【連載】基礎からわかる精神科看護

【精神看護】第2回 幻覚患者の看護とは

監修 医療法人財団青溪会 駒木野病院

精神科専門病院

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幻覚患者の看護とは

今回からは精神看護を行っていく中で必要な、各症状に合わせた看護方法を学んでいきます。
今回は幻覚症状がみられる患者への看護方法です。

幻覚の定義

幻覚とは実際にはない刺激を知覚する知覚障害であり、錯覚とは区別されます。
幻覚には幻聴、幻視、幻味、幻臭、体感幻覚などがあります。

幻覚は統合失調症、アルコール依存症、薬物依存症、器質性精神病、心因反応、躁鬱病などに見られますが、統合失調症で最も多くみられる症状です。

幻覚の種類

幻聴

幻覚の中でも幻聴は統合失調症で最も多く見られ、ほとんどが言語性の幻聴です。
その声は架空の人物、または実在する人物であり、聞こえ方も耳からの直接的なもの、頭の中や空から聞こえるものもあります。
内容は悪口、非難、禁止、命令などの深いで被害的なものが多いのが特徴です。

統合失調症の幻聴は必ず意識清明で現れ、患者自身にしか体験できないものであるため、看護職員には察知しにくいですが、幻聴のある患者はその声に反応し、笑う(空笑)、怒る、ぶつぶつと何かを話す(独語)、じっと聞き入る、うなずき、不快な声に耳をふさいだり耳にものを詰めるなどの行動がみられるため、これらの行動から患者の状態を把握することができます。

また、幻聴に左右され、自分自身を傷つけたり、(自傷)、他人を傷つけること(他傷)もありますが、看護職員の言動は理解しているため、安全を考慮し適切に対処します。

体感幻覚

幻聴のほかに自傷行為の危険が高いものには体感幻覚があります。

体感幻覚は統合失調症で幻聴の次に多く、脳、性器、さまざまな臓器、皮膚を対象とするグロテスクな不快感(脳みそをかき回される)などを感じる幻覚です。

患者はこの体験を恐怖に満ちた表情で訴えることが多く、中には恐怖による突然の大声だけでなく、不快感をなくすため、対象となる部位への自傷行為(割腹など)の危険もあるため、患者の言動には十分な観察と注意が必要です。

また、体感幻覚において客観的なデータをもとに幻覚を否定することは、看護職員への不信感につながりやすいため、避けた方が良いと考えられます。
しかし、実際に身体的異常を体感幻覚のように訴える患者もいるため、十分なデータとアセスメントに基づく判断が要求されます。

幻視

幻視はアルコール依存症(振戦せん妄)、老年期認知症などのせん妄状態に出現しやすく、多少の意識障害を伴っていることが多いです。

振戦せん妄

振戦せん妄では、小動物や虫が見え、それを取るような動作をすることがあります。

幻味

幻味は味覚における幻覚で、器質性脳障害や統合失調症に見られ、幻臭は側頭葉の障害や統合失調症で見られます。
これらは主に不快を感じるため、被害妄想や被毒妄想などに結び付きやすくなります。

幻臭

また、幻臭には思春期には多い境界例や神経症に見られる症状おいて自己臭恐怖もあります。
看護職員は、患者の思いを理解し、状態の悪化を防ぐための配慮が必要です。
慢性期の患者では、幻覚を自覚している場合もあります。

このような状態では、他者との交流を通した、現実認識への関わりが重要となります。

幻覚患者の観察のポイント

患者の反応として考えられる以下について十分な観察が必要です。

[急性期]

自傷他害の可能性:幻覚に関連した

  1. 幻覚の内容
  2. 患者の表情・言動
  3. 幻覚出現時の状況

[慢性期]

A.感情を表現する能力の低下:不安や恐れに関連した

  1. 感情表現の方法
  2. 他者との関わり方
  3. 患者の表情
  4. 訴えの内容

B.ストレス適応能力の低下:言語的コミュニケーション能力の低下に関連した

  1. 患者の表情
  2. 精神症状の変化
  3. 他者との関わり方
  4. 訴えの内容

幻覚患者への具体的なケア方法

[急性期]

  1. 刺激を少なくする配慮を行う
  2. 必要時、的確な医師への情報伝達、及び指示に基づいた隔離室・個室の使用
  3. 状態に応じた適切な薬剤の投与
  4. 必要時、危険物を預かる
  5. 患者の安全を考慮した異常の早期発見と対応を行う。特に他者とのトラブルには十分注意する
  6. 患者に状況を伝え、処置の必要性を説明する
  7. 苦痛が強い場合や、危険な行動を起こしそうな場合は早めに看護職員へ伝える必要性を説明する

[慢性期]

  1. 患者が幻覚を訴えてきた場合、肯定も否定もしない対応を行う
  2. 幻覚による不安や恐怖を訴えてきた場合、受容的な態度で接する
  3. 現実認識できるようにレクリエーション活動や、作業療法に参加を促する
  4. 幻覚での苦痛がある場合、状態の悪化につながるため、負担となる無理な活動はしなくて良いことを説明する
  5. レクリエーションや作業療法に参加できた場合、そのことを評価する
  6. 患者が現実的な話をしてきた場合、その話を強化する
  7. 患者の言動を受け入れ、支持する

以上が幻覚患者への看護のノウハウとなります。

次回は妄想、せん妄状態の患者の看護を学びます。

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