【連載】呼吸器3大疾患のケア

【慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護】症状と治療・ケア

解説 南雲秀子

湘南厚木病院 看護師長/米国呼吸療法士(RRT) / 保健医療学修士(MHSc) 日本呼吸ケアネットワーク 理事

解説 田中一正

昭和大学 教授

 慢性閉塞肺疾患(COPD)は、初期ではほとんど症状がありませんが、気道と肺胞に不可逆的な破壊が生じているため、治癒は難しい疾患です。

 このようなCOPDの病態や治療などの基本を押さえながら、患者さんのQOL向上のための継続治療や日常生活での管理・指導について解説します。


目次


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慢性閉塞肺疾患(COPD)とは?

病態

 末梢気道に慢性の炎症が起こると、気流が制限されるために肺胞の弾力性がなくなり、肺胞が膨れます。その結果、肺胞と毛細血管の接触面積が少なくなり、ガス交換が障害されてCOPDになります。炎症の原因は有毒な粒子やガスの吸入で、その85%は喫煙だといわれています。

症状と所見

 初期の頃は喫煙により咳が出たりする程度で、症状がないことがほとんどです。進行すると、労作時の呼吸困難、咳嗽、喀痰の症状が現れます。さらに重症になると軽度の労作で呼吸困難を起こしたり、肺過膨張、チアノーゼ、喘鳴などもみられます。

 また、重症例では、鎖骨上窩の陥凹、胸鎖乳突筋の発達や、呼吸状態が悪化するにしたがって心臓に負担がかかるため、頸静脈の怒張(肺性心)がみられます。

 ほかにも、ビア樽状の胸郭と称される胸郭前後径の増大などがみられることがあります。さらに重症になってくると、胸郭の動きがなくなってきます。

診断

 COPDは軽症のうちは自覚症状に乏しいため、診断、治療を受けないまま重症に至ってしまうケースが少なくありません。そのため、COPDと知らずに、ほかの疾患で入院、酸素投与などでCO2ナルコーシスとなり、そこで初めてCOPDだと診断されるケースもあります。

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 喫煙者もしくは喫煙歴があり、息切れ、咳嗽、喀痰といった症状がある中高年の場合、COPDを疑います。診断には肺機能検査が必須です。1秒率70%未満であった場合、気管支拡張薬(β2刺激薬)を吸入させ、もう一度肺機能検査を行います。再び1秒率70%未満であった場合、COPDと診断されます。

 鑑別診断では、胸部X線検査、CT検査などの画像検査や呼吸機能精密検査で、気管支喘息や肺腫瘍、びまん性汎細気管支炎など、ほかの疾患を除外していきます。特に難しいのは気管支喘息との鑑別です。

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 X線所見は気管支喘息はしばしば正常であるのに対し、COPDでは、過膨脹所見がみられます。過膨脹所見では、正常人に比べ横隔膜が平らになり、横から見ると胸郭が釣り鐘状の形になります。

治療

 COPDは気道と肺胞の不可逆的な破壊が生じているため、治癒しない疾患です。禁煙により進行を遅らせることと薬物療法、酸素療法による症状緩和を行います。


 薬物療法では、気管支拡張薬、去痰薬、吸入ステロイド薬を使用します。気管支拡張薬は吸入や貼付薬が用いられ、近年では、長時間作用型抗コリン薬の吸入に効果のあることが確認されています。

 COPDは慢性疾患であるため、喘息同様、QOL向上のための日常生活での管理や継続した治療が重要です。呼吸リハビリテーションで、なるべく呼吸が楽にできるような方法を身につけたり、呼吸障害による食欲不振から栄養不足となるため、栄養管理を行っていきます。また、感染症にかかると重症化しやすいので、インフルエンザワクチンや、肺炎球菌ワクチンを接種するなど、感染症予防も必要です。

ガイドラインに沿ったケアをしよう!

