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【連載】看護部長インタビュー

第17回 夢をもって選んだ職業だからこそ自分の伸ばしかたを見つけてほしい【東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部長】

取材 小牟田智子

東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部長

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特定機能病院として先進医療の波頭を切る東京医科歯科大学医学部附属病院。そこで行われる看護は厳しく管理された世界を想像していましたが、役割に対する責任感と思いやり、リーダーとしての強さを徐々に体得できる環境が整った、自由な気風の漂う看護部でした。

私も自由な気風に受け入れてもらった

──貴院のあるJR御茶ノ水駅周辺は、日本の医学界をリードする有名大学病院、私立病院が林立する地域ですね。

当院もその一角を成しているのですが、その中では比較的「地味」な存在に思われがちですね(笑)。 でも実態は、全国42国立大学病院中、1病床当たりの収益は1位で、平均在院日数の短さもトップクラスなんです。それに、大学病院にしては自由な雰囲気があって、外から来る人も分け隔てなく受け入れて、伸び伸びと活動させてくれる土壌は魅力的だと思いますよ。実際、私もそうして受け入れてもらいました。

公的な取り組みにも積極的に参画していて、平成21年度の文部科学省大学改革推進事業「看護職キャリアシステム構築プラン」では、当看護部と大学の保健衛生学科との共同プランである『看護職IKASHIKAキャリアパスの開発~メンター・PBL方式による~』が、応募大学48校の難関をくぐり抜け、東北大学や慶應義塾大学などとともに8大学の一つに選定されています。

──どのようなプランなのですか?

これは大学病院看護部とその大学の看護学部・看護学科等が連携して、体系立った看護教育プログラムを開発し、臨床の看護職や基礎教育過程への教育レベルを向上させることで、効率的・継続的な専門能力の習得と向上を図るものなのですが、当院のプログラムは、現在の院内教育プログラムに学生から新人までの一環教育と、指導体制にメンタリングを導入したことが評価されたようでした。

既に5年間のプロジェクトがスタートしていて、学生からエキスパートナースに至るまで、一貫した看護職のキャリア育成支援システムを開発しながら実践中です。少しお話しするだけでも、大いに誇れるすばらしい点がたくさんあるのですから、これからはもっともっとPRしていかなければなりませんね(笑)。

ある師長との出会いが転機に

──プロジェクトに参画するきっかけとなる、人材育成への思いは以前から強かったのですか。

私自身、看護歴3年目の中途で当院に入職したのですが、それまでの勤務先での看護は、医師の補助的役割が大きく、日々の看護業務をこなす単なる労働力ととらえられているようで、看護自体を深く考える余裕すらありませんでした。

このままで自分のやっている看護に将来性があるのだろうか、と不安を抱いて退職しましたが、やはり看護から離れることはできずに当院へ転職。そのとき配属された、脳外科病棟の師長との出会いが大きな転機となりました。

師長はカンファレンスや看護研究などを通して、実践するケアの根拠を常に考えることを教えてくださり、看護に対して真摯に向き合う後ろ姿から、看護とは何かを考えることを学びました。個を大切にする当院の看護を通じて、私は人としても成長できたと思っています。

──よい師長とよい環境に恵まれましたね。

でも、私がそうだったように、最初からすべての看護師が「考える看護」を現場で習得できるとは限りません。卒後入職した病院で「考える看護」の基礎をしっかりと身につけられれば、どのような場面でも応用できるし、障害にぶつかっても看護から離れようとは思わないでしょう。だからこそ、最初の職場環境は肝心だと思っています。

幸い当看護部には緩やかでも少しずつ成長できればよいと考える風土と、保健衛生学科との協力体制がもともとありましたから、学生から臨床の看護師までの一環教育プログラムにつなげることができたわけです。

メンターの育成がカギを握る

──職場環境を整えるには教育が要ということですが、看護部独自ではどんな工夫をされていますか。

私自身が素晴らしい先輩や同僚に出会って学ぶことができたので、臨床では実践を通して学んでほしいですね。でも、手とり足とり教えるのではなく、自分で感じて気づいてほしい。言われたことだけではなく、自らキャッチして実践する「主体性をもつこと」が大切です。そして、それを一人一人が考えて実践できるように、周囲がしっかりと支援する体制を整えること、つまりメンターの育成が鍵を握っていると思います。

例えば、当院の院内教育プログラムにはグループディスカッションを頻回に計画していますが、必要時先輩の看護師がついて支援・指導をしています。同期同士で悩みを共感したり解決法を探ったり、あるいは上のレベルの看護師からアドバイスを受けて話し合う。指導者からの一方的な指導では納得できないことも、ディスカッションを通して自分の内側から感じることができれば、正そうと努力するでしょう。

──学びの主体性を引き出しているのですね。

こうしたグループディスカッションはどのレベルでも実践しており、例えば当院に3人いる副看護部長は、自分の担当の「看護協力グループ」を通して、グループの師長を支援しています。この「看護協力グループ」は、グループ内の看護管理・運営に関する問題について協力し合い、各看護単位の円滑な活動を支援するもので、病棟や外来の師長ら8~9名が1グループとなって構成されています。そして、私もその3人の副看護部長を支援しています。

師長たちには常々「管理者は自分の病棟だけでなく、看護部全体、病院全体を見て管理してもらいたい」と言っているのですが、看護協力グループでのディスカッションを通して、周りの病棟も見えるようになるし、互いを支援し合い、苦しいときには自然と応援する自主性が芽生えてくる。リーダーシップ能力には欠かせない、ジェネラルな視点を養うことにもつながっています。

(次のページは、小牟田さんが考えている看護のスキルアップについてです。)

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