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【連載】呼吸器3大疾患のケア

【気管支喘息の看護】症状と診断、治療の流れ

解説 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

解説 田中一正

昭和大学 教授

気管支喘息は近年、薬物治療の進化により、死亡率は年々低下していますが、重症化すると死に至ることも少なくありません。

そこでここでは気管支喘息の症状や診断、治療などの基本を押さえながら、発作時の観察や重症度の評価から、酸素投与器具や吸入器具の取り扱い方までを解説します。


【目次】


気管支喘息とは

病態

アレルギー反応や細菌・ウイルス感染などが発端となり、慢性的に気管支に炎症を起こしている状態です。好酸球やマスト細胞などの炎症細胞が放出するヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が、気管支平滑筋を収縮させて気道を狭窄させます。

加えて刺激に対して気道が過敏になっており、刺激因子によって喘息発作を引き起こします。症状のコントロールが不良の状態が続くと、発作により、障害された気道壁が線維質に置き換わり肥厚し、気道の内腔が狭小化していきます(リモデリング)。

症状と所見

発作性の気道収縮による咳嗽、ヒューヒュー、ゼーゼーという喘鳴、呼吸困難などの症状がみられます。ひどくなると呼吸が苦しくて寝ていられない起座呼吸の状態になります。

また、強い胸痛や、気道部分が腫れて痛んだり、外見が卵白のような痰が出たり、背中が張ったりするなど、人によってさまざまです。症状は氷山の一角のようなもので、慢性的に存在する気道炎症と気道過敏性、気道閉塞からこうした症状が表れます。そのため、非発作時でも慢性気道炎症による喀痰や労作時息切れなどがあります。

重症であれば、誘因によっては容体が急激に変化し、チアノーゼや意識障害を来し、喘息死(窒息死)に至る場合もあります。

診断

前項のような自覚症状、身体所見から喘息が疑われる場合、胸部X線写真、血液検査、IgE検査などが行われます。喘息は可逆性の気道閉塞が特徴なので、肺機能検査による、気管支拡張薬の吸入前後の検査を行います。

まずは1秒率(FEV1.0%)が70%以下であるか否かで気道の閉塞の有無を確認します。その後、気管支拡張薬(β2 刺激薬)の吸入を行い、1秒量が有意に変化するか否かで、可逆性を判断します。ただし、気道のリモデリングが起こっている場合は典型的な可逆性を示さないことが多くあります。

気管支喘息の改善率

【関連記事】
* 肺機能検査の目的と看護のポイント
* 胸部画像診断(CXR、CT)の目的と看護のポイント

治療

以前は気管支拡張作用のある内服薬による治療が中心でしたが、現在では、吸入ステロイド薬を継続的に使用することによって、炎症を抑え喘息発作を起こさないようにする治療へと方針が大きく変わりました。

発作時にはβ2刺激薬を使用し、気管支を一時的に拡張させます(図)。治療の進化により、喘息による死亡者数は1995年の7253人をピークに、2011年は2057人と年々減少しています。

喘息の病態と吸入薬治療

(図)喘息の病態と吸入薬治療

喘息は軽症から喘息死を来すような重篤な状態まで幅広く、日本アレルギー学会の「喘息予防・管理ガイドライン2009」のガイドラインで、重症度ごとに薬物療法が示されており、それに応じて治療していくのが一般的です。

ほとんどが在宅治療となるので、患者さんのセルフコントロールが重要です。正しい薬物の使用や発作の誘因となる因子を防止するなど、正しい治療によりコントロールが可能な疾患になってきています。

気管支喘息の病状の観察と評価

低酸素症

喘息発作の患者さんをケアする場合に、最も大切なのは低酸素症を見逃さないことです。意識レベルの低下がなく、会話が普通にできる程度の発作であれば、低酸素症(SpO2<90% または PaO2<60Torr)を呈することはまれです。

逆に呼吸困難が悪化しているような状況では、通常の吸気・呼気ができなくなってくるために、会話はとぎれとぎれになります。一度に文章として話すことができず、単語だけを話すような状態であれば、喘息発作の重症化の危険があり、SpO2の持続的なモニタリングによる観察が必要です。