呼吸リハビリテーションとは

 COPDのような慢性の呼吸器疾患の管理は、ほとんどが医療者のいない自宅で、患者さん自身が行わなくてはいけません。この自己管理ができるかどうかで、疾患の進行やQOLの維持は、大きく違ってきます。

 そのため看護師による、患者さんへの日常生活指導はとても重要です。呼吸リハビリテーションは、患者さんが自己管理を行う上での1つの手法です。図に挙げた項目一つひとつの必要性を、まずは看護師がしっかり理解しましょう。

 その上で、患者さんが納得できるまで説明し、理解した上で実践できるように指導しましょう。患者さんの意欲を引き出せるようなアプローチができるかが、指導のポイントです。

呼吸リハビリテーションの患者教育の項目
図 呼吸リハビリテーションの患者教育の項目

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会、日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会、呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会、日本理学療法士協会呼吸リハビリテーションガイドライン作成委員会 編集:呼吸リハビリテーションマニュアル――患者教育の考え方と実践――、p.2-4、照林社、2007.を参考に作成

サポートケア

疾病の理解と自己管理

 疾病の自己管理のためには、自分の体について、特にCOPDという病気によって、自分の体にどんなことが起こっているかを知ることが大切です。

 COPDは多くの場合、喫煙(または受動喫煙)が原因です。しかも、症状が現れた時点では、すでに病状がある程度進行した状態になっています。例えば、気管支が閉塞して呼気のスピードが遅くなるため、痰が切れなくなっていることや、肺胞の組織が壊れてガス交換が効率よくできないために、労作時の息切れが起こることなどを説明しましょう。

 すでに悪化してしまった気管支や肺胞は、元に戻らないので、治療を受ければ治る病気ではありません。ただし、禁煙や正しい服薬、生活の工夫などによって、息切れなどの症状が改善するだけでなく、病状の悪化を遅くすることができることを、患者さんに納得してもらいましょう。

 治らない病気であるために、中には自分の将来に絶望感を感じたり、家族にケアしてもらうことを極端に負担に感じる患者さんもいます。その場合、医療者が第三者の立場で、患者さんの話を聞くだけでも気持ちが楽になることもあります。また、同じ疾患について語り合える患者会などを紹介するのもよいでしょう。

 そして疾患が進行すると、自分の終末期のことを心配する患者さんも増えてきます。看護師が相談を受けた場合は主治医に伝え、主治医から患者さんに説明してもらったり、患者さんが自分の意思を表明できるように、看護師が手助けをしましょう。

 患者さん本人だけではなく、ご家族も含めた意志の共有が必要なことも、あらかじめ患者さんに伝えておきましょう。

薬物療法のサポート

 気管支拡張薬を中心とした薬物療法により症状を軽減させることは、急性増悪の予防につながります。患者さん自身も薬を服用することで楽になることから、薬物療法には積極的な人が多いようです。

 ただし高齢者の場合は、他の疾患の薬も服用していることがあるので、飲み忘れや服薬ミスもあります。その予防策を、患者さんと一緒に考えていくとよいでしょう。

 また、薬剤は24時間作用が持続する長時間作用性抗コリン薬チオトロピウム(スピリーバ(R))または長時間作用性β2刺激薬インダカテロール(オンブレス(R))が第一選択薬になり、サルメテロール(セレベント(R))もよく使われます。効果が不十分、あるいは急性増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬が併用されます。吸入療法が多くなるので、吸入手技のチェックは特に重要です。正しい手技で効果的に吸入できるように、繰り返し指導します。

 一方で、なんでも「薬はできるだけ早くやめた方がよい」と思っている患者さんや、2、3日吸入しても効果が実感できないと、すぐにやめてしまう人もいます。COPDの患者さんにとって気管支拡張薬は基本的な処方で、ずっと持続して使用するものです。処方されている薬の目的や効果が出るまでの時間は、患者さんが納得してくれるまで説明しなければなりません。看護師だけでなく、医師や薬剤師など、さまざまな職種から繰り返し説明することで理解を得られやすくなるでしょう。

継続的・効果的な治療のための指導

禁煙指導

 COPDは、喫煙を続ける限り悪くなります。そのため、一日でも早く、禁煙できるような働きかけが求められます。現在、禁煙外来では、ニコチンパッチや内服薬のバレニクリン(チャンピックス®)を使って禁煙する方法が用いられています。この治療が受けられる禁煙外来のある病院などの情報を提供するとよいでしょう。

