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【連載】キャリアアップStory 私の「転職」と「いま」

【看護師の転職story】第6回 学び直しセミナーの運営で地方の看護師たちの声に応える~株式会社ひとりガウン 代表取締役~

取材 青柳智和

株式会社ひとりガウン 代表取締役

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「心電図を学校できちんと習っていないので、一度、基礎から勉強したい」「急性期病棟に異動になったので、人工呼吸器のことを一から学び直したい」――このような、すぐに役立つ臨床の基礎知識を学びたいという要望は、地方の中小病院の看護師たちの間でとてもよく聞かれます。そんな声に応えるため、出前の看護セミナー「出直し看護塾」を開催している看護師がいます。

口コミで大盛況のセミナー「出直し看護塾」

今、地方の看護師の間で大人気のセミナーがあります。それは株式会社ひとりガウンが開催する「出直し看護塾」。北は北海道から南は鹿児島県まで、各地方都市で開かれるセミナーには、毎回、定員いっぱいの100~180人が受講します。このセミナーを立ち上げ、講師役を務めるのが、同社の社長でもある青柳智和さんです。

「セミナーは『基本的なことだけをわかりやすく』がコンセプトで、看護師の目線で『知りたいと思う』ことと、管理職の視点で『知ってほしい』ことの2つに絞って構成しています。私が循環器内科病棟の師長として臨床現場で経験したことを基に、心電図や人工呼吸器の基礎知識などを具体的な例を挙げながら伝えている点が、分かりやすいと好評をいただく理由のようです」

規模の大きい総合病院や大学病院なら、このようなセミナーは院内教育に組み込まれていたり、現場のプリセプターや先輩看護師が指導する内容かもしれません。しかし、中小病院の多くは、院内で教育を行う時間的・人的余裕もないのが現実です。

だからといって、院外セミナーの多くは大都市圏で開かれており、地方で働く看護師が受講するには、時間的・経済的な負担が大きいです。しかも医療はますます高度化し、たとえ中小病院でも臨床現場には先進的な医療機器や新治療法が導入され、看護師には知識のブラッシュアップが求められています。

こうした現場の看護師たちが抱いている「臨床に合った基礎知識を、しっかり学び直したい」という要望に、青柳さんのセミナーは見事にフィット。セミナーを受けた看護師たちから口コミで評判が広がり、人気のセミナーとなりました。

セミナーの様子

「出直し看護塾」の講義風景。受講者は、復職を目指す看護師よりも、圧倒的に現職看護師が多い

「ひとりガウン」の商標登録証(左)と、「ひとりガウンRapix」の実用新案登録証(右)の写真

「ひとりガウン」の商標登録証(左)と、「ひとりガウンRapix」の実用新案登録証(右)。商品化には至らなかったが、実現に向けて奔走する中で、外からは見えない医療現場の仕組みや事業についての考え方を学んだ

「現場をよくしたい」と夢中で取り組んだ病院時代

今は事業を通して看護師を応援する青柳さんですが、臨床時代は、現場をよくするため、実にさまざまなことに取り組みました。

「心臓血管外科病棟で働いていたときに、「患者さんの呼吸管理は看護師の仕事であるはず」と考えた青柳さんは、3学会合同呼吸療法認定士の資格を取得。

しかし、「取得しただけではレベルアップはできない」と判断し、青柳さんは水戸市内の呼吸療法認定士に呼びかけて「水戸呼吸療法士会」を立ち上げ、定期的に勉強会を開催します。

また、手術室に異動してからは、「手術室には無駄なものが多すぎる」と感じ、青柳さんは1年間にわたってコストマネジメントを研究。手術に使う予定がないにもかかわらず、慣例で開封していた器材など不要なものを洗い出し、1年間で約500万円のコスト削減を実現しました。

業務改善をアイデアにして会社を設立

手術室では、緊急帝王切開の多忙さを少しでも緩和できないかと、介助者を必要とせず一人で着られる手術衣「ひとりガウン」を考案。これが現在の社名にもなっています。

「子どもの頃から、アイデアを形にして、いつかは特許を取りたいという夢がありました。試作しながら、自分で特許申請の書類も書いたのですが、『ひとりで着られる割烹着』というものがすでに申請されていたため、特許取得は断念しました。

ただし、手術衣として実用新案は取得できたので、まず会社を設立したのです。関東甲信越の手術看護学会で発表したところ好評だったのですが、結局、コストとの兼ね合いで商品化はあきらめざるを得ませんでした」。