ABG(動脈血液ガス)においてPaCO2の上昇、つまり2型呼吸不全が確認された場合には、人工呼吸の適応です。気管内挿管をするのか、NPPVでマスク換気をするのかは担当医の判断になります。

ただし、慢性疾患を抱えている患者さんなどの意思(リビングウィル)として、人工呼吸を望まないという方もいるので、患者さんやご家族が治療の方向性について、医師から十分に説明を受け、納得しているかを確認することが重要です。

治療が効果を上げ、ガス交換の障害が消えて呼吸状態が安定してくると、それがSpO2などのデータに反映されてきます。

ただし、安静時にはSpO2が良くなっていても、体を動かしたり、酸素吸入を一時的に外したりすると、すぐに低酸素になってしまうこともあるので、酸素の減量にも十分な注意が必要です。安静時だけでなく、常に労作時のSpO2を確認しながら、酸素を減量してください。

【関連記事】
* 【酸素化の評価】PaO2が低い・高いときのアセスメントとケア

喘息コントロールテスト(ACT)

喘息コントロールテストは、比較的簡単な質問に答えることで、その人の最近の喘息のコントロールの度合いを調べるものです。外来に通う患者さんが、担当の医師に症状を伝えるツールとして開発されました。

そのため質問は、「最近の4週間で○○は何回くらいありましたか」といったように、長い期間の症状を聞いています。そこで入院したばかり、または入院中の患者さんであれば、質問の2~5を中心に質問するといいでしょう。

入院してからの治療が効果を発揮しているのか、自覚症状は改善しているのか、などを評価する場合に、看護師がその都度自分の尺度で評価していると、患者さんの症状の変化をとらえることが大変です。そのような場合にも、ACTは客観的な評価ツールとして活用できます。

気管支喘息の聴診

呼吸音で発作の重症度を見極める

呼吸音はその時の患者さんの気管支の状態を、リアルタイムで評価できる大切なツールです。気管支の狭窄が軽度であれば呼気の一部にだけ喘鳴が聞こえ、重症化するとともに喘鳴の聞こえる範囲が呼気全体へ、そして吸気へと広がっていきます。

そして、最も重症な状態では吸気・呼気ともに非常に弱くなってしまうため、喘鳴が聞こえなくなります。

呼吸音の観察は、発作の重症度を見極めるツールであるとともに、ネブライザーなどによる治療の効果を判定するのにも有用です。

吸入前後で呼吸音の違いを聴き分けることにより、1回のネブライザー治療でどのくらい気管支の狭窄が改善するかを確認し、SpO2や自覚症状とともに治療の目安としていきます。

喘鳴と気管支狭窄

(図)喘鳴と気管支狭窄
著:急性期のアセスメント、メディカルスタッフのためのトータル呼吸ケア 気管支喘息、p.111、メジカルビュー社、2004.より引用

気管支喘息の治療の流れ

急性増悪への対応

気管支喘息は慢性疾患であるために、外来での受診と患者さんのセルフコントロールが中心です。しかしセルフコントロールでは十分に対処できないほどの発作で来院した時、どのような流れで治療が開始され、入院に至ったのか、「喘息予防・管理ガイドライン2009」(以下、ガイドライン)に基づいた治療の流れを知っておくことは、病棟でのケアにも必要です。

ガイドラインでは、喘息患者さんが発作を起こして救急外来を受診したときの、管理の指標が示されています(図)。また、ガイドラインには発作強度が分類されているので、それに基づき緊急度を判別します。

次に他の疾患との鑑別を行った上で、ガイドラインの治療計画に基づいた治療が開始されます。

このような急性増悪時の入院までの流れを頭に入れておくと、病棟での患者さんのアセスメントやケアに役立ちます。

救急外来における喘息発作治療の流れ

(図)救急外来における喘息発作治療の流れ
呼吸ケアセミナー 編集、田中一正 監修、南雲秀子 著:急性期のアセスメント、メディカルスタッフのためのトータル呼吸ケア 気管支喘息、p.106、メジカルビュー社、2004.より引用、一部改変

