【連載】フィジカルアセスメント症状別編

喀血・吐血とは?原因と鑑別、看護のポイント

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

喀血も吐血も「口から血が出る」症状を呈します。 しかし、喀血は呼吸器から、吐血は消化器からと、出血源も原因も異なります。 患者さんの症状がどちらなのかを見極められるようになるため、まずは喀血と吐血の基本知識を身につけましょう。


【目次】


喀血・吐血の基礎知識

「口から血が出る」のは喀血・吐血だけではない

喀血・吐血の場合、患者さんは「口から血が出た」と訴えます。しかし、目に見える症状は「口から血が出る」と同じようでも、吐血と喀血・血痰、飲み込んだ鼻血、さらに歯槽膿漏などの口腔からの出血など、出血源も原因もさまざま。

ここでは喀血と吐血について取り上げますが、患者さんから「口から血が出た」と言われたら、喀血、吐血だけではなく鼻血、口腔からの出血も想定します。

ここで「口から血が出る」2大症状の基本知識をおさらいしておきましょう。

喀血とは、気管や気管支、肺などの呼吸器系の器官からの出血で、咳などによって血液を吐き出すことです。吐血とは食道や胃、十二指腸などの消化器系の器官からの出血で、嘔吐反射によって血液を吐き出すことを指します。

ここで注意したいのは、高齢の患者さんが「喀血した」と訴えた場合です。高齢者の世代では、若いころに結核が蔓延していたため、「口から血が出る」イコール喀血と刷り込まれていることが多いからです。

患者さんの訴えを鵜呑みにしないで、必ず看護師自身の五感と知識と経験を生かし、喀血か吐血かの鑑別および出血源や原因を精査しましょう。

喀血・吐血とは?原因は?

口から血が出る症状の場合、喀血か吐血かの鑑別の前に、まずはそれが本当に喀血・吐血なのかどうかを精査する必要があります。患者さんが「口から血が出た」という場合には、下記の項目を念頭においてアセスメントを進めます。

鼻血は、鼻の粘膜やその周辺からの出血ですが、喉に流れる場合があります。鼻血が喉に流れ出ると、口から血を吐き出したりします。また、喉に流れた鼻血を飲み込むとそれが刺激になって食物と一緒に吐いてしまうこともあります。

歯槽膿漏など歯周病の場合には、歯磨きの際に歯ブラシが当たった歯茎から血が出ます。また、口腔内に傷があると、そこから出血します。

喀血とは

喀血は呼吸器系の血管が損傷して出血し、それが口から溢れ出るというものです(表1)。

一般的には咳などと一緒に出てくる喀血は鮮紅色で、泡沫を伴っています。また、痰に血液が混じる程度であれば、喀血ではなく血痰と考えられます。

原因として考えられるのは、結核、肺がん、気管支拡張症および左心不全、肺水腫などの疾患があります。

また、肺挫傷、気管・気管支損傷(外傷・異物・炎症)などによって出血が生じることもあります。

◆喀血を起こす主な疾患

部位 メカニズム 主な原因疾患
呼吸器系 気管支や肺胞などがなんらかの原因で損傷し、出血する 肺がん、気管支拡張症、結核、肺腫瘍、気管支炎など
循環器系 心不全により肺静脈への血流の貯留や、血栓により気管支動脈や肺動脈が詰まることによって、肺野に血液が漏れ出て起こる。また気道内で大動脈瘤が破裂した場合も起こる 左心不全、肺水腫、肺血栓塞栓症、肺梗塞、大動脈瘤など
外傷 外傷により、気管支や肺胞を損傷して起こる 脳挫傷、胸部外傷、気道内異物など

吐血とは

吐血は、消化管からの出血をいいます(表2)。

吐血は真っ赤な血が出る場合と、胃液と混合されて黒っぽいコーヒー残渣様と表現される血が出る場合とがあります。真っ赤な鮮紅色が出るのは、出血してから吐血するまでの時間が短いときです。

