【連載】フィジカルアセスメント症状別編

【発汗異常の看護】発汗異常の原因とアセスメント・ケアのポイント

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

発汗は体温調整の生理現象の一つです。 しかし、いつになく発汗過多がみられたら、そこには何か異常が起こっている恐れがあります。


【目次】


まずは、これを知っておこう!

● 熱の産生と放出のバランスが取れているかを考える

発汗は基本的に生理現象です。私たちの体内では代謝により常に熱が産生されています。この熱を適度に放出しなければ体温は上昇の一途をたどり大変なことになってしまいます。そこで私たちは不感蒸泄と発汗によって熱を放出することで、体温を適度に保っているのです。

通常であれば、多く熱が産生されたら多めに逃がす、産生される熱が少なければ少なめに逃がすようになっています。そして、多めに産生されて多めに逃がしている場合は、体温は高めに、産生が少なく、熱を逃がすのも少ない場合は体温は低めに維持されます。

ですから、暑いときや運動をしたあとはもちろん、疾患などによる発熱時や術後の高体温時などにも、体温上昇に伴って発汗が見られます。このように熱の産生と発汗の釣り合いが取れていれば、問題はありません。この釣り合いが取れていないと体温が上昇したり低下したりしてしまいます。そのため、熱の産生と放熱の釣り合いが取れているかどうかを考えることも大切になります。

発汗のメカニズムと異常

● 発汗異常は大まかに3つの種類に分けられる

では、どのような仕組みで汗が出るのでしょうか? 私たちの身体には、一定の温度が設定されていて、上昇しすぎたり逆に下降しすぎたりしないように、体温を見張っている温度センサーのような機能があります。

このセンサーは、皮膚と脳の視床下部にあります。そして、センサーが「体温が上昇している」と感知すると、体温を下げるために、脳の体温調節中枢から自律神経に発汗指令が出て、汗腺から汗が分泌されるという仕組みです。

寒いときにブルブル震えるシバリングという反応は、センサーが体温降下を感知すると体性神経系に働いて筋肉を震わせて熱を産生しろと指令を発し、それに応じたものです。

このように、気温や湿度が高いと皮膚のセンサーが、運動や疾患などによって体内で熱が産生されると視床下部のセンサーが、それぞれ体温上昇を感知して、発汗を促す場合を温熱性発汗といいます。手のひら、足の裏を除く全身の発汗が促されるのが特徴です。

緊張などの精神的な原因による発汗を精神性発汗といいますが、これは、体温調節とは関係がありません。精神的な興奮が交感神経を刺激して、発汗が促されるのです。汗が出る部位も、手のひらや足の裏が中心です。

また、熱いものや辛いものを食べたときに、顔や首、頭に汗をかくことを味覚性発汗といいます。人によっては甘いものや酸っぱいものを食べたときにも汗が出ることがあります。

汗がたくさん出ても、このような汗ならばいずれも、発汗の原因やメカニズムに応じて適切な対処をすれば問題がありません。しかし、例えば暑くもないのに汗をかいたり、逆にすごく暑いのに汗をかかなかったりという場合には注意が必要です。その発汗異常には何らかの疾患が隠れている恐れがあります。

● 汗が多い

発汗量には個人差があるので、多いとか少ないとか一概にはいえません。しかし、汗をかくような原因が見当たらないのに汗が出る、以前よりも汗の量が増えた、ちょっと動いただけですぐ汗をかくようになった、というようにいつもと違う状態が出現していたら、何らかの異常があると考えられます。

まず感染症の罹患や炎症がある場合は、熱が産生されるので発汗も起こります。
甲状腺機能亢進症は、甲状腺機能が亢進され、全身の機能が過剰に働くため熱の産生量が増加し、発汗量も増えます。汗を異常にかく以外にも、体重減少、眼球突出、手の震えなどの随伴症状が見られることがあります。

汗をかいていて突然気分が悪くなり、ふらふらとする場合には、糖尿病の低血糖発作が考えられます。
また術後では、生体の代謝反応により体温が上昇し、発汗することがあります。

