【連載】その手技にはワケがある!

ヒヤリハットしない輸液管理|点滴筒の満たし方、輸液量の確認など

監修 野崎真奈美

東邦大学看護学部 基礎看護学研究室 教授

監修 今城直実

東邦大学大学院 医学研究科看護学専攻 修士課程

ヒヤリ・ハット事例発生場面の上位に入るのがこのケア。感染はもとより手技の誤りによる事故には注意が必要です。


輸液管理のリスクを理解しよう!

一般病棟でも末梢静脈を介した輸液療法を行っている患者さんは多く、日常的な看護の一環として捉えている人も少なくないでしょう。

しかし、薬剤にかかわるヒヤリ・ハット事例は多く、2010年の報告件数累計の44%を占め、そのうちの9.6%が末梢静脈点滴に関係するものであるという結果が示されています(日本医療機能評価機構調べ)。

輸液療法は、薬剤の全量が直接循環器系に入るため、内服与薬に比べ作用が急速で、適切な管理が行われていないと重篤な合併症につながる危険性があります。
このようなリスクを踏まえて管理にあたることが大切です。

輸液療法は、[1]体液の恒常性の維持、[2]循環血漿量の回復、[3]熱量やたんぱく、各栄養素の補給、[4]薬剤投与を目的としますが、末梢輸液の場合は、主に脱水・低栄養、電解質異常、出血、抗生剤投与などに対する補液のために実施します。

まずは、どのような目的で実施されているかを把握し、薬剤の取り違い、用量違い、投与法・時間違い、投与忘れ、患者誤認などがないか、事前に確認することが重要です。
その上で、これらを起こさない確実な実施方法を身に付けなければなりません。

ケア1 点滴筒内の輸液量は1/2~1/3にする

点滴セットの針を輸液バッグに直角に差し込んだら、点滴筒を押して輸液を内部に入れますが、このとき筒内を満たす輸液の量は1/2~1/3が適当です。
筒内の液面が高すぎると、滴下数が数えられなくなり、逆に低すぎると、急速投与を行った場合や何らかの理由で点滴筒が傾いたときに、ルート内に空気が混入する恐れがあるからです。

点滴筒内の輸液量説明図

ケア2 輸液を準備する際にルート内を薬液で満たしておく

準備の段階でルート内を薬液で満たしておかないと、空気が入りやすくなってしまいます。


輸液ルートから血管内に空気が入ることで生じる空気塞栓は、少量であれば問題はないとされていますが、できる限りは空気を入れないような手技を行うことが大切です。

万一、空気が入ってしまったら、気泡を指ではじくか、またはルートの身体側をクランプして、側管から生理食塩水を注入し、気泡を上部にある点滴筒内へ誘導するようにします。
しかし、薬剤によっては副反応を起こすこともあるので、実施には注意が必要です。

ケア3 止血は完全に血液が止まるまで確認する

留置針を抜く場合は、止血されるまで抜去部位を押さえることが基本です。

患者さんによっては、血小板が減少していたり、ヘパリンなど抗血栓薬を使用しているなどにより、出血が止まるまでに時間がかかることがあるため、きちんと確認することが大切です。
不安であれば止血テープなどで押さえるようにします。
一旦止まってからも、患者さんの状態や運動量によっては再出血することがあるので、その場合はナースコールをするよう患者さんに伝えることも必要です。

ケア4 薬剤によっては輸液投与中にもバイタルサインを確認する

一般的な補液の場合は、輸液投与中のバイタルサインの確認は行わないことが多くなりますが、投与する薬剤によっては、その変化を見ていくことが必要となります。
血圧に変動をもたらす薬剤(昇圧薬、降圧薬など)、不整脈治療薬、鎮痛・解熱薬、鎮静薬などがこれにあたります。

これらを投与する場合には、循環動態に影響が現れていないか、定期的なバイタルサインの測定で確認するようにします。
特に、アナフィラキシーショックによる呼吸困難や血圧低下には注意しましょう。

