【連載】基礎からわかる精神科看護

【精神看護】第7回 拒絶的な患者の看護とは

監修 医療法人財団青溪会 駒木野病院

精神科専門病院

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拒絶的な患者の看護とは

定義

看護上の拒絶

看護上の拒絶とは、ある行動を他者から求められた時、拒否する態度や行為を指していいます。
拒絶することは外界の人の侵入を防ぎ、自己を守っている状況です。
拒絶には、食事を拒否する拒食、薬を拒否する拒薬、話しかけられても一言も発しない緘黙、人との接触を拒否する接触拒否があります。
その他、千面、入浴、更衣など身の回りの整理を拒絶することもあります。
拒絶は、機能的な障害や意識障害は無く、自分の意思を伝えようとしていないだけで、周りからの声掛けや問いかけは理解しています。

医学診断上の拒絶

1)拒絶、緘黙:精神分裂病の緊張病性症状群の症状の一つであり、すべてに拒絶の態度を示すことをいいます。
2)昏迷:自発的にも、周囲の働きかけに対しても活動の無い状態をいいます。
高度になると食事もとらず、臥床がちになり、ほとんど話もしなくなりますが、意識障害は無いとされています。
抑うつ性昏迷と緊張病性昏迷などがあります。

観察のポイント

拒絶はさらなる症状悪化、日常生活行動、身体など様々なことに影響を及ぼします。
純粋な緊張症状としての拒絶は治療で消失しやすいのですが、それ以外の拒絶は看護の関わりにより改善されることが多いです。
よって、拒絶は看護職員の促し方によって、服薬する、食事をするという行動を起こします。
いずれにしても、患者の気持ちを支持した上で、根気強い関わりが必要となります。
ここでは、看護上の拒絶についての看護のポイントを以下に記述します。

拒食

食事行動の拒絶は幻覚や妄想など病的体験に基づいており、栄養状態の低下、水分の不足を生じる可能性があります。
これにより、尿閉、便秘傾向、電解質異常をきたしやすい状況にあります。
よって、食事行動や水分摂取、薬の副作用の観察とともに、患者の訴えを傾聴し、食事時間、好みの食品・形状を工夫するなど、患者の希望を取り入れた対応も重要です。

緘黙・摂食拒否

現実や他者との接触を拒絶することで、日常生活行動がスムーズにいかないことも考えられます。
しかし患者は現実との接触は拒絶しているものの意識障害は無く、看護職員の言葉や態度は理解しています。
定期的なあいさつ・声かけ、情報の提供や説明を行い、患者の存在を認める対応が必要です。
また、病的体験に基づいた拒絶では、病的体験以外の日常的な会話やレク・行事の参加などにより、現実との接触時間を多くする関わりが必要となります。

拒薬

幻聴や妄想の病識欠如のために服薬を拒絶することがあり、これにより病状が悪化する可能性もあります。
この場合、患者への積極的な声かけや、働きかけは逆に患者の防衛を強化するだけになってしまいます。
観察する時の関わり方としては、少し距離を持って接し、看護職員は患者の敵ではなく、味方であり安全である、よき理解者である、ということを伝えるよう気配りをしながら、徐々に距離を縮めていくのが有効です。
その過程で起こりうる患者の変化(表情・行動・言葉・態度)など細かい観察は大切です。

欲求が満たされないことによる拒否

入院生活の不満や治療・看護に対する不満、隊員といった自己の欲求が満たされないことからの拒否もあることを忘れてはなりません。
このような患者の要求を理解し、受け入れる姿勢も必要です。
説得しようとしたり、指示して従わせるような看護職員の行動は、患者の拒否的態度をますます強くさせることになってしまいます。

日常生活行動の拒否

入浴や更衣など日常生活上の拒絶は幻覚、妄想に基づくこともありますが、精神分裂病の慢性期に見られる無為、自閉との判別が必要になります。

看護のポイント

患者の反応として考えられる以下について十分な観察が必要となります。

食事、飲水を拒絶することによる、栄養・水分量不足のハイリスク状態

  1. 拒食・飲水拒否時の訴えをよく聴く
  2. 摂取時間に固執せず、いつでも摂取できるよう工夫する
  3. 被毒妄想による場合は安全であることを伝えたり、他の食膳と交換する
  4. 少しでも本人が食べられるものを工夫する食べやすい形状に変える
  5. 患者の希望を取りいれる
  6. 電解質を含んだ飲料(ソリタ水、ポカリスエットなど)を促す
  7. 滋養に富んだ栄養物(エイシュアリキッドなど)の飲用を促す
  8. 拒食が長く続く場合は鼻腔栄養を試みる
  9. 食事時の表情・言動・態度から、拒食の原因を推察する
  10. 尿閉時は排尿誘導、導尿などを行う腹部膨満、嬬動運動微弱時は緩下剤の処方を医師に依頼する
  11. 便秘時は浣腸について検討する

他の人との接触を拒否することに関連した十分な社会的相互関係の障害

  1. 看護職員から挨拶をする
  2. 一日数回時間をあけて声をかける
  3. 呼びかけるときは必ず名前を呼ぶ
  4. レク・行事に誘う
  5. 反応が認められなくてもあいさつや声かけは定期的に行う
  6. 表情、言動、態度を観察し、摂食拒否の原因を推察する

自分の内的世界に閉じこもることや病識欠如によるノンコンプライアンス

  1. 服薬を促す
  2. 服薬に関する訴えをよく聴く
  3. 拒薬時は時間変更可能であれば、時間をずらして与薬を促す
  4. 患者の希望を取り入れる
  5. 服薬時の表情、言動、態度を観察し、拒薬の原因(幻聴・妄想に支配された言動「この薬は毒だ」「薬を飲むと悪くなる」)を推察する

病識の欠如、入院に対する不承知に関連した入院・治療の拒絶

  1. 看護職員は病気にさせようとしているのではなく、治ってもらいたいと思っていることを伝える
  2. 入院や服薬についての訴えをよく聴く
  3. 表情、言動、態度を観察し、不満の原因を推察する入院の必要性について話し合う

自分の内的世界に閉じこもり、他の人との接触を拒否することに関連した日常生活のセルフケア不足

  1. セルフケアの不足が生じている生活行動(食事・入浴等)では、時間に声をかける
  2. 行動の最中にも声をかけ、気分を問う
  3. 声をかけても反応が認められないときは、一緒に行動して行動を促すか、介助をする
  4. 方法がわからないときは一緒に行いながら指導する

薬物拒否に関連した症状悪化(昏迷)のハイリスク状態

  1. 声をかけながら介助する(食事行動など)
  2. 必要時、説明のう、導尿を行う
  3. 嚥下がスムーズでないときは、食事を中止し、医師の指示のもと輸液、または経管栄養を行う
  4. 体動が全くない時には体位変換、ROM訓練を行うエアーマットなどで褥瘡の予防をする
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