 受動喫煙も大きな問題で、家族や職場などで他の人に、「禁煙してほしい」と言えない環境にある患者さんもいます。1人1人の患者さんの背景をよく知った上で、生活状況や家族の様子などから、禁煙の動機付けとなるような事柄を探すなど、患者さんが少しでも禁煙の必要性を感じられるような指導を心がけましょう。

栄養・食事指導

 疾患の進行に伴い体重が減少するのは、COPDの特徴の一つです。その原因はいくつかありますが、その一つはCOPDが中等症以上に進行すると、横隔膜の働きだけでは十分な呼吸ができないので、呼吸補助筋も使って呼吸することにあります。

 呼吸筋が食事で取る以上にエネルギーを消費してしまうので、それまで通りの食事では、カロリー不足となり、体重が減少してくるのです。したがって、呼吸筋がエネルギーを消費する分、それまで以上にしっかり食事でカロリーを取るように指導してください(図)。ただし、COPDの患者さんは、もともと血中のCO2の量が多い状態なので、代謝する際にCO2を放出する炭水化物は避けて、できるだけタンパク質や脂質を中心にした食事を勧めてください。

食事の工夫のポイント
(図)食事の工夫のポイント

 また、1回の食事量を増やすと、腹満がひどくなって息苦しさが増すことがあります。そうならないように分食にしたり、食事内容を工夫するなど、必要なエネルギーが摂取できるようにして、体重維持に努めましょう。

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会、日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会、日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会、呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会、日本理学療法士協会呼吸リハビリテーションガイドライン作成委員会 編集:呼吸リハビリテーションマニュアル――患者教育の考え方と実践――、p.109、照林社、2007.より引用

運動療法の実践方法

 運動療法は、呼吸困難、運動耐用能、健康関連QOL、ADLを改善させます。

 運動は日常的に行うことが大切で、大きく2種類に分けて指導します。1つは筋力をつけることを目的とした「筋力トレーニング」で、もう1つは持久力をつけることを目的とした「散歩」です。

 筋力トレーニングは、上半身と下半身のトレーニングを行います(下図参照)。上半身の運動としては、500g位の重りを持ってゆっくり腕の屈伸をする、肩・首をゆっくり回す、体幹をゆっくり曲げたりねじったりする、などの体操がいいでしょう。

 また、下半身の運動としては、スクワット10秒、つま先立ち10秒、10秒かけて椅子から立ち上がったり座ったりを繰り返す、などの体操がいいでしょう。特に下半身のトレーニングは最もエビデンスが高く、運動を行うことで日常生活が楽になります。

 ただし、立った姿勢での運動は、足もとがふらつき、転倒する危険性があるので、特に高齢者では座った姿勢で行う運動を指導してください。

 一方、散歩は息切れを意識して、少し息が切れるくらいで30分間歩き続けるのが理想の散歩法です。途中で苦しくて立ち止まったり座ったりするのは、スピードが速すぎるからです。

 途中で休んでしまうと、持久力のトレーニングになりません。休まなくていいように、スピードを落として歩き続けられるようにしましょう。

COPD体操

OPD体操手順、膝を交互に上げて10~20秒数える

OPD体操手順②、左右の膝を伸ばした状態を10~20秒保つ

OPD体操手順③、左右の股関節をぐーっと開く

OPD体操手順④、左右の足を前後にステップする

OPD体操手順⑤、つま先立ちになる

OPD体操手順⑥、ペットボトルを持った手を上、横、前などにゆっくりと動かす

a、b、c、d)高橋仁美 著:呼吸リハビリテーションの実際、呼吸ケアセミナー編集、田中一正 監修:メディカルスタッフのためのトータル呼吸ケア COPD 、p.82、メジカルビュー社、2005.より引用、一部改変

COPD患者さんの日常生活をサポートしよう!

