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【連載】日本一若い!? 訪問看護師の挑戦

第32回 胃瘻でも口から食べる!を支える看護の底力

執筆 川添高志

ケアプロ株式会社・代表取締役社長

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訪問看護では、利用者さまの隠れたニーズに気付き、適切なタイミングで介入を行うことが重要だ。今回は、胃瘻を造設したS様の「口から食事をしたい」というニーズに応えたケースを通して、これからの在宅医療の在り方を探る。


隠れたニーズに気付く

S様は、60代女性で神経難病の方で、旦那様とお二人で暮らされている。S様とケアプロとの出会いは、在宅診療を中心にしているクリニックから、「胃瘻造設で一時的に入院された方が、帰宅に伴い訪問看護に入ってほしい」とのご依頼を頂いたのがきっかけ。早速、退院調整を行うために入院先の病院へ伺い、退院することができた。

退院後は、胃瘻の処置や、リハビリテーション、嚥下機能訓練を行っていった。退院後、生活のリズムが落ち着き暫くした頃、S様の隠れていたニーズが徐々に出てきた。

「口からご飯が食べられると嬉しいのよね」

胃瘻をしていても、機能訓練を適切に行えば、食事を口から摂取できるようになるのではないか。可能性があれば、トライをしていきたい。それは、ご本人も看護師も同じ思いであった。しかし、誤嚥のリスクを最小限に抑えながら、嚥下機能の向上を図っていくためには、適切な機能評価をする必要があった。

適切な評価とケアがカギ

そこで、往診医へS様の希望、嚥下に関する可能性、評価方法について相談をしたところ、嚥下のスペシャリスト、戸原 玄先生(日大歯学部摂食機能療法講座准教授)をご紹介頂いた。早速連絡を取り、VE(内視鏡検査)による嚥下機能評価を在宅で実施して頂いた。

適切に嚥下機能を評価し、それに合わせたリハビリの実施、摂食する食事形態や種類について、評価を重ねながら検討していき、今ではなんと常食を召し上がることができている。これには、クリニックの医師や嚥下評価をした医師、訪問看護師みんなが驚いている。

在宅医療のあるべき姿とは

もちろん、全ての人がこれほど機能向上が望めるわけではなく、S様の残存能力をうまく引き出すことができた結果である。とはいえ、機能向上を実現できたことはとても印象的だった。S様は今でも、好きな煮物やオムライスなどを召し上がりながら、胃瘻栄養も併せて行い、家での生活を続けられている。

看護師含め、在宅療養を取り巻くチームが適切なタイミングで介入を行うことで、良い結果を生み出せたことは、これからの在宅医療のあるべき姿の一つをイメージすることに繋がったのかもしれない。

S様のお宅へ訪問中の看護師の写真

S様のお宅へ訪問中の看護師