【連載】アメリカで働く! オンコロジーナース

第1回 患者さんと近づくことができる、がん看護

執筆 ファウラー実絵

アメリカ看護暦6年

毎年さまざまな化学療法そして他の治療法が開発・発展されているがん治療、それにかかわるナースとしてどのように今のトレンドを学び、それぞれの薬、副作用、治療法をナースから患者さんそして家族に伝えてあげられるかが、今のがん看護に必要だとされています。

それぞれの治療法についてドクターがナースに望むこと、ナースの役割などを4回に分けて説明していきます。


患者さんと近づくことができるがん看護

私ががん看護を選んだ理由は、看護学校時代の教授の一言でした。

「がんの患者さんとは家族のような関係を築けますよ」

単身で渡米して以来、友達はたくさんできたけれど、"家族のような関係"を持てる人はとても少なく、この一言がずっと心に残っていました。

看護学校最後の学期の実習でもがん病棟を選び、そこで実際のナースが病床で行うことをたくさん学んだ後、患者さんと本当に近づける、がん看護が私に一番適していると思いました。アメリカのナースは看護学校(大学)を卒業する時点で、ほぼ専門を決めています。

私は看護学部で勉強を始めたころは産婦人科が第一希望でしたが、それぞれの専門分野で実習をしていくうちに、がん看護と最終的に決定しました。

私には日本での看護師としての経験がありません。ですが、アメリカのがん看護師として学んだことを、少しでも多くの皆さんに知ってもらい、患者さんのケアに生かしてもらいたいと思っています。

化学療法

患者・家族への教育は看護師が担当

最近アメリカでは、化学療法は重症患者を除き、ほとんどが外来で済んでいます。病院のがん病棟は毎年ベッド数が減少し、場所によっては他の病棟に必要によってがん患者のベッドを設けるという時代です。

ということは、外来で化学治療を受けた患者さんが帰宅した後にケアするのは家族。ナースは化学療法を始める前に患者そして家族への副作用、経口薬の投薬の仕方、栄養面の教育の責任があります。

外来の化学療法ナースは化学療法開始の前に患者と家族を含めての教育を1時間ほど行います。主な内容は下記のとおりです。

  1. 経口薬の投薬方法-痛み止め、吐き気止めが主で、いつ飲み始めるのが適切か、投薬の間隔、薬が効かない場合の処置などを話し合います
  2. 副作用時の対処法-副作用も、化学療法を受けているときに症状はなかったけれど、帰宅後に突然吐き気や嘔吐、発疹、血圧の上昇などが起こる場合もあるので、一緒に生活している家族の観察力、処置の仕方、どこへまず連絡するべきかなどが必要になってきます
  3. 食事の管理-化学療法により、吐き気や倦怠感などで食欲がない場合の対処法など指示します
  4. ADLの管理-仕事は続けていくのか、毎日の軽い運動、睡眠の必要性、通院への手段などを話し合います

患者と家族の質問、心配事などもその場で話し合い、化学療法初日に備えます。しかし、必ずしもこの1時間の患者・家族教育が十分といえる訳ではなく、化学療法初日から終了までナースが主となり、副作用の緩和処置や、心のケアを提供します。

さらに、化学療法終了に近づくと、倦怠感、吐き気、嘔吐などの症状が出るケースが多くなるので、ドクターとの連携で経口薬の変更や、投薬法の変更などをします。

定期的に知識を得たり、情報交換を行う

こちらのナースは定期的に薬品会社が主催となるセミナーに出席し、新しい化学療法の薬について学ぶ機会が多数あります。そこで他クリニックのナースとのネットワーク作りや、ケーススタディを行います。

放射線療法

異常の早期発見に努める

がんの種類または放射線照射の方法により異なってきますが、6~7週間、週末を除く毎日という療法が主となります。患者教育は放射線の照射面積により異なりますが、皮膚の保護、食事の管理が中心となります。

ナースは毎日同じ患者に会う機会があるので、少しの副作用の出現でも、悪化する前に処置が可能になります。体の広い部分を治療する場合、入浴時の注意事項、皮膚に異常が見られたときの対処法などを、ナースが治療を始める前に患者さんに伝えます。定期的にアセスメントを行い、異常の早期発見に努めます。

がん摘出手術について

入院前から退院後の教育を行う

内視鏡手術の発展により、がん摘出の手術も患者さんに負担の少ないものとなってきました。アメリカの病院で内視鏡を使った子宮摘出を行うと、他に異常がない限り、術後24時間以内に退院となるケースがほとんどです。

これは、アメリカの保険の制度によるもので、手術によっては一泊以上の入院は認められません。疾患で医師が手術を必要と示しても、保険会社から手術の許可が下りない場合もまれにあります。

術後24時間以内に退院した場合、患者・家族への教育が重要になってきます。手術患者への教育は入院前から始まり、痛み止め・抗生物質の飲み方、傷口の処置、感染症予防などを複数にわたり退院時まで患者・家族の教育を行います。

ドクターがナースに求めるもの

ドクターは診断、治療はナースが行う

どのがんの治療法を患者が選んだとしても、ナースは患者とその家族の教育をドクターから任されることがほとんどです。こちらではドクターは診断して、ナースが治療する役割を果たしているような気がします。

ドクターはナースに対し、新しい化学療法の副作用の処置の仕方を全て理解しているものとみなし、患者を私たちに預けます。ドクターとの連携と信頼関係ががん看護をしていく中でとても重要と言えるでしょう。

告知がほぼ100%行われるアメリカならではのことだと思いますが、患者・家族、そして治療にかかわるチーム全員が一団となり、治癒への道を歩むのです。

※次回は、がん化学療法・抗がん剤の副作用とそれに対するナースの役割についてお話します。

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