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【連載】基礎からわかる精神科看護

第1回 精神看護とは?精神看護の基本

監修 医療法人財団青溪会 駒木野病院

精神科専門病院

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精神障害者の捉え方

今回から全11回にわたって、精神看護の基本から、各症例ごとの看護の方法、スキルについてご紹介させて頂きます。 まず、精神障害者に代表される疾患は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律によると「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者。」と定義されているが、医学的概念だけでは捉えることができない側面があり、文化的、社会的要因や長期に及ぶ制限された入院生活によって生じた生活障害の側面も持っています。 精神障害者は、「障害者や高齢者など社会的に不利を受けやすい人々が、社会の中で他の人々と同じように生活し、活動することが社会の本来あるべき姿である」というノーマライゼーションの考え方を基に、看護師は人権擁護とQOLを高めるような看護を実践し精神障害者が自分らしい生きかたを出来るよう支援することが重要です。 現在は精神障害者の社会復帰、自立と社会参加の促進の為、入院から退院後の生活まで広い視野から援助することが重要視されています。


この連載の記事
第2回 幻覚患者の看護とは
第3回 妄想患者の看護とは
第4回 せん妄患者の看護とは
第5回 抑うつ感情の患者の看護とは
第6回 興奮状態の患者の看護とは
第7回 拒絶的な患者の看護とは
第8回 引きこもり(無為自閉)状態の患者の看護とは
第9回 自殺・自傷行為がある患者の看護とは
第10回 不眠症の患者の看護の仕方
最終回 認知症患者の看護の仕方


精神機能の障害

精神機能の障害は、身体的な病気のように科学的な根拠に基づいた医学的な観点から看護アプローチを行うことよりも、その人が体験している様々な状態に主眼を置くことが必要となります。
精神疾患に代表される統合失調症の場合、発症初期の急性期の症状である幻覚・妄想、精神運動性興奮などの陽性症状が軽減した後に意欲の低下、感情の平板化、思考判断力や疎通性の低下など陰性症状とよばれる精神機能の障害を残すことが多く、これらの症状によって人間関係が崩れ、しだいに生活障害へと繋がっていくことがあります。
代表的な陽性症状
幻覚・妄想 精神運動性興奮、強いイライラ 陰性症状:感情鈍磨、感情の平板化 意欲・自発性の低下、思考貧困、ひきこもり

病気の経過(代表的な経過)

1)入院初期の急性状態の時期

病気の最も悪化した時期です。 幻覚や妾想のために、それに支配された行動をとり、興奮、不安、自閉、無言、無為(何もしない)、昏迷(ボヤーッとしている)などの症状で、指導や説得の通じない状態です。 この時期に早目に的確な保護と薬物治療をする必要があります。 治療が遅れれば様々な非社会的行動を起こす可能性が高くなり、後々まで回復の悪い事態をまねく恐れがあります。

2)急性状態を脱した時期

入院初期のような症状が消えて比較的穏やかとなりますが、急性症状により心身ともに疲労感を自覚し周囲の事に関心を持てなくなる時期です。 話は通じますが、落ち着かない、イライラしている、不眠、寝てばかりいる、など精神不安定な状態の時期です。 しかし、症状は十分安定している訳ではないので、よくなったり悪くなったりしがちですから慎重な対応を要します。 この時、些細な刺激で症状が再燃し急性状態に逆もどりすることもまれではありません。

3)症状が安定する時期

精神的に安定はしてきますが、自発性や意欲がない、指示通りにできない、自分勝手な行動をとる、他人の迷惑を考えない行動が残ることがあります。 一人で社会に出て行くには不充分な段階です。 この時期には作業や集団(家庭や病陳)での生活訓練を行い徐々に生活リズムを整えていきます。 発症の時期や家族関係、社会生活経験など様々な要因によって生活障害は異なりますが、個人の持っている力に合わせたプログラムを組むことが重要です。

4)社会復帰に向かう時期

この時期は、徐々に活動リズムが回復し活力が取り戻されます。 日常生活行動も自己で出来るようになり、外出や外泊など退院に向けて病棟外へと活動の場を広げていくことが必要です。 患者さんが持っている力や必要なサポートは何か見極めることが重要です。 退院に向かって焦らず、患者のペースに合わせ根気よく関わる事が重要です。

5)慢性に経過する時期

特に統合失調症患者では、再発を繰り返すうちに意欲の低下、感情の鈍化、疎通性の低下など陰性症状を伴い慢性化してしまう事もまれではありません。 このような状態が長期に及ぶことにより、衣食住などの生活技術が著しく低下し社会復帰が困難な状態に陥いります。 この時期の関わりの重点は、個別性を重視したセルフケアレベルの向上を目指したアプローチが必要です。 仲間づくり、服薬の自己管理、金銭の自己管理、社会資源の活用(郵便局、銀行、交通機関の利用)など個々の能力を見極めたケアプランを立て援助することが必要です。

様々な症状の捉え方と看護のポイント

精神疾患は精神保健及び精神障害者福祉に関する法に規定されているように様々な疾患があります。 しかし、同じ疾患でも画一的ではなく個々に特有の症状を呈します。 代表的な症状としては、幻覚・妄想・せん妄状態、抑うつ状態、興奮状態、拒絶、引きこもり、自殺・自傷行為、不眠状態、認知状態などが上げられます。 次回以降は各症例別の精神看護の知識とノウハウを順にお伝えしていきますので、ご期待下さい。


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第2回 幻覚患者の看護とは
第3回 妄想患者の看護とは
第4回 せん妄患者の看護とは
第5回 抑うつ感情の患者の看護とは
第6回 興奮状態の患者の看護とは
第7回 拒絶的な患者の看護とは
第8回 引きこもり(無為自閉)状態の患者の看護とは
第9回 自殺・自傷行為がある患者の看護とは
第10回 不眠症の患者の看護の仕方
最終回 認知症患者の看護の仕方