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【連載】基礎から学ぶ 漢方薬ガイド

第3回 漢方の「虚実」「寒熱」「表裏」「気・血・水」って?

監修 西村 甲

鈴鹿医療科学大学 鍼灸学部 教授

Kanpou

漢方医学の診断方法には、西洋医学と異なる考え方がベースにあります。まずは診断の基本となる「証」のとらえ方について触れてみることにしましょう。


漢方医学の「証」が意味すること

漢方医学での診断は、治療法の診断であることが大きな特徴です。西洋医学では、病気の原因を解明して病名を診断し、その診断名によって治療法が決定していきます。ここが、漢方医学と西洋医学との根本的な違いになっています。

その漢方医学での診断において追究されるのが、「証」です。ここでいう「証」とは、単なる西洋医学での「症状」という概念だけでなく、患者さんの体質であり、その患者さん固有の病態の特徴を意味します。

もともと漢方医学には「同病異治」「異病同治」という言葉があります。これは、同じ病気であっても、患者さんの体質や症状によって処方と治療法が異なり、逆に違った病気であっても、患者さんの体質や病態によっては、処方や治療法が同じになるという考えです。

つまり、西洋医学が患者さん個々の状態ではなく病気を診断してきたのに対して、漢方医学は証(患者さんの体質・病態)をみて、治療法を決定しているということになります。

したがって、漢方医学では患者さんの証が変化すれば、治療法もまたその証に適合した治療法へと変化することになるわけです。

診断のベースになる陰陽論と五行論

中国の伝統医学から発展してきた漢方医学は、その医学理論も古代中国の思想の影響を強く受けています。この思想が「陰陽論」と「五行論」です。

陰陽論とは、一つの宇宙・世界観を表す概念です。世界のすべての物事は大きく2つ――「陰」と「陽」の対照的な異なる性質に分類することができ、それらは互いに関連し合って、万物が構成されているという考えです。

例えば、「明るい(陽)⇔暗い(陰)」「熱い(陽)⇔寒い(陰)」「上(陽)⇔下(陰)」といったように、物事を二面的にとらえていきます。

臨床的にみると、陽証は症状が強くはっきりと現れ、陰証は潜在性であることが多くなります。例えば、風邪をひいた場合、陽証のときは高熱や咳などを訴えますが、陰証ではただ何となくだるいといった訴えが中心になることがあります。

しかし、この陰陽のバランスだけで複雑な事象を説明するには限界があります。後にそれを補うために、5つの要素から森羅万象の仕組みを解釈したのが五行論です。

ここでいう5つの要素とは、木・火・土・金・水で、万物はその属する要素によって性質が異なり、互いに関連し合って世界が成り立っているとしています。

五行論では、木→火→土→金→水→木が促進的な作用関係(相生)に、水→火→金→木→土→水が抑制的な作用関係(相剋)にあり、それによって
相互バランスがとられています。

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