【連載】がん患者さんへの言葉かけトレーニング

第3回 【がん】告知から治療方針の選択時に抱えるストレス

監修 川名典子

杏林大学医学部付属病院看護部 精神看護専門看護師

告知から治療方針が決定するまでは、受け入れがたい現実に対して、否認、怒り、楽観などの反応が現れる時期です。がん患者さんの抱える問題は、個々の社会背景などによってさまざまですが、いつでも支援できることを伝えておきたいものです。


告知~治療方針の選択時に抱えるストレス

がんという診断は、患者さんに大きな驚きを与えます。かつては、「がん=死」というイメージがありましたが、最近では治療法が進み、50%は生存・ 治癒するといわれているので、昔ほどの衝撃ではないかもしれません。

ただ、それはあくまでも早期がんの場合です。それ以外のケースでは、予後は厳しい内容 になります。告知の際に今後の経過がある程度予測され、患者さんにとっては、いきなり人生の終焉に向き合うことになります。

こうした事態は、多くの患者さんにとっては受け入れがたいことです。衝撃的なニュースを聞いたときには心の防衛機制が 働いて、「診断ミスではないか」などと否認することもあります。

そのほか、「健康には気を付けていたのに、なぜだ」と理不尽に怒ったり、「もうだめだ」と 絶望に打ちひしがれたり、「きっといい治療法が開発されるはずだ」と根拠なく楽観したりするのも同様の機制によるものです。

患者さんは無意識にこのような心の防衛機制を使い、つらい現実に対して心のバランスを保とうとすることが往々にしてあります。それと同時に理解しておきたいのは、治療効果に希望をもち続ける時期でもあるということです。

治療開始までは、日常生活に関しても大きな変化はありません。がん性疼痛についても、病態によって違いはありますが、まだ日常生活に支障をきたすような状態にはありません。

確認のポイント

1.告知をどう感じたか

病名告知や治療法の決断はとてもデリケートで深刻な内容の話なので、ほかの患者さんがいる場所では話をしないといったプライバシーへの配慮が重要になります。

ただ、プライバシーの確保を厳重にしすぎると、患者さんに言葉をかけるタイミングを逃してしまうので、まずは、人から少し離れたところで、直接的な表現を避けるようにして、告知について患者さんがどう感じているかを聞いてみるとよいでしょう。

「先生から重大な話がありましたが、お聞きになりたいことはしっかり聞けましたか?」「今、何か気がかりなことなどはありますか?」などと、率直にたずねてみます。

患者さんが何も考えられない状況であれば、「大変なことですし、これから考えないといけないことがいろいろあるかと思いますが、何か困ったことがあったら、いつでも連絡ください」などと、心配していることを伝えます。

患者さんに話をさせるだけでなく、「看護師たちが気にかけている」という思いを伝えることも大切です。看護師の思いを聞いているからこそ、患者さんが「実は」と話しやすくなることもあるのです。

2.治療内容をどう考えているか

また、治療法の選択に関しては、患者さんが治療内容を十分に理解しているかどうかを確認する必要があります。間違った情報や先入観をもっていたり、周囲にがん治療を経験した人がいたことなどが理由で、治療に消極的な人もいます。

あるいは、さまざまな理由から「無治療」という選択をする患者さんがいるかもしれません。こうなると、治療は「人生の選択」でもあります。

なぜ、その治療方法を選択するのか、「治療方針について、どう思っていらっしゃいますか?」と、考えを聞くことも大切ですが、時に人生について患者さんの気持ちを聞くことにもなります。こういう岐路で、話を聞いてくれる人がいることは、患者さんの意思決定の支援にもつながります。

※次回は、治療中~経過観察期のストレスについて解説します。

(『ナース専科マガジン』2010年9月号より転載)

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