【連載】アセスメント力を身につけよう

問診の仕方|基本に戻ってSkill up

解説 山内 豊明

名古屋大学大学院医学系研究科 教授 医学博士/看護学博士/医師/看護師/保健師/米国・登録看護師、診療看護師

患者さんの異変を前に、「迷う」「わからない」「判断ができない」……。ここでは、そんな体験をした読者から寄せられた「アセスメントに迷いやすい症状」を5つピックアップしました。症状ごとに、どのような患者情報を集めたらいいのか、判断するときのポイント、アセスメント手技などについて、ステップを追って解説していきます。


問診のしかた

どう役立てる?

患者さんのS情報を具体的にしていく

アセスメントの際に扱う「情報」には、S情報(Subjective Data/主観的情報=患者さんの訴え)とO情報(Objective Data /客観的情報=患者さんの行動、表情、検査データなど)の2種類があります。アセスメントの大部分は患者さんが自覚しているS情報を聞き出すことといえるでしょう。問診は、その際の重要なスキルとなります。

例えば、「胸が痛い」という訴えがあれば、いきなり胸部を触らないで、「いつごろから痛いですか?」「どのような痛みですか?」と、患者さんが感じている症状について詳細に聞くことがS情報の収集です。これは、いろいろな角度から質問しながら、患者さんの訴えの内容を具体化していく作業です。これを飛ばしてO情報ばかりを求めると、結ぶ糸のないビーズ玉の集まりで、決してネックレスにはなりません。情報がまとまらず、判断もできません。

苦痛を訴えている患者さんの前では、迅速なケアにつなげるために、「短時間で的確に重要なことを聞き逃さないようにする」必要があります。そのためには、患者さんの話を聞きながら同時に、必要事項を確認し、情報を整理していけるとよいでしょう。そのような問診ができる「7つの原則」を紹介します。

問診に答えられない患者さんの場合は?

精神疾患や認知症だけでなく、疾患による障害があるために、患者さんとの間に通常の会話が成立しないことがあります。患者さん本人からS情報が十二分に得られない場合は、患者さんの家族など、身近にいて患者さんをよく理解しているキーパーソンから話を聞いて、O情報を活用するとよいでしょう。

どのような手順で、何を聞くのか。それは、S情報の収集のときと同様、「7つの原則」に基づいて聞いていきます。

問診の「7つの原則」

Check-1 [いつから?] ―――発症時の様子

急に起こった症状として発症した時を特定できるものなのか、気付かないうちに起こって次第に増強した症状なのか、などを確認します。

→これは緊急性の確認につながります。血管障害や外傷など、ある瞬間に突然起こる症状については、急いで対処する必要があります。

Check-2 [経過は?] ―――持続・継続、増強の様子

どのような症状が、どのくらい続いているのか、または、消えたり現れたりと断続的なのものなのかを聞きます。

→苦痛が次第に増強するなど、患者さんが症状として自覚するまでに時間がかかる場合があります。

Check-3 [どんなふうに?] ―――具体的な症状

具体的にどのようなことが起こっているのかを聞きます。

→患者さん全員が、自分の身に起きていることを正確に説明できるとはかぎりません。患者さんが表現する言葉の内容を確かめながら、具体的に聞き出す必要があります。

たとえば、同じ「しびれる」という訴えでも、患者さんによっては、つねっても痛くないことを言う場合もあれば、ビリビリする疼痛を言うこともあります。

Check-4 [どのくらい?] ―――症状の程度

症状の苦痛レベルを把握します。

→レベルを把握するには、スケール(基準)を作っておくとよいでしょう。チーム全体で情報を共有する際にも役立ちます。

「痛い」という患者さんの訴えがある場合、「いっときも我慢できないくらいの痛み」から、「そういわれれば痛いなあ」という程度まで、痛みの具合もさまざまです。

Check-5 [どこが?] ―――症状の起きている部位

症状が出現する身体部分を、患者さん自身に示してもらいます。

「胸が痛い」と言いながら、患者さんはお腹を押さえているようなこともあります。ですから、「実際はどこに症状が出現しているのか」を確認する必要があります。

Check-6 [どんなときに?] ―――楽になる状況(要因)

症状の原因を見極めるための大事な情報を引き出します。

→私たちは身体的な苦痛を感じると、本能的にそれを緩和させる対応をします。しかし、患者さんが無意識にそれをしている場合、あらためて問いかけなければ情報が出てきません。

おなかが痛い場合に、「まっすぐに伸びて寝ていると痛いけど、エビのように身体を丸めると痛くない」という情報が得られたとします。するとここから、「お腹の筋肉が突っ張ると痛みが増強するので、緩めるように曲げている」ということがわかります。

そして次の段階として、「腹筋を刺激するような何かがお腹の中で起こっている」とアセスメントを進めることができるわけです。これは「なぜ、その症状が起こっているのか」に直結する大事な項目です。

Check-7 [ほかには?] ―――随伴症状

自覚症状以外の情報、特に随伴症状を確認します。

→患者さんはいろいろな症状を体験しながらも、自分が一番困っていることだけに意識が集中しがちです。そのため、そのほかの症状を意識的に探してもらう働きかけが必要です。

「咳が出る」という訴えの場合、風邪なのか気管支炎なのか、喘息なのか、アレルギーなのか、原因となる疾患がいろいろ思い浮かびます。しかし、患者さん本人は咳ばかり気にしていて、ほかの情報が出てこないことがあります。

そこで、「ところで痰は出ますか?」と聞いてみます。「そういえば出ないなあ」となれば、風邪や気管支炎ではないと想定原因を削除することができます。「ありえない」ものを排除していけば、症状の原因が判断できますし、どのようなケアが必要かも考えられるはずです。

※ 次回は、「基本に戻ってSkill up2 ― 正常呼吸音の聴取のしかた」について解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年6月号より転載)

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