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【連載】日本一若い!? 訪問看護師の挑戦

第37回 利用者様との触れ合いが成長の糧に

執筆 川添高志

ケアプロ株式会社・代表取締役社長

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今春、大学を卒業したばかりの22歳の訪問看護師が誕生した。先輩看護師のサポートを得ながら実践経験を積んでいるが、初めての単独訪問はいかに……。前回に引き続き、新卒訪問看護師小瀬の活躍をご紹介しよう。


僕だからこそできるケアとは

13時からの訪問看護だが、20分も前にA様宅に到着してしまった。朝8時から繰り返し繰り返し頭の中で「最悪の事態」を想定したケアのシミュレーションをしていたが、15分前になると、ふと別のことが頭に浮かんだ。

「そういえば、A様にとって、今日が自宅で過ごす最後の日じゃないか。訪問看護でアセスメントやケアに関しては、僕はベテランに勝てるはずがない。僕だからこそできることって、何だろう?」

A様は亡き夫と長年暮らしていたこの家から、引っ越しをして施設への入所が決まっている。「わずかな間だけど、この家に戻ってよかった」、そう思っていただけるように、会話をしてみようと、ドキドキしながらドアを開けた。

寂しげな顔

家の中に入ると、A様が難しい顔をして座っていた。

「どうしたんですか?」、声をかけてみたら、「あんたに話したってしょうがないだろう」とアマノジャクなA様が答えた。「そんなこと言わずに、教えてくださいよ。僕にできることがあるかもしれないし」と、小瀬は聴診しながら気さくに話しかけた。

するとA様はポロっと、「明日は施設に引越ししなきゃならない。区役所の人たちが来て、家財道具を片付けられちゃったの」と話し出したのである。

亡き夫と長年暮らしたこの家から離れるのは、どれほど寂しいことか。「施設ってどんな所なんでしょう。いい所だといいですね」と前向きな話をしたら、「希望者が多くて入れないらしいよ」とA様はちょっと自慢げになった。

最初で最後の訪問看護

必要な看護を終えて帰る小瀬に、A様は「若い人たちに会えなくなるのは寂しいね」「また来てね」と声をかけてくれたという。もう来ることはない。小瀬とA様の最初で最後の訪問看護を終えたのである。

単独訪問を終えた小瀬は、感想と反省をこう話している。

「リスクをたくさん考えてきたけれど、訪問間際のたった15分でまったく違うことを考えて実践してみました。お話をする中で、初めて利用者様と向き合えて、僕にとってはよい経験でしたが、A様にとっては中途半端だったんじゃないだろうか、もっときちんと考えてお話すればよかったと反省してます」

新卒訪問看護師小瀬の初の単独訪問。たくさんの利用者様とケアを通した触れ合いが、小瀬をどう成長させてくれるか。楽しみである。

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