【連載】看護研究はじめの一歩

第2回 看護研究の「問題と目的」を書く(2)文献の検討

執筆 冨重佐智子

日本看護研究支援センター

いよいよ文献検討

自分の言葉で研究課題を明らかにしたら,次は文献検討をしていきます。 「文献検討は苦手」という人は多いことと思います。 文献検討はやみくもに取り組んでも苦しいだけです。 ここでは文献検討の目的を確認しながら文献研究の方法を具体的に紹介していきたいと思います。 紹介するには何かたたき台になる具体例が必要でしょう。

ここにひとつの研究課題を紹介します。これは放射線科病棟に勤務する看護師さんの研究です。 彼らは放射線皮膚炎の防止にクーリングをしていたのですが,「本当に効果があるのか」という疑問をもち,研究を始めました。 第1回の「問題と目的を書く:1」でも紹介したとおり,まずは自分たちの言葉で問題が起こっている状況を詳

しく書き,問題に対する現在の対処状況と残された課題などを記述する必要があります。 試行錯誤しながらグループでまとめた「問題と目的」は次のようになりました(ここでは実際のものを少し修正して掲載しています)。

「問題の状況」
当放射線病棟では舌がん・喉頭がん患者に対し、腫瘍の局所制御を目的として頸部に放射線療法(1回線量50~60Gy)を行っている。 放射線は健康な皮膚に炎症を起こすが,当科でも線量が20Gyを超える患者の皮膚に湿性剥離やびらんなどの放射線皮膚炎が生じることが多い。 放射線皮膚炎自体は治癒可能だが,炎症症状が強い時期には痛みや灼熱感を伴い、患者の睡眠状況や食欲に悪影響を及ぼすこともある。

「問題に対する現在までの対処状況・対処結果と残された課題」
放射線皮膚炎には冷却がよいといわれているため,照射後の患者に毎回タオルで包んだアイスノン(表面温度約5℃)を渡し,30分程度照射部位を冷却するよう指導している。 その結果,放射線皮膚炎の悪化を抑制し,痛みや灼熱感が軽減するなど効果がみられている。しかし患者のなかには冷却が「冷た過ぎる」という理由から,拒絶・中断してしまう者もある。 わたしたちは明確な根拠もなく30分の冷却を患者に勧めているが、もっと短時間でも効果があるならそちらを勧めたい。

第一段階:研究の周辺事項やキーワードを確認する

先述の内容のまま研究を始めるのはまだ早いです。 文献検討の目的の第一は,自分が問題の前提として書いていることが「本当にそれでいいのか」、「思いこみでないか」、「ひとりよがりでないか」を確認することにあります。

先述の文章の「問題の状況」を見てください。自分の病棟での舌がん・喉頭がんの放射線療法や放射線療法の副作用(放射線皮膚炎)について書いていますが、これは他の一般の病院での治療にもいえることなのでしょうか。 ここでは文献で調べ、もうすこし具体的・一般的な視点で加筆・修正を行う必要があるでしょう。 調べるべき内容は、「放射線療法の適応となる病態」「頸部照射の一般的なスケジュール」「放射線皮膚炎の病態・症状,患者のQOLに及ぼす影響」などになるでしょう。

使用する文献はこの場合、頭頸部の腫瘍の治療(放射線療法を含む)に関する医学専門書・雑誌などになります。  このほかに「問題の状況」を確認するために使用頻度が高くなるのは、辞典や辞書,看護学生が用いるようなテキストなどです。確認できたら思いこみで書いていた文章を、文献に記載されている内容で置き換えていきます。

第二段階:自分たちの研究課題が文献を調べることで解決するかどうかを確認する

事例の文章では「問題の状況」を踏まえ、「問題に関する現在までの対処状況・対処結果と残された課題」を明らかにしました。 しかしこの「残された課題」つまり「研究課題」に発展するかもしれない課題ですが、実はすでに色々な人が調べていて、文献を読むだけで解決してしまうことがよくあるのです。 そうです。第二段階の文献検討では、自分たちの研究課題が文献を調べることで解決するかどうかを確認するのです。 ではどのように調べていくのか。

よく図書館のパソコンを使って、手当たり次第キーワード検索をして雑誌や学会抄録のコピーをごっそり集めてくる方がおられます。 しかし最初からこれをやってしまうと読むのにうんざりしてしまうものです。 文献の使い方にはポイントがあります。 それは (1)古いものから大づかみに把握する (2)そのうえで新しい詳細な内容を把握する というものです。
(1)古いものから大づかみに把握する 
古い資料にはテキストや単行本、雑誌の特集記事があります。 特にテキストは評価の固まったやや古めの研究成果をもとに書かれているので、まず手にとりたい資料です。 この事例でしたら、成人看護学のテキストや放射線看護に関わる単行本などを入手して、「放射線皮膚炎の予防にクーリングは有効なのか」「有効だとしたら何度でどれくらいの時間クーリングすればいいのか」について調べるわけです。 また、がん看護に関わる雑誌などで、放射線皮膚炎に関する特集を探して同じように調べます。 もし問題解決に役立つ記述が見つかれば、それがどんな文献をもとに書かれているのか、巻末の引用・参考文献リストで確認します。 できるだけ引用・参考文献を入手してよく読んでみましょう。 文献を読んでみてきちんとしたエビデンスが確認されれば、この研究をする必要性や意義は低くなります。 むしろ研究するより得られた知見を「活用」する方が大切になるのです。 反対にテキストや単行本、雑誌の特集記事で問題解決ができなかった場合はどうしましょう。 そのときは次の段階(2)に進みます。

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