ガイドラインに基づいた治療

喘息の治療は、継続的な薬物治療が基本です。それはガイドラインの「喘息治療ステップ」に基づいて実施され、コントロール状態の評価(表)に基づき、コントロール良好を目指します。

それによると、症状に応じて薬剤の種類や量、治療法が増えます。受診時の症状と治療状況を総合して、「治療ステップ1」から「治療ステップ4」までの4段階に分類され、例えば治療ステップ1なら「長期管理薬1剤+発作治療薬」、治療ステップ2は「長期管理薬2剤+発作治療薬」、治療ステップ3は「長期管理薬3剤以上+発作治療薬」、治療ステップ4は「長期管理薬+発作治療薬+追加療法」となっています。

目の前の患者さんが現在、どのような治療を受けているかを確認し、治療をサポートしたり、正しい服薬方法を指導するために、ガイドラインは常に手元に置いておくようにしましょう。

気管支喘息 コントロール状態の評価

(表)コントロール状態の評価
日本アレルギー学会 喘息予防ガイドライン専門部会 監修:喘息予防・管理ガイドライン2009、薬物によるコントロール、p.107、日本アレルギー学会、2009.より引用

酸素とネブライザーの取り扱いのポイント

酸素投与器具の選択

病棟での酸素投与では、低酸素症がひどければ酸素マスクを、軽症であれば酸素カニューレを使用するのが一般的です。

酸素マスクには単純酸素マスクのほかに、袋がついていてより高濃度の酸素投与を狙うリザーバーつきマスク、酸素と空気を混合する部品がついていて一定のF1O2(吸入気酸素濃度)を設定できるベンチュリーマスク、さらに蒸留水を霧状にして加湿できるインスピロンマスクなど、いくつかの種類があります。

気管支喘息だけで入院している患者さんであれば、単純マスクやリザーバーマスクが適当です。ただし、COPDなどの慢性疾患を合併症として持っている患者さんの場合は、このようなマスクでは、呼吸回数などによって非常に高濃度の酸素が投与され、逆に呼吸抑制が起こることがあります。そのため、低濃度の酸素を提供できるベンチュリーマスクが好まれます。

インスピロンマスクのような霧が出るマスクは、蒸留水の霧を吸入させることで気管支に刺激を与えてしまいます。その結果、発作を悪化させる危険性があるので、使わないほうがいいでしょう。ネブライザーも霧を吸入させますが、生理食塩水であれば問題ありません。

吸入器具の使用方法

気管支拡張薬はネブライザー用の製剤と、スプレー型やパウダー型などがあります。発作中は呼吸を意識的に合わせることが難しかったり、息止めが難しくなっているため、1回の吸入で目的の量を吸入させようとするスプレー型やパウダー型よりも、10分以上の時間をかけてゆっくり吸入できるネブライザーを使用するほうが効果的です。

ネブライザーの器機はジェットネブライザーまたは超音波ネブライザー、メッシュ式ネブライザーの中から、それぞれの施設で使いやすいものを選びましょう。発作中にSpO2が下がっている場合には、ジェットネブライザーを酸素5~7L / 分で駆動させる方法が、最も安定していて効果的です。

ネブライザーは、ミスト状になった薬液を肺の奥まで直接到達させるため、器具が清潔でないと感染の危険が生じます。可能な限り患者さんごとに使い捨ての器具を用いるなど、器具の取り扱いには十分注意してください。

ネブライザーの効果の判定

効果の判定は酸素化、自覚症状、呼吸音の変化を評価します。喘息発作時の呼吸音は「多源性の喘鳴」と言って、いくつかの音源から不協和音のように重なって聞こえるのが特徴です。

咳嗽の前後ではほとんど呼吸音は変化しませんが、吸入が効果的にできれば呼吸音が変化します。ごく軽い発作のときを除いて、吸入の後には気管支が拡張するので、それまで呼吸音が聞こえなかった気管支でも、音が聞こえるようになります。そのため、吸入後のほうが喘鳴がひどいように聞こえることもあります。

※ 次回は「慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護】症状と治療・ケア」について解説します。

(『ナース専科マガジン』2012年12月増刊号「一冊まるごと呼吸ケア」より転載)

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