薬剤の中には、扱い方によっては重篤な副作用の恐れがあるものもあります。
取り扱いに注意したい薬剤の知識を知っておくと同時に、投与の際の慎重な観察が必要となります。前ページに引き続き、輸液管理の根拠を解説していきます。


濃度や投与速度によって副作用が起こる薬剤を知っておく

急性膵炎などの治療に使用されるメシル酸ガベキサートは、タンパク質分解酵素の働きを阻害したり、血小板の凝集を抑制する働きがありますが、投与時の濃度や速度が増加すると、血管外漏出が起こりやすく、重篤な組織障害を引き起こすことがわかっています。
高濃度による投与下での漏出では、血管内壁を障害し、刺入した血管に沿って静脈炎や皮膚潰瘍、周囲組織の壊死などが発生しているとの報告があります。
このほか、骨格筋弛緩薬、循環器用薬、消化器官薬、糖尿病治療薬、抗がん剤、ホルモン製剤、抗生物質製剤、抗ウイルス薬などについても、副作用や投与法について注意が必要です。

急速投与により重篤な副作用の恐れがある注射薬の例についての表

定期交換以外にも必要なときにはルート交換をする

長期間留置する輸液ルートの交換頻度については、2002年にCDCが示した「血管内カテーテル由来感染予防ガイドライン」に基づき、72時間ごとの交換を実施している医療機関が多いようです。
定期交換以外にルートを交換しなければならないのは、主に、
[1]血液の逆流が起こった場合(ルート内で血液が凝固することがある)
[2]薬剤に配合変化が生じた場合(薬効に影響したり、閉塞が起こることがある)
[3]ルートの事故・自己抜去が発生した場合(針が周囲の環境に触れてしまい感染する恐れがある)
です。その際は1日1回もしくは毎回の交換が必要になります。

ドレッシング剤は頻回に交換しない

刺入部を固定しているドレッシング材は、頻回に取り替えることで逆に感染のリスクが高まると考えられています。
そのため、汗をかいてドレッシング材がはがれかかっていたり、水に濡れて浸潤した場合など、感染が起こりやすい状態になったときに交換します。
固定しているテープについては、テープかぶれなどのスキントラブルが見られたときに交換しますが、この場合はテープの種類を変えるようにします。

患者さんの体位、体動、手・腕の向きや位置で滴下速度が変化していないか観察する

輸液を手動で滴下する場合は、高低差を利用して滴下させているため、患者さんが身体を動かすことで輸液バッグと刺入部位との落差が変化すると、滴下速度がその影響を受けてしまいます。
このようなときは、まず輸液バッグを常に患者さんの心臓の位置よりも高く保てる位置に設置します。
その上で、患者さんが安楽な体位を保持できるよう調整を図り、患者さんにも協力を求めます。
また、複数の薬剤を同一ルートで投与する場合も輸液バッグの内圧が変化し、滴下速度が変わることがあります。
その場合、最後の調整が終わった段階で、各薬剤について再度滴下状態を確認します。

薬剤が白濁していたら滴下を中止する

薬剤の白濁は配合変化が原因と考えられます。薬剤は単独で使用することが基本で、その状態で最も成分が安定するように作られています。
そのため、ほかの薬剤と混合すると、溶解度が変化したり、pHの変動による化学変化や加水分解などが起こることがあります。
その結果、白濁(混濁)や変色、着色、沈殿、血晶析出などの外観の変化、内容成分の分解、力価の低下などが生じます。
配合変化が起きた薬剤は、期待する薬理作用が得られない、副作用が増強する、発生した結晶により血栓が発生するなど、人体に悪影響を及ぼすことも考えられるので、配合変化を認めた時点で点滴は中止しなければなりません。

配合変化が起こりやすい医薬品の例についての表

(『ナース専科マガジン』2011年8月号より転載)

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