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【連載】ナースのための接遇セミナー

第3回 【ナースの接遇】言葉遣い

解説 小山 美智子

株式会社C-plan 代表取締役 医療経営コンサルタント/医療接遇アドバイザー

Nurse nocap

思いやりの心を持って感じのよい対応ができる看護師さんにはぜひ、きれいな言葉遣い、適切な敬語で話してほしいものです。敬語の使い方を間違うと、相手を見下した言い方になってしまい、患者さんに失礼になったり、誤解を生じかねません。

敬語が示す位置関係を確認し、普段使っている言葉遣いを見直しましょう。


こんな「場面」は身に覚えがありませんか?

Episode1 医師の遅れを伝える際に…

── 診療を受ける患者さんのところに、医師がまだ来ておらず、患者さんを少しお待たせしてしまうことになりそうです。看護師はその旨を患者さん・ご家族に伝えます。
看護師:「先生がまだいらしていないので、少しお待ちいただけますか」

*対応自体は丁寧ですね。でも、言葉遣いが少しおかしいと感じませんか?

Episode2 患者さんを「呼ぶ」のは誰?

── 診療終了後。患者さんに声を掛け、会計までの流れを案内します。
看護師:「── それでは、会計窓口から呼ばれますので、お待ちいただけますか」

*よく聞かれそうな表現ですが、少し変なところがあります。どの部分でしょうか?

「身内に敬称を付けない」という敬語のルール

エピソード1に見られる看護師の言葉遣いも、患者さん・ご家族に対してではなく、例えば、院内の会議などの場で、組織内の上司または先輩に対して伝える言い方であれば、このままでよいと思います。しかし、患者さんやご家族など、組織外の人に対して、組織内(身内)の行動を「いらしていない」などと敬語で表すことは、正しくありません。

ここでのポイントは、「組織外の人に対して組織内(身内)をどう表現するか」ということです。例えば、家に電話がかかってきたとしましょう。あなたが結婚していて、ご主人あてにかかってきた電話です。「ご主人様は、いらっしゃいますでしょうか?」と先方に尋ねられ、「ご主人様は、いらっしゃいません」とは答えないでしょう。エピソード1で紹介した「先生が、いらしていないので」は、これにあたる表現になってしまいます。

エピソード1では、どのような言葉遣いが望ましいのでしょうか。

(1)「まもなく医師が参りますので、お待ちいただけますか?」。もしくは、(2)「先生がいま来ますので──」などの伝え方をするとよいでしょう。

「先生」を用いてもおかしくない使い方とは

(1)の例のポイントは、「先生」という敬称を「医師」という呼称に呼び変えたことです。組織内の人間が身内を呼ぶ際には、上司(自分より責任が重い人)についても身内として扱い、敬称も用いないというルールがあるからです。「担当医が参 ります」「医師の○○が来ます」という表現もよいでしょう。

医師は院内の職員ですから、看護師が対外的な場面で「敬称」で呼ぶのは間違いですが、院内では「先生」が「呼称」として定着していることも事実です。(2)のように、「先生」を呼称として使うのであれば、「来ますので」という言い方をします。ここで注意をしたいのは、「来られます」「いらっしゃいます」という敬語を用いないことです。

なぜなら、身内の行動についても、外部の人に話す際は、「いらっしゃる」などの尊敬語は使わず、謙譲語(自分や身内がへりくだる言い方)を用いる必要があるからです。身内(組織内の人間)を持ち上げるような表現は、相手によっては違和感・不快感を引き起こしてしまいます。

次に、エピソード2を題材に、患者さんやご家族に対する「身内(組織内の人間)の働き掛け」を表現する際の言葉遣いのルールを考えてみましょう。まず前提として、患者さんに対する「自分の行動」を表現する際には、謙譲語で「こちらからお呼びいたします」という言い方をするのはおわかりかと思います。エピソード2のように、自分以外の「身内による働き掛け」を表現する際にも、「会計窓口からお呼びいたします」という言い 方をすることを覚えて実践していきましょう。

少しややこしいかもしれませんが、「会計窓口から呼ばれます」という言い方では、別の組織の自分に関連のない人が呼ぶような印象を与えてしまいます。同じ組織内の人間の働き掛けをいう表現として、このような使い方がふさわしいことを理解しておきましょう。適切な敬語表現は、組織内の連携がとれているイメージを与えるのです。

対外的な敬語のポイント

身内に敬称は付けない 身内の行動に敬語を使わない

×「医師が参られます」「来られます」
→〇「医師が参ります」
×「先生がいらっしゃいます」
→〇「先生が来ます」

身内による働き掛けを、他人事のように言わない

×「会計窓口から呼ばれます」
→〇「会計窓口からお呼びいたします」
×「検査が行われます」
→〇「検査をいたします」

自分や身内の行動を表現するときの言葉遣い例(謙譲語)

見る→拝見する
聞く→お聞きする、うかがう
言う→申す、申し上げる
呼ぶ→お呼びする
行く、来る→参る、うかがう
いる→おる
する→いたす、させていただく

思いやりの心を持って感じのよい対応ができる看護師さんにはぜひ、きれいな言葉遣い、適切な敬語で話してほしいものです。敬語の使い方を間違うと、相手を見下した言い方になってしまい、患者さんに失礼になったり、誤解を生じかねません。

敬語が示す位置関係を確認し、普段使っている言葉遣いを見直しましょう。


「敬語」は相手を尊重し、よい関係を築くために必要なツール

看護師は医療サービスを提供するだけではなく、療養生活のアドバイザーとして頼れる存在として期待されています。患者さん・家族に対してへりくだりすぎる必要はありません。

また、敬語に対して、相手を持ち上げるという上下関係的なイメージを持ったり、逆に、堅苦しくて冷たい言葉という印象を持つ看護師もいますが、敬語は、相手に対して節度ある社会人、組織であることを表す言葉です。あくまでも、相手を尊重し敬う言葉として、仕事上かかわる相手との関係を良好に保つために必要なツールと捉えていただきたいです。

大切なのは、患者さんの感じ方も人それぞれであると理解して敬語を扱うことです。最近は、プライバシーを保ちたい人や適度な距離感を求める人が増える傾向にあります。例えば、「○○してくださいねー」などのように、語尾に「ねー」と付ける言葉遣い。こういう言葉遣いに親しみや温かさを感じる患者さんがいる一方で、違和感を訴える人が目立ってきています。

かかわりの初めの段階で相手の反応をみながら、適度な距離を保つ「敬語」を使い、相手に「なれなれしさ」「上から目線」「幼児扱い」などといった不快感を与えずに、信頼関係を築いていけるよう配慮しましょう。

>>次ページは「職員同士の会話」について解説します。