コーヒー残渣様は、胃液によって血液中のヘモグロビンが変色した結果であり、出血してから数十分から数時間経過するにしたがって、暗赤色、茶色~褐色、黒色と口から出る血の色にも変化があります。また、吐血の場合には胃の内容物を伴うこともあります。

吐血を引き起こすことが多い疾患の代表例は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどです。

また、食道静脈瘤、食道炎、食道潰瘍、食道がん、マロリー・ワイス症候群なども忘れてはいけません。

なお、消化管は、喉・咽頭→食道→胃→十二指腸→空腸→小腸→大腸という具合に続いています。吐血で口から出る血液は、十二指腸までの上部消化管のものです。空腸から先で生じた出血は、便と一緒に出るのが普通で、これを下血といいます。

◆吐血を起こす主な疾患

部位 メカニズム 主な原因疾患
食道 がん、潰瘍からの出血 食道がん、食道潰瘍
食道 腹腔内圧が上昇することで、胃の噴門部に裂創ができ出血する マロリー・ワイス症候群
食道 肝硬変により門脈圧が亢進し、食道静脈瘤ができる。これが破裂することで起こる 食道静脈瘤
がんからの出血 胃がん
胃酸と胃壁を守る粘液のバランスが崩れ、胃壁を傷つけてしまうことで起こる 胃潰瘍
十二指腸 潰瘍によって血管が傷つき出血する 十二指腸潰瘍

大量出血の場合は要注意

喀血も吐血も、大量に出血した場合にはショック状態に陥る恐れがあるので、緊急対応が必要になることがあります。従って、症状や訴えに接したら、第一に緊急性の判断を行います。

緊急性がある場合には、問診などの原因精査よりも緊急対応が優先されます。

緊急性が高くなければ、口腔内出血や鼻血と喀血・吐血を鑑別し、さらに喀血か吐血かの鑑別を行います。

このほかに、口腔内の状態を観察し、出血の有無も確認します。喉の奥を見て、血が垂れているようなら鼻腔から出血していると考えられます。

喀血か吐血か。この鑑別や原因精査は、決してたやすくはありません。吐いた血の色や泡の有無だけで判断せずに、前項でリストアップしたように、考えられる限りの原因リストを頭の中に想定し、患者さんの既往歴や問診、現在の状態などさまざまな手がかりを総合的に精査して、「あり得ない可能性」を消していくほうが賢明です。

喀血・吐血のアセスメント

問診で喀血と吐血の手がかりを得よう

出血の様子を聞く

■「どんな状態で出血しましたか?」を、こんな質問で絞り込もう

「咳と一緒に血が出ましたか?」
「痰に血が混じって出ましたか?」
「一緒に食べたものが出てきたりしましたか?」

■【アセスメントのヒント】

咳と一緒に出血した場合には、呼吸器からの出血である可能性が高いといえます。

鼻血が喉に回って反射的に咳が出ることもあるので、鼻や口腔内の様子も確認しましょう。

痰に血が混じっている場合には、呼吸器系か口腔内からの出血です。肺がんの可能性もあります。

食べたものが一緒に出てきた場合は、吐血の可能性が高まります。

出血した血の性状を聞く

■「出血したときの血の色は覚えていますか?」を、こんな質問で絞り込もう

「痰に血が混じって出ましたか? 黒っぽい色でしたか?」
「鮮やかな赤でしたか?」

■【アセスメントのヒント】

鮮血の場合には、喀血でも吐血でも出血が継続している可能性があり、出血量が多くなるとショックを起こす危険があるので緊急対応につなげましょう。

黒っぽくて、泡が混じらない血であれば、胃や十二指腸から出血している可能性があります。

赤く、泡が混じっていなければ、食道からの出血の可能性が大きいでしょう。赤くて泡が混じっているならば、呼吸器系からの出血と考えられます。

発症の始まりと経過を聞く

■「今回が初めてですか?」を、こんな質問で絞り込もう

「突然出血しましたか?」
「今回が始めてですか?」
「何回か続いていますか?」
「いつごろから血が出るようになりましたか?」
「お酒を飲み過ぎて嘔吐したときに口から血が出ましたか?」