● 汗が少ない

過剰に汗が出るのも問題ですが、反対に真夏のような暑さの中で運動をしても汗をかかないとか汗が少ない場合にも注意が必要です。

汗が出ないということは、体内の水分不足、すなわち脱水症を引き起こしている恐れがあります(脱水については第3回の「口渇」で解説しています)。

また、体重増加、浮腫、倦怠感などの症状を伴っている場合には、甲状腺機能低下症や腎機能の低下の可能性があります。

発汗の分類

緊急対応が必要なのは、糖尿病の低血糖発作

発熱の有無が目安の一つになる

異常な発汗過多が患者さんにみられたら、温熱性発汗、精神性発汗、味覚性発汗のどれに分類できるかをアセスメントしましょう。原因がすぐに明らかにならない場合、発熱の有無が一つの目安になります。例えば、感染症や悪性腫瘍などの発熱性の疾患があると発汗が多くなります。

熱がない場合には、甲状腺機能亢進症の疑いがあります。このほかに、甲状腺ホルモン剤や農薬中毒などでも発汗過多がみられます。

糖尿病の低血糖発作と脱水症には注意

異常な発汗過多で緊急対応が必須なのは、糖尿病の低血糖発作です。逆に汗をかかず、皮膚の乾燥がみられる場合には、脱水症の可能性があります。患者さんからの問診と身体所見を併せて考え、重症度と原因を判断しましょう。
水分補給も経口摂取でよいのか、輸液が必要なほど重症なのかもアセスメントし、輸液が必要なら医師に連絡しましょう。

また、ショック症状が出ている場合もすぐに医師に連絡をして緊急対応が必要です。患者さんが話せる状態なら、問診で緊急度や原因を精査しましょう。
いずれにしても、発汗異常が見られたら、熱の産生と放散のバランスが取れているのかもアセスメントしてきます。

発汗異常のアセスメントと看護のポイント

原因リストを想定しながら、問診で原因を絞り込む

原因リストを想定しながら、患者さんに問診を行い、緊急度と原因を精査しましょう。ここでは発汗過多を主に取り上げています。

発症の時期やきっかけを聞く

「いつごろから汗が出るようになりましたか?」

■ こんな質問で絞り込もう

「汗をかき始めた前後に運動やリハビリなどをしましたか?」
「汗をかく前に食事をしましたか? 何を食べましたか?」
「緊張したり、怖かったり、恥ずかしかったりなど、何かありましたか?」

■ アセスメントのヒント

・手術直後からの発汗であれば、生体反応としての発汗もしくは感染症を起こしている可能性があります。
・発汗前後に身体を動かしていたのであれば、温熱性発汗と考えられます。
・辛いものなど刺激の強いものを食べていたら味覚性発汗の可能性があります。
・緊張したり不安があるなど精神的な要因が思いあたれば、精神性の発汗と考えられます。

発汗の様子を聞く

「主にどのあたりに汗をかいていますか?」

■ こんな質問で絞り込もう

「全身に汗が吹き出てきますか?」
「手のひらや顔、足の裏などに汗が出てきますか?」

■ アセスメントのヒント
・全身に汗が出る場合には、温熱性もしくは生体反応としての発汗といえます。
・手のひらや足の裏、腋窩に汗が出るなら、精神性発汗と考えられます。
・辛いものなど刺激物を食べると、顔に汗が出ます。発汗の時期やきっかけも考慮して判断しましょう。

随伴症状を聞く

「ほかに何か症状はありませんか?」

■ こんな質問で絞り込もう
「熱はありませんか?」
「関節が痛かったり、身体がだるいと感じたりしますか?」
「糖尿病の治療中ですか?」
「胸がドキドキしたり、手が震えたりしますか?」
「体重が減りましたか?」
「甲状腺に異常があると診断されたことはありますか?」
「喉が渇いていませんか?」

