【連載】初歩からわかる看護研究

Step10【看護研究】倫理的配慮のポイント

監修 富田真佐子

四国大学看護学部看護学科・教授

前回では、研究計画書における倫理的配慮ついて解説しました。今回からは看護研究における倫理的配慮について、もっと詳しく解説していきます。


【看護研究まとめ記事】
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意義や必要性がない研究は倫理に反する

倫理については看護における課題として、長年注目されてきました。看護研究においても、近年特に厳しく患者さんの権利や尊厳を守るということが、重視されています。

私たち看護職はいつでも患者さんの立場に立ち、患者さんを守ることを当然のこととしています。研究においても、患者さんに苦痛を与えたり、権利を侵害したりする気持ちは全くありません。

しかし、気がつかないうちに対象者に、何かしらの不利益を与えてしまうということは、残念ながら起こりうることです。ですから研究を行う上でも、細心の注意を払っていかなければなりません。

看護研究を行う場合には、研究の準備を始める段階から論文を発表するまで、あるいはその後それを実践に活かすまで、全てのプロセスにおいて、倫理的配慮を徹底する必要があります。

それでは、具体的にどんなことに注意していけばよいのか、説明していきましょう。

まずは、あなたの研究が看護の発展において十分意義があり、よりよいケアにつなげていくために必要であることが重要です。例えば、簡単なアンケート調査で負担をかけないとしても、研究をすること自体に意義がなければ、アンケートをお願いすることすら倫理に反するのです。

また、既に研究が十分に積み重ねられ、結果が明確になっている課題を繰り返すことも、患者さんに無用な負担をかけることになってしまいます。研究計画を立てる上で、しっかりと先行文献を調べ、研究を行う意義があることの根拠を明らかにしましょう。

安全安楽の確保と患者さんの尊厳を守る

例えば入院中の患者さんが対象者だとします。患者さんは治療のために入院しているわけですから、研究に協力することでそれを阻害するようではいけません。

特に重症の患者さんや高齢者、小児、精神疾患の患者さんなどでは、十分な配慮が必要です。患者さんの立場に立って、研究に協力することができる状況なのか、悪い影響を与えないか、尊厳を守ることができるか、よく吟味してください。

準実験研究や実践報告などのように、何らかのケアを実際に行うような場合は、対象者の安全と安楽を図ります。少しでも苦痛が生じる研究は、対象者の同意が得られたとしても行うべきではありません。

面接調査では、インタビューが対象者に苦痛となる場合もあります。例えば、インタビューの内容が対象者にとって思い出したくないつらい体験であったなら、聞かれること自体不愉快なことかもしれません。

せっかくそれを乗り越えて前向きに考え始めたのに、またつらい過去に戻ってしまうなど、それを想起させることで心理的な影響を及ぼす危険性を含んでいます。研究が及ぼすリスクについて、慎重に検討しなければなりません。

もしも面接中や実験の途中で対象者に何か不利益や悪影響が生じた場合、ただちに研究を中止することはもちろん、そのときの対応策についても講じておく必要があります。同様に、質問紙法でも非常に個人的なことを質問するような場合、質問に答えることで対象者の尊厳を傷つけないかについても、配慮します。

自己決定権とプライバシーを守るポイント

以下、対象者の権利を擁護するためのポイントを説明します。

自己決定の権利(研究への参加と中断の権利)

対象者は研究に協力すること、断ること、途中でやめることの権利をもっています。対象者のなかには、協力しないと悪いのではないかと無理をしたり、十分な看護を受けられなくなるのではないかと、心配したりする方もいらっしゃいます。

研究に協力しなくても、治療や看護上不利益を被ることがないことを、十分説明した上で依頼する必要があります。

プライバシーの確保

研究データの多くは、非常に個人的な情報を含んでいます。ですから対象者のプライバシーは、厳重に守らなければなりません。そのためには、情報漏えいの防止、匿名性と守秘義務、データの保護に努めます。

<データ収集時>

まず、無用なデータを取らない配慮が重要です。対象者の基本的属性として年齢や性別がありますが、必要不可欠なものだけに絞ってください。家族構成や結婚歴など、もしあなたの研究テーマにおいてそれらが重要でなければ省きます。

各質問項目についても、しっかりとデータ収集する根拠を得たものだけに絞ります。この連載では、概念枠組みを書くことに重点を置いてきました。それはデータ収集する根拠を、概念枠組みにはっきり示すためでもあります。