■【アセスメントのヒント】

症状がいつ起こったのか、一過性なのか、継続しているのかを確認します。

突然、大量の血を吐いた場合には、食道静脈瘤破裂の恐れがあります。その場合には出血の原因を精査するよりも先に、止血、輸血

補液などの緊急対応を行います。静脈瘤破裂の出血は自然には止まりません。

飲酒後に嘔吐して出血が見られた場合には、マロリー・ワイス症候群が考えられます。

継続している場合には、徐々に症状が強まって大量出血や急変につながる恐れがあります。

出血が続いている場合には、貧血になっている可能性もあります。

随伴症状を聞く

■「ほかに気になる症状はありませんか?」を、こんな質問で絞り込もう

「便に血が混じっていませんか?」
「おなかは痛くないですか?」
「悪心・嘔吐はありましたか?」
「息苦しくないですか?」
「めまいや立ちくらみはないですか?」
「咳が出ますか?」
「胸部をぶつけたりしていませんか?」

■【アセスメントのヒント】

コールタール状ドロッとした便が出た場合には、上部消化管から出血している可能性があります。

腹痛や、悪心、嘔吐があれば、消化器系からの出血を考えます。

息苦しいという訴えがあれば、左心不全や肺水腫などの可能性があります。既往歴も確認しましょう。

咳が出る場合には呼吸器系からの出血と考えられますが、鼻血との鑑別も忘れずに。

胸部を強打している場合、胸部損傷の可能性もあります。

緊急度をアセスメントする

問診で得た手がかりを元に確認していきます。

全身状態を確認する

バイタルサインなど全身状態を確認します。頻脈や血圧の低下がみられれば、大量出血によるショックの可能性があります。チアノーゼの有無も確認します。

口腔内を確認する

口腔内に出血はないかをチェックします。

呼吸音を聴診する

「ゴホゴホ」という音が聴取された場合には血液の誤嚥や、肺内で出血が起こり、血液が貯留している可能性があります。

出血の色を確認する

可能であれば、鑑別の手がかりとなるので出血の色を確認します。

アセスメントを看護につなごう

喀血・吐血が見られた患者さんへの看護の基本は、安静、バイタルサインのチェックと全身状態の観察、経過観察です。

大量に出血した場合や出血が継続している場合には、ショック状態となる恐れがあるので、急変に対応できるように準備をした上で、経過を見守ります。体動は出血源を刺激するので、安静保持は必須です。

また、喀血および吐血物は、なるべく患者さんの目に触れないように、速やかに処理し、安心安静を保持しましょう。

急変する可能性もあるので要注意

急変時では、気道の確保が基本です。例えば、意識レベルが低下している場合には、吐き出した血液を誤嚥しやすいので、側臥位にします。喀血の場合、血痰など前駆症状が見られたら、患者さんが血液を喀出しやすいように上半身を高くして、肺を下にする体位をとります。必要に応じて吸引なども行います。

さらに、ショック状態であれば、下肢を上げて静脈還流量を確保します。SpO2も確認し、必要であれば、酸素投与を行い、重篤な場合には、挿管する可能性もあるので、すぐに動けるよう準備をしておきましょう。

緊急性が低くても、継続して観察を行う

すぐに治まり、落ち着いた状態にある場合でも、継続して観察を行うようにします。

血を吐いた後は、冷水などでうがいをして、口腔内を清潔に。これは感染予防にもつながります。また、胃管や吸引カテーテル挿入の刺激などによって気道粘膜損傷がある場合には、気道感染にも注意しましょう。

また、口から血が出るということは、患者さんやその家族にとって、大きな不安となります。動揺しないように精神的なケアにも配慮する必要があります。

まとめ

口から血が出るという症状は、出血量の多寡によらず、患者さんにとって大きな不安を生じさせるものです。

そうした不安を軽減するように努めながら、緊急性の判断を行い、原因の精査を行い、的確な検査や治療につなげましょう。

(ナース専科「マガジン」2010年10月号より転載)

ページトップへ