【連載】女性のがんのケア

第12回 抗がん剤による「脱毛」への対処法

解説 春藤 紫乃(しゅんどう しの)

がん・感染症センター都立駒込病院 がん化学療法看護認定看護師

がん化学療法では、脱毛が予測できます。脱毛はボディイメージに影響を及ぼす症状であるため、事前の説明や対処法を伝えることが大切です。今回は、対処法やヘアケア法、準備しておくとよいものについて解説します。


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がん化学療法とは?副作用の出現時期や症状別の看護


Q. 脱毛が生じた場合の対処方法やヘアケア法、準備しておくべきことについて教えてください。

A. 脱毛は予測することができるため、患者さんに受容を促しながら、事前から準備をします。

【解説】 脱毛は生命に直結するものではないがつらい副作用の一つ

 抗がん剤は、細胞分裂を活発に繰り返すがん細胞を攻撃するという特徴があり、同じように活発に増殖している毛母細胞も抗がん剤の影響を受けやすく、脱毛が起こります。

 脱毛は生命に直結するものではありませんが、ボディイメージに影響を及ぼす症状であり、つらい副作用のひとつです。特に乳がんや婦人科がんの化学療法に使用されるドセタキセルやパクリタキセルは、脱毛の程度が高度です。治療を開始すると2週間くらいで脱毛が始まり、3週間くらいで抜ける量が増えてきます。

 人によって脱毛が起こるときに、頭皮にヒリヒリ、チクチクする感じが出現することもあります。治療の回数が進むと頭髪だけではなく体毛も脱毛してきます。

 脱毛は一過性・可逆性ですが、発毛は抗がん剤治療が完全に終了してから2カ月くらいから生え始めます。はじめはフワッとしたコシのない頭髪が生えてきますが、半年程度経過すると徐々にコシのある元の頭髪に近い髪に戻ってきます。

 しかし、必ずしも元通りにならない場合があるので患者さんへの説明の仕方にも注意が必要です。

かつら、帽子、バンダナなどでカバーする

 脱毛については治療法が確定した時点で説明しますが、抗がん剤投与前の早い段階に再度説明し、かつらなどの準備をしてもらいます。ただし、化学療法が受け入れられず、脱毛のことさえも聞きたくないという患者さんもいるので、患者さんの状況を見極めながら伝えることが大切です。

 頭髪の脱毛が始まると、外見の変化への対応や抜け毛が落ちるのを防ぐため、かつらや帽子、バンダナなどを着用します。入院中は帽子で対応している患者さんが多く、汗を吸いやすく洗濯にも便利なタオル地で作った帽子もあります。

 かつらは毛質や形状などにより、種類・価格がさまざまです。人毛のかつらはカラーリングをしたりパーマをかけたりでき、見た目も自然ですが、髪が傷みやすい、ボリュームが出にくいなどがあります。

 人毛と人工毛をミックスしたものは、軽くて取り扱いしやすく、ボリュームも出るために自然に見えます。人毛やミックスは比較的高価です。人工毛のものは安価ですが、熱や摩擦に弱く、蒸れやすく、不自然に光って見えるなどの短所もあります。高価なかつらには髪の分け目が自然に見える工夫などがされています。

患者さんが選択できるよう情報提供をしっかりと行う

 看護師は患者さんにとってなるべく多くの選択肢を提供できるよう、多様な情報を収集し、どういうシーンで使うのか、メンテナンスをどのようにするのか、ライフスタイルに合っているかなどを患者さんと一緒に考えます。

 サロンによっては、かつらのメンテナンスだけではなく、患者さんの髪の毛のケアを行っているところもあります。なかには「頭髪がない間は帽子で対応するから、かつらはいらない」という人もいます。

 患者さんの価値観を尊重しつつ、患者さんの生活のあらゆるシーンを患者さん自身がイメージして、自分に合った対応を選択できるようアドバイスをしていきます。

 脱毛中のヘアケアには、刺激の少ない乳幼児用シャンプーなどを用い、爪は短く切って、頭皮を強く擦らず指の腹を使って洗うように指導します。

 頭皮に痛みを感じるときは、お湯だけでも汚れは落ちるのでシャンプーを避けるようにします。また、新たに頭髪が生えてきても、ある程度もとの状態になるまではカラーリングやパーマなどはしないほうがよいことも伝えます。

抜けるのは頭髪だけではない

 また、眉毛や睫毛、体毛が抜ける可能性があることも伝える必要があります。

 眉毛の場合、アイペンシルなどで描きますが、全く眉がない状態で描くのは難しいため、脱毛前の写真を撮って眉毛の位置や形、長さ、色などを残しておくのも一つの方法です。睫毛は、付け睫毛やアイラインでカバーすることができます。

 ただし、化粧品を使う場合は、肌が敏感になっているので、事前にパッチテストをするように勧めています。また、睫毛が脱毛することで、目の中に細かなごみやほこり、汗なども入りやすくなります。対策として、外出時のメガネやサングラスの着用についても情報を提供します。

※次回は、手足症候群のケアのポイントについて解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年1月号より改変利用)

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