この点については、これからの回を研究デザインのタイプ別に説明していきます。実際にデータを収集するときにも、プライバシーの確保が重要です。

例えば患者さんにインタビューを行う場合、大部屋のベッドサイドなどで行うと、ほかの患者さんに聞こえてしまいます。インタビューは、できるだけ途中で人の出入りがないような個室で行います。

質問紙を配布する行為も注意が必要です。ある疾患を有する患者さんに質問紙を配布するとしたら、ほかの患者さんが見ているなかで質問紙を配布すると、配布という行為そのものが情報を漏らしていることになります。

研究を依頼する場合も同様です。これは時に見落としがちですので、注意してください。

<データ回収時>

得られたデータは誰のものかわからないようにし、匿名性を守ります。

質問紙法では、匿名で行う場合がほとんどですが、質問紙を回収するときは、できれば封筒に入れて封をし、回収BOXに投函する、あるいは郵送する方法をとります。

質問紙の回収BOXは、投函口を必要以上に大きくしないようにしてください。中が容易に見え、手を入れて抜き取ることができるような回収BOXは、望ましくありません。

また、やむを得ず担当看護師に手渡ししてもらう場合、担当看護師が質問紙の回答内容を見ることができないよう、封筒に入れ封をしてもらいます。

<データの扱い>

面接法や観察法、質問紙を読み上げる場合など、直接対象者に会う場合は、得られたデータが誰のものなのかを、研究者が知ることになります。

研究者以外が誰のデータなのか判別できないように、コンピュータに入力する際には、氏名ではなく数字やアルファベットなどを使い、本人が特定できないようにします。インタビューの録音内容などは、テープ起こしをして逐語録を作成したら、直ちに録音を消去します。

質問紙でもデータはできるだけ数値化し、パソコンに入力した後の質問紙は、責任をもってシュレッダーなどで破棄します。

パソコンに入力したデータの厳重管理も重要です。ExcelやWordのファイルは保護するよう、パスワードを設定しましょう。

安易なコピーは避けます。USBメモリーやパソコンを家に持ち帰ると紛失する恐れがありますので、持ち出さないようにしたほうが安全です。

論文にするときには、特にType1の因子探索研究やほかのタイプの研究でも、事例で分析した場合、患者さんの背景などを詳細に記すことによって、個人が特定される危険があります。研究結果を解釈する上で関係のないデータ(対象者のイニシャルや入院日など)は伏せ、個別の情報は最小限にします。

年齢は結果を解釈する上で重要になることが多いですが、個人が特定される恐れがあるなら、「50歳代」などに留めておきましょう。

WordとExcelの文書を保護するパスワード設定法

(ここではWordとExcelともに2010でのパスワード設定の手順を説明します)

1 メニュー[ファイル]→[名前をつけて保存]を開き、画面の[ツール]から[全体オプション]をクリック

図 名前を付けて保存の画面(画面はWord2010) パスワード設定法

2 パスワードを入力し、[OK]をクリック。次いでパスワードの確認画面で再度パスワードを入力して[OK]をクリックします。これで設定完了です。

図 全般オプションの画面(画面はWord2010) パスワード設定法②

図 全般オプションの画面(画面はExcel2010) パスワード設定法③

ケアを受けない不利益の回避と知る権利の保護

以下に看護研究における、患者さんの公平性の権利、知る権利について説明します。

公平性の権利

Type5準実験研究では、対照群(実験しない群)にケアを提供しないという、不利益を与えてしまうことがあります。

例えばリラクゼーションの効果を調べるために、リラクゼーションを施行する群(実験群)と施行しない群(対照群)を設けるような場合です。実験群において効果が確認できたら、データ収集後に対照群の患者さんにも行うという配慮も必要です。

知る権利

まず、対象者は研究の目的や方法について、正しく知る権利があります。たとえ可能性は低くともリスクがある場合は、それを隠さず提示し、リスクを回避する方法を伝えます。

研究を依頼するときには説明書を渡し、不明な点についていつでも尋ねられるように、問い合わせ先を明記します。また研究が終わった後は、研究の結果について知る権利もあります。

可能であれば、結果を冊子にまとめて対象者に配布するなど、結果を報告するとよいでしょう。対象者も研究結果について、興味をもっていることが多いものです。

次のページでも引き続き、説明書と同意書について説明していきます。

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