■ アセスメントのヒント

・発汗に発熱が伴っていて、さらに、関節痛や倦怠感などがあれば、感染症の疑いがあります。
・糖尿病の治療中で特に服薬後の場合や、動悸、震えがあるならば、低血糖の発作が考えられます。
・動悸や手の震え、体重減少などがあれば、甲状腺機能亢進症の疑いがあります。
・発汗していて喉が渇いている場合は、脱水の徴候と考えられます。

原因の精査と熱の産生量と発汗量のバランスも見る

発汗の原因の手がかりを探すことはもちろん、熱の産生量と発汗量の釣り合いがとれているかどうかも確認しておきます。

バイタルサインを確認する

頻脈や発熱の有無など、必ず確認しましょう。甲状腺機能亢進症の場合、頻脈、動悸などが確認できます。発熱があれば感染症の可能性があります。ショック症状を起こしている場合は、脈拍が微弱になったり、頻呼吸、頻脈などがみられます。

検査データを見る

入院患者さんならば、直近の血液検査データで白血球やCRPの検査値が高くなっていないかを確認しましょう。数値が高い場合には、感染症の疑いが濃厚です。

意識状態の確認

特に重篤な低血糖の場合は昏睡状態に陥る危険があります。脱水症の場合も重篤になるとショック状態に陥ります。緊急度の判断には意識状態の確認も不可欠です。

その他

甲状腺機能亢進症などは眼球突出や手の震えなどの特徴的な症状があります。また、脱水症の疑いがある場合には、皮膚の弾力や唇の乾燥状態などを確認しましょう。

アセスメントを看護につなごう

どのような場合にも、緊急性の判断は重要です。脱水症や低血糖の発作の疑いがある場合には、バイタルサインや意識状態を確認し、緊急対応につなげましょう。
発熱などで感染症の可能性が高い場合、原因精査には検査が必須となることが少なくありません。医師に連絡すると同時にそうした検査の準備も整えましょう。
生命危機などの心配がない場合でも、患者さんにとって発汗過多は決して気持ちのいい状態ではありません。清潔ケアを心がけ、発汗で失われた水分の補給にも配慮しましょう。

緊急対応が終わったら、原因を解明することも忘れない

糖尿病の既往があり、低血糖が疑われる場合には、角砂糖などを摂取したり、ブドウ糖を投与します。急変して昏睡状態に陥る恐れもあるので、とにかく速やかに医師に連絡しましょう。
また、糖尿病の既往がなくても低血糖が疑われる場合は、簡易血糖測定器で血糖値を測定し、ブドウ糖投与で血糖値改善を図るのが基本的な治療です。
治療が一段落したら、低血糖の発作が起こった原因を解明することが重要です。薬の効き過ぎ、服薬と食事のタイミングが合わない、食事が不規則あるいは内容に問題があるなど、いろいろな原因が想定できます。これらを精査し、発作が起こらないようにするためにはどうしたらよいのか、患者さんとその家族に指導する必要があります。
また、ショック症状の徴候の一つとして発汗がみられた場合も緊急対応が必要になります。

緊急性がなくても、ケアは必要

大量に汗をかいている場合には、こまめに汗を拭う必要があります。汗が流れるままにしておくと、寝衣が湿ってしまい、身体が冷えすぎてしまうことがあります。こまめに汗をぬぐい、清拭や着替えなどの清潔ケアで、患者さんの気持ちも身体もリフレッシュできるようにしましょう。
精神性発汗の場合には、患者さんの気持ちを楽にすることが治療につながります。患者さんの精神状態を緊張させる原因を探り出し、事情によってはカウンセリングや診療内科、精神科との連携などが必要になることもあるかもしれません。
どのような場合でも、発汗がみられたら脱水を起こさないように水分補給を心掛けます。

まとめ

ごく当たり前の生理現象でも度が過ぎると病的な色彩が強くなります。発汗過多もその一例といえるでしょう。
当たり前の生理現象から異常に傾いたとき、そのメカニズムを理解していると、どちらにどういう理由で傾いているのか、判断の手がかりになるでしょう。

(ナース専科「マガジン」2010年9月号より転載)

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