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【連載】フィジカルアセスメント症状別編

【めまいの看護】めまいの原因・種類とアセスメントのポイント

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

めまいを感じた場合、患者さんがよく口にするのが「くらくらする」や「ぐらぐらする」などの訴え。このような抽象的な症状の表現を精査して、どの部分にどのような障害が起こっているのかを推定するのがポイントです。


【目次】


まずは、これを考えよう!

めまいの原因は多岐にわたっている

私たちが身体のバランスを失わずに動けるのは、目から得る視覚情報、平衡感覚をつかさどる内耳や三半規管からの信号、そして筋肉や関節の深部知覚に手足の位置や関節の向きを伝える情報を、脳で統合し、自分の動きや姿勢を認識しているからです。
めまいとは、このような器官やルートのどこかに問題が起こり、身体の平衡感覚がおかしくなっている状態を示しています。したがって、症状を示すもので疾患名ではありません。
また、このほかにも貧血や低血糖、血圧低下、心疾患などで、立っていられないような状態に陥ることもあります。
さらに原因が多岐にわたっているため、目が回る、ふわふわする、目の前が暗くなる、など患者さんからの訴えもさまざまです(表1)。ですから、患者さんが訴えているめまいがいったいどういうものなのか、何に起因するのか、アセスメントすることが大切です。

めまいの種類

めまいが起こるメカニズム

めまいにはさまざまな種類の訴えや症状があるということを理解したら、次にめまいの原因を仕分けしてみましょう。
めまいの原因は、耳からくる「末梢性前庭性めまい」と脳の異常に起因する「中枢性めまい」、そしてこれら以外に原因がある場合の、3通りに大別できます(表2)。
「末梢性前庭性めまい」と「中枢性めまい」は、いずれも冒頭で述べた私たちがバランスを保ちながら動作できるように働くシステムの障害で起こります。大雑把に仕分けると脳の外と中の違い、ということになります。

末梢性前庭性めまい

耳からくるめまいで、内耳や三半規管の障害によって起こります。めまいのなかでも最も多く見られるものです。これは、自分の身体は動いていないのに、三半規管が「動いているぞ」という誤った信号を送ることで起こります。そして、この場合の特徴的な症状は、「回転性めまい」です。

中枢性めまい

脳の異常に起因する「中枢性めまい」は、脳血管障害が起こったり脳内の血流が低下したりして、平衡感覚に関する情報を伝える脳神経や情報を統合する脳の働きが障害され、情報を正確に処理できなくなるために生じます。「浮動性めまい」が特徴的症状であることを覚えておいてください。

その他の原因

貧血(血液の赤血球やヘモグロビンの減少)で酸素欠乏により起こるめまいや、高血圧や起立性低血圧、精神障害、薬剤の副作用、感染症などによる発熱などでもめまいは起こります。

めまいのメカニズム

緊急性の判断と原因を精査しよう!

システムの障害か、それともその他の原因か、これを見極めるには、診察や検査が必要です。フィジカルアセスメントで、患者さんがめまいを訴えた場合に重要なのは、緊急性の判断です。
特に脳血管障害に由来する「中枢性めまい」は生命危機に直結する恐れがあるので、早めに見極めて、迅速な対応につなげたいものです。
回転性か浮動性かが、いちばんのチェックポイントです。患者さんの症状が浮動性めまいであれば、麻痺、意識障害、頭痛、言語障害など、脳血管障害の諸症状が現れていないかを確認しましょう。また、主治医に連絡し、CTやMRIなどの検査の準備をするのも必須です。
中枢性めまいかどうかを精査したら、次は末梢性前庭性めまいかどうかを疑います。患者さんへの問診や観察、バイタルサインの測定結果から、症状の特徴と原因を対応させてアセスメントしましょう。

めまいのアセスメントと看護のポイント

問診で緊急度や原因を精査する

バイタルサインの測定を行い、患者さんの状態を観察しながら、問診で聴き取りましょう。

発症時間やきっかけを聞く

「いつからめまいが始まりましたか?」

■ こんな質問で絞り込もう

「徐々に始まりましたか? それとも急に始まりましたか?」
「例えば服薬後など、思い当たるきっかけはありますか?」

■ アセスメントのヒント

めまいが突然始まった場合には、メニエール病を含む三半規管の障害や突発性難聴などの「末梢性前庭性めまい」、小脳梗塞、一過性脳虚血発作などが原因の「中枢性めまい」が考えられます。

徐々に始まった場合には、「その他」の原因によるめまいと考えられます。末梢神経障害、感染症などによる発熱、あるいは下痢などによる脱水、低血糖、内耳炎が原因として想定できるでしょう。ただし、脳腫瘍は徐々にめまいが始まるということを覚えておきましょう。

臥床していて急に起き上がった場合にめまいが起こるようなら、起立性低血圧が考えられます。

睡眠薬や抗精神病薬、降圧薬などの薬物に起因している可能性や、薬物中毒、ガス中毒などの可能性もあります。

症状の内容(質)と程度を聞く

「めまいはどのように感じますか?」

■ こんな質問で絞り込もう

「まわりの景色がぐるぐる回って見えますか?」
「自分自身が回っている感じですか?」
「足元がふわふわして宙に浮いた感じですか?」
「フラフラして立っていられませんか?」
「目の前が真っ暗になったりしますか?」

