【連載】その手技にはワケがある!

採血|手技の根拠(クレンチングの理由など)

監修 今城直実

東邦大学大学院 医学研究科看護学専攻 修士課程

監修 野崎真奈美

東邦大学看護学部 基礎看護学研究室 教授

今回は、採血(静脈血採血)の手技に関する根拠について解説します。
より正確な検体の採取と患者さんの苦痛を最低限にすることがポイント。正しい手技手順で確実に行うことが大切です。


【採血のまとめ記事】
* 採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等)


採血のリスクを理解しよう!

新人の頃苦手な手技に挙げられることの多い採血。
正しい操作を繰り返して行うことが手技習得のカギですが、安全は手技をマスターしてからも常に意識すべきことです。
患者さんの取り違い、感染、針刺し事故などを予防することは、患者さんだけでなく、実施する看護師自身の身を守ることにもつながります。

採血(静脈血採血)を行う場合、注射器を使用する方法と真空採血管を使用する方法があり、近年では真空採血管による採血が推奨されるようになってきています。
いずれも安全な実施のために必要なのは、血管と神経の走行を十分に把握しておくこと、手技手順の流れとその理由を正しく理解しておくことです。

また、静脈血採血の目的は検査(血液学的検査、微生物学的検査、臨床化学検査)ですから、検体の扱いにも注意が必要です。
また、駆血帯の使用時間、採血時の正しいポジショニング、採血管ホルダーの固定など、一見ささいに見える手技の中に、患者さんの安全や検査データを左右する要因があることも忘れてはなりません。

次は採血の手技の根拠を紹介します。

ケア1 クレンチングするのは血管を浮き立たせるためではない

血管が見つけにくいとき、患者さんに手を開いたり握ったりを繰り返す動作をしてもらうことがあります。
これはクレンチングといい、血管を浮き出させるために行うとされてきました。
しかし、これによって筋肉の収縮が起こって、カリウムが細胞外に出て血中に流出してしまうことがあります。
その結果、カリウム値が高くなってしまい、正確な検査データが得られなくなる可能性が生じます。
ですから、採血前にクレンチングを行うことは、避けるようにします。

血管を見つけにくい場合は、手関節から肘に向けて前腕を軽くマッサージしたり、40℃程度に温めたタオルなどで腕を温めると血管が拡張し、確認しやすくなります。

ケア2 血管の選択は目視だけでなく必ず触る

血管の選択は、「橈側皮静脈」「尺側皮静脈」「肘正中皮静脈」など、できるだけ太くて柔らかな弾力性のある血管を選ぶのが一般的です。
しかしそれらを選んだとしても、弾力性がなかったり、十分な血量が得られないこともあります。
怒張しているように見えたとしても、必ず指で触って、太さや弾力性を確かめることが必要です。
また、高齢者の場合は、血管が脆弱で硬くなっていることもあるので、その状態を触れて確認することが求められます。
上腕動脈や正中神経などは皮下の浅いところを走行している可能性があるので、肘正中静脈や尺側皮静脈を選択したときには、それらを損傷するリスクがあることを忘れないようにします。
血管や神経の走行は十分に把握しておきましょう(図)。

静脈の走行、神経の走行説明図

ケア3 駆血帯は強く締めず血液は2分以内の採取する

駆血帯を締める場合の圧は、通常40mmHg程度とされています。強く締め過ぎると静脈が圧迫されてしまい、皮下出血などを生じることがあります。
また、血液の採取時間が長くなると、血液凝固が起こり、血清クロール値(Cl)が低下する、血液比重が増加する、など血液の性状が変化してしまい、正確なデータが得られなくなってしまいます。
このような変化が起こらない時間の目安が2分間なのです。
特に翼状針を使用して採血する場合は、内腔が狭く時間がかかるので注意が必要です。

ケア4 注射器使用の場合、内筒を静かに引きながら採血を実施する

注射器内筒を強く引いてしまうと、針先に血管が吸い付いて乱流が生じ、血液の溶血が起こる可能性があります。
溶血とは、血液中の赤血球が壊れ、赤血球中に含まれるヘモグロビンが血清・血漿中に出てきてしまう状態のことをいいます。
これにより検査データが高くなってしまったり低くなってしまったりして、正しく得られない項目が出てきます。
例えば、カリウムや鉄、インスリンなどがよく知られます。
この溶血を予防するために、内筒を静かに引くという手技が重要になります。これには、患者さんの疼痛を減らす働きもあります。

ケア5 真空採血管の場合、ホルダーをしっかりと固定して行う

真空採血管を使用する場合、採血管を着脱する際には、刺入部やホルダーにどうしても動きや圧がかかることになります。
採血針を血管内にうまく止めることができていても、採血管を押してゴム栓に針を通過させる際には、刺入部およびホルダーがしっかり固定されていないと、振動が大きくなってしまいます。

そうすると、針が血管を貫通したり、血管外へと外れてしまうことがあります。ひどいときには血腫になります。
その結果、針を刺し直さなければいけなくなりますし、その血管での採血ができなくなった場合には、ほかの血管に針を刺すことになってしまいます。

ケア6 臥位で採血するときは、患者さんの上半身を起こす

真空採血管で採血を行う場合は、逆流しないようにすることが大切です。
これは、一度採血管内に出た血液が血管内に戻ることで、患者さんに感染のリスクが生じるためです。
基本的に採血管は滅菌されていますが完全滅菌ではないので、逆流をさせないような手技で行います。
座位の場合は、逆流防止のために、患者さんに腕が下向きになるような姿勢を保ってもらいます。
臥位の場合は、患者さんに上半身を30度以上に起こしてもらってから、腕が下向きになるようにして行います。
なお、採血管の臀部が下になるように構えるとよいでしょう。

ケア7 末梢静脈から点滴が投与されているときは同側からは採血しない

末梢静脈から点滴投与が行われている場合、血液に薬剤が混入していることで検査データが変化してしまう可能性があります。
また、血液透析のシャントや人工血管が造設されているときも、同じ側からの採血は禁忌になります。
これは、シャントや人工血管が閉塞する危険性があるためです。
同様に乳がんなどで腋窩リンパ節郭清をした患者さんも、リンパ浮腫や感染を起こしやすいため、切除側からの採血は適しません。

ケア8 複数のデータを得るときは、決められた採血順で行う

採血管は検査によってその種類が異なり、指示どおりの採血管を使用することが重要です。
特に1回の採血で複数の検査データを得る場合は、異なる採血管を使用することになり、その順番も大切になります。
標準採血法ガイドラインによると、
(1)血清用採血管
(2)凝固用採血管
(3)ヘパリン入り採血管
(4)EDTA入り採血管
(5)解糖阻止剤入り採血管
(6)その他
の採血管となります。

中には、凝固検査など採血量が厳密に決められているものもあります。
その際、翼状針を使用すると、連結したライン内に血液が残るために、結果的に採取量が規定量に達しないことがあります。
そのため、始めにどれから行うのかは重要な問題といえます。
また、採血管の種類によっては、冷所保存や遮光など取り扱いに注意が必要なものもあるので、取り扱い方法を把握しておくことも大切です。

採血管使用の順番

次回は中心静脈カテーテルの手技の根拠について解説します。
(『ナース専科マガジン』2011年8月号より転載)

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