生活の工夫と息切れの管理

 上肢を使った作業や、屈んでする作業は、息切れにつながりやすくなります。それを避けるために、例えば、

 1. よく使う道具や食器は低い棚にしまう
 2. 布団を敷いたりしまったりしないで済むようにベッドを使う
 3. 靴ひものない靴を選ぶ
 4. 風呂桶の湯を汲むよりもシャワーを利用する
 5. 着替えの際には椅子を使う(下図)

 といった日常生活上の工夫を、なるべく具体的に伝えましょう。

靴下の着脱動作と更衣動作(上着)
(図)靴下の着脱動作と更衣動作(上着)

(1)椅子に腰掛けて行う。片足を対側の太腿の上に上げて行う
(2)上肢を肩より上へ上げないよう注意する。前開きのシャツを着用する

 また、食事中の息切れを防ぐには、噛みやすいものやおかゆなど、食形態を工夫するといいでしょう。食事が硬いものばかりだと、噛むことに時間がかかって息切れが増すことになります。

 さらに、上肢を使うと息切れがひどくなるので、箸で細かくほぐさなくてもいいように準備します。調子が悪い時には無理に食べようとせず、ドリンク剤で栄養補給をするのも一つの方法です。

福祉サービスの活用

 定期的な運動が必要なことはわかっていても、患者さんが自分で体操などを続けることは結構大変です。そこで、介護保険や自治体ごとの健康増進の取り組みなど、自宅に引きこもらずに体を動かせるような福祉サービスを紹介するなど、患者さんが安心して在宅療養生活を送ることができるような支援が必要です。

 また、医療費や介護費、医療機器の維持費など、経済的な負担も増加してきます。そのため、患者さんが利用できる社会資源などをあらかじめ知っておくなど、看護師も情報収集に努め、その情報を患者さんに提供できるようにしましょう。

 また、院内のMSWやケアマネジャーにつなげることも看護師の役割です。

急性増悪の予防・早期対応

 急性増悪とは、もともとI型の慢性呼吸不全(低酸素血症)や、II型の慢性呼吸不全(低酸素血症と高二酸化炭素血症の両方)の状態にある人が、インフルエンザや風邪などの別の疾患にかかったり、骨折したとか手術を受けることになったなど、全身状態の悪化を招いたりしたときに、慢性呼吸不全の状態が崩れて急性呼吸不全を来すことです。

 急性増悪を起こすと予後が悪くなり、死亡率が高まります。たとえ回復したとしても、肺機能は急性増悪前の状態に戻ることは難しく、急性増悪を起こすたびに機能は低下していきます。

 COPDの患者さんにとっては、日常生活で急性増悪をいかに予防するか、そして早期発見がとても大切です。そこで、急性増悪の予防としては、

 1. 定期的な受診をすること
 2. 発熱や呼吸困難、喀痰や咳の増加など、症状が変化したらすぐに看護師やかかりつけ医に相談すること
 3. 定期的な運動をすること
 4. 処方された薬を正しく使うこと

 などが特に重要です。

 また、急性増悪を引き起こす感染症を予防するために、ワクチン接種が有効です。インフルエンザや肺炎球菌など、ワクチンで予防できる疾患はできるだけ予防するようにしましょう。自治体によっては接種費用の補助が受けられることもあるので、そうした情報を伝えてあげられるようにしましょう。

在宅酸素療法導入のサポート

 COPDでは、症状の進行にしたがって低酸素血症を来すようになり、そうなるとそれまで以上に日常生活が困難となります。そこで、酸素を投与すれば低酸素血症を予防し、呼吸筋の仕事量を減少させ、さらに心筋の仕事量が減少することで、日常生活がスムーズに送られるようになる可能性が高まります。

 自宅で酸素を吸いながら生活するのが、「在宅酸素療法(HOT)」です。これは治療目的ではなく、病態の安定と生存期間の延長、QOLの維持が目的となります。

 在宅酸素療法の導入に際しては、まず患者さんが自分の疾患の推移や現在の状態、酸素吸入の必要性を十分に理解する必要があります。さらに、酸素ボンベを携帯しての行動や、鼻カニューレを装着した容姿などから、受け入れを拒否したり、病状の悪化に落ち込んだりする患者さんも少なくありません。

 こうした患者さんの心理面に十分に配慮しながら、患者さんが酸素療法の導入を前向きに考えられるようなアプローチが大切です。

【酸素療法のまとめ記事】
* 酸素療法とは?種類・目的・適応・看護

※「呼吸器3大疾患のケア」は今回で連載終了です。

(『ナース専科マガジン』2012年12月増刊号「一冊まるごと呼吸ケア」より転載)

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