■ アセスメントのヒント

まわりの景色や自分自身がぐるぐる回るような回転性めまいであれば、前庭器官のトラブルと考えられるので、突発性難聴、メニエール病、内耳炎、良性発作性頭位めまいなどの可能性があります。

ただし、小脳梗塞でも回転性めまいが起こるので、緊急性の判断に注意しましょう。
足元がふらついたり宙に浮くような浮動性めまいであれば、脳や神経の障害による中枢性めまいの疑いがあります。

目の前が真っ暗になるめまいは、失神性めまいと考えられます。

随伴症状を聞く

「他に具合が悪いところはありませんか?」

■ こんな質問で絞り込もう

「吐き気や嘔吐はありますか?」
「耳鳴りや難聴などの「聞こえにくい」症状はありませんか?」
「熱はありませんか?」

■ アセスメントのヒント

悪心や嘔吐は回転性めまいで起こりやすいですが、浮動性めまいでも症状の程度が強ければ悪心や嘔吐を伴うことがあります。

難聴や耳鳴りを伴う場合には、メニエール病や突発性難聴などの疑いがあります。特に難聴や耳鳴りを伴っためまいが繰り返し現れる場合は、メニエール病の可能性が高いでしょう。

運動失調や知覚障害がある場合には、小脳梗塞など脳に問題が起こっている可能性が高いので、緊急対応につなげましょう。

発熱がある場合は、感染症などによるめまいが考えられます。

問診で得た情報と合わせて緊急度を判断する

特に緊急対応が必要となる中枢性のめまいの場合、脳の機能が正常に働いているかもアセスメントしなければなりません。

バイタルサインのチェック

血圧、脈拍など基本的な患者さんの状態をチェックします。脳出血や脳腫瘍があり脳圧が亢進している場合は、呼吸状態に影響を与えるので呼吸パターンをよく確認します。また、血圧や脈拍は左右差も確認します。

意識レベルをみる

意識レベルの低下がみられる場合は、脳血管障害の可能性があります。

血糖値を測定する

低血糖でめまいが起こることもあるので、測定します。

皮膚知覚の確認

糖尿病などを抱えている患者さんの場合、末梢神経障害が生じていると深部覚のうちの振動覚が鈍くなるので、動こうとしたときにバランスを崩しやすくなります。音叉を患者さんのくるぶしなどに当てて、振動がわからなくなったら合図をしてもらい、振動が感じられなくなるまでの時間を測ってみましょう。これを体幹部でも行い、時間を比較します。

小脳機能の観察

指鼻試験で小脳機能の有無を評価できます。患者さんに、片方の指で自身の鼻の頭を触って離す動作を繰り返す様子を観察します。小脳に障害があると、指が鼻を外れたり、鼻までの最短距離をとれなくなります。
※(次ページでは、集めた情報をどう看護に活かせばよいのかを考えます)

アセスメントを看護につなごう

緊急性の判断を行い、生命危機につながる恐れのある場合には、緊急対応および原因疾患の治療が不可欠です。
緊急性がないと考えられる場合には、医師の検査オーダーや診断を待ち、適切な治療と看護急性の判断を行い、生命危につなげましょう。

急激に悪化している場合はモニタリングを怠らない

めまいを症状にもつ緊急度の高い疾患は、脳血管障害や大動脈解離などが考えられます。これらの疾患はその疑いがあれば、すぐにスタッフや医師に連絡し、気道の確保や輸液ルートの確保など救急対応に備えます。また、急激に患者さんの状態が悪化する可能性があるのでモニタリングを怠らないようにします。

緊急性はなくても患者さんの苦痛を取り除くケアを

生命危機の心配がなくても、めまいという症状がある限り、患者さんの苦痛は消えません。患者さんの訴えを傾聴し、受容することは看護の基本です。

具体的な看護としては、患者さんがめまいを訴えている場合には、まずは安静が保てるように環境を整えます。次に二次的な事故を防ぐこと、すなわち転倒防止に配慮します。

めまいがひどい場合は、トイレに行くときなど患者さんが移動する際には、必ず付き添う、車椅子を使用するなどの対策を考えましょう。夜間や安静のためにはベッドサイドにポータブルトイレを準備するのもよい支援策といえます。

また、嘔吐を伴う場合には、患者さんの手が届くところに膿盆を用意しておきます。嘔吐のケアとしては誤嚥予防も大切です。安静のためにベッド上で横になっている場合などは、嘔吐で誤嚥しないように体位にも注意しましょう。
このほかに随伴症状として難聴がある患者さんには、健側から話しかけるように配慮します。

まとめ

身体の平衡を保つ働きを担う器官やシステムを理解しておきましょう。めまいの症状と原因を考えるためにはこの基礎知識が欠かせません。また、めまいの症状はさまざまに分類できることも理解しておく必要があります。

AだからBという単純思考ではなく、患者さんの訴える内容や問診、観察、ベッドサイドでできる簡単な検査、バイタル測定など、いろいろなデータを考え合わせていくことが、めまいのアセスメントのポイントです。

(ナース専科「マガジン」2010年4月号より転載)

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