するので、朝であっても夜であっても毎日同じ時間であれば、1日1回患者さんの都合のよい時刻を選んで注射しても構わないという、自由度の高い治療薬といえます。

 例えば、仕事の都合で夕食の時間がバラバラで毎日同じ時間に注射することが困難という理由なら、夕食前の注射を夜寝る前の同時刻に変更することもできます。

 基本的には、それまで服用していた経口血糖降下薬をベースに用いますが、医師に相談した上で、症状に合わせてある程度は自分で選択できるので、患者さんの自己選択の幅が広がります。何より、患者さんが自分で考え、決めた治療だけに、モチベーションも高まり、維持しやすくなります。

 次回からは、食事療法をうまくできない理由と対応を解説します。

【参考・引用文献】

1)牧田善二 著:糖尿病専門医にまかせなさい、文藝春秋、2009.
2)牧田善二 著:糖尿病はごはんよりステーキを食べなさい、講談社、2010.
3)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療ガイド2010、文光堂、2010.
4)日本糖尿病学会 編:糖尿病療養指導の手びき(改訂第3版)、南江堂、2007.
5)日本糖尿病学会 編:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン、南江堂、2004.
6)森加苗愛 監修:次は必ずうまくいく! 糖尿病と指導の「悩み解消」ポイント、エキスパートナース23(9)、照林社、2007.
7)日本糖尿病学会 編:糖尿病治療の手びき(改訂第55版)、南江堂、2011.
8)門脇 孝、真田弘美 編:すべてがわかる 最新・糖尿病、照林社、2011.

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