【連載】大切な人を亡くす子どもへのケア

第15回 チャイルドライフスペシャリストの役割(前編)

監修 廣岡佳代

訪問看護パリアン訪問看護師 聖路加看護大学看護実践開発研究センター客員研究員

協力 三浦絵莉子

聖路加国際病院 こども医療支援室 チャイルド・ライフ・スペシャリスト

協力 石田智美

聖路加国際病院チャイルドライフスペシャリスト

病気の子どもたちが治療や入院によって受けるストレスを軽減し、子どもらしい生活が送れるようサポートする専門職種がチャイルドライフスペシャリスト(CLS)です。

日本の医療施設では主に小児科などで、病気の子どもの精神的ケアを行ってきたCLSは、近年ではその専門スキルを生かし、親が病気の子どもに対するケアへと、活動範囲を広げています。


CLSは子どもの精神的ケアを病院で行う専門家

病院でのCLSの役割は、治療を受ける子どもに対して、理解できるように説明して不安を軽減し「心の準備」を促したり、治療や処置などに付き添って最後まで治療を終えられるよう支援することです。

また、復学や家族への支援を行い、さまざまな場面で、子どもが安心して治療に臨めるように環境を整えてサポートしています。さらに、子どもを亡くす家族や兄弟のグリーフケアなどを行うこともあります。

こうしたCLSによる支援は、病気の子どもだけではなく、病気の親をもつ子どもなど、それまでの日常生活が乱され、大きな不安にさらされている子どもたちにも提供されています。

現在、聖路加国際病院では、CLSが病気の子どもを対象とした活動を中心に行うとともに、緩和ケア病棟やERなどから依頼があった場合には、家族の見舞いに来ている子どもたちにかかわり、子どもが家族の一員として大切なときが過ごせるようにサポートしています。

事例1──「感情を表さない長男が心配」という依頼

膵臓がんが全身転移し、終末期にある40歳代の男性Aさんが、症状緩和のために緩和ケア病棟に入院してきました。Aさんには、8歳の長男と6歳の長女、2歳の次女の3人の子どもがいました。

子どもを含めた家族全員とも、父親ががんであること、治らない病気であることを知っており、子どもたちは毎日のように病室を訪れていました。

そのような子どもたちに対して、母であるBさんは、「子どもたちを頻繁に病室に連れてきているが、それが子どもたちにとっていいことなのか、迷うことがある。父親が苦しそうにしている場面を見せることによって、子どもたちにつらい思いをさせているかもしれない」などと、悩んでいました。

特に長男については、「ほとんど涙を見せることがなく、感情を抑え込んでいるのか、心配」であるため、担当医師からサポートの依頼がありました。

かかわりのなかで子どもの率直な表現を待つ

まずは、小児科医師と一緒にAさんの病室を訪れました。子どもたちは、情緒面などにもこれといった問題はなく元気な様子だったので、家族の希望を聞きながら、今後は、「子どもたちが抵抗なく病院に来ることができ、その時間を楽しめるようにすること」を目的にかかわっていくことにしました。

子どもたちとは、面会のたびに粘土や工作、人形遊びなどのアクティビティ(遊び)をして過ごしました。一緒に過ごす中で、子どもたちの様子や父親についての思いなどを観察していきましたが、子どもたちは遊びを楽しんでおり、父親についてあまり多く話すことはありませんでした。

長男には、父親の話を避けている様子もなく、ときおり、「家で一番強いのはパパで、その次が僕」「今は僕の方が足が速いかも。でもそれはパパが病気だから、仕方ないよね」などと、話すことがありました。おそらく、父親の病気・治療による変化を彼なりに理解し、そう表現していたのでしょう。

また、感情を表出しないことがストレスになっている様子も見られなかったので、無理に聞き出すことはしないで、本人がその気になったらいつでも話を聞くという雰囲気をつくりながら見守りました。

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