1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. エンゼルケア・逝去時のケア
  5. エンゼルケアの方法・手順
  6. 第11回 漏液があるのは腐敗の始まりですか

【連載】エンゼルケアQ&A

第11回 漏液があるのは腐敗の始まりですか

  • 公開日: 2013/10/27

▼エンゼルケアについて、まとめて読むならコチラ
エンゼルケア(逝去時ケア)とは?目的・手順など


 家族の意向に寄り添って最期のお別れの場面を創出する「エンゼルケア」が、多くの病院や施設で実践されるようになってきています。よりよい死後ケアにつなげるにはどうすればよいのか、よくある疑問・悩みについて、エンゼルメイク研究会代表:小林光恵さんに話を伺いました。

――清拭や移送時に、側臥位にしただけで胃液が出てきました。腐敗が始まっているということでしょうか。

小林光恵さん(以下、敬称略) 臨終直後なら、腐敗ではないと思います。

――漏液があるということは腐敗ではないんですか!?

小林 エンゼルケアのセミナーや講演の中で私は、「腐敗が進むと、体内圧が高まって漏液が起こる場合があります」と説明します。その際の言葉が足りないのか、漏液があると、イコール腐敗と思ってしまう方がいるようです。

 しかし、たとえ腐敗のリスクがかなり高い方の腐敗防止の冷却でも、臨終後4時間以内、遅くとも6時間以内に実施というのが目安ですから、臨終直後の段階の腐敗は考えにくいです。

――腐敗でないとしたら、なぜ、漏液があるんですか。

小林 側臥位になると、仰向けで寝ているときと比べて、内臓や身体の状況がガラッと変わりますよね。つまり、体内の水分の有り様が変化するということです。栓をしていない水入りの湯たんぽを傾けると水がこぼれるように、体位を変えたら、その人の体内の水分状況によって漏れ出ることがあります。身体より頭を低くしても出やすくなりますね。それと、腹水がある方なども体位変換により内圧が変化して漏液、という可能性があるのではないでしょうか。


――どこから水分が出てくるんでしょう。

小林 胃や肺から、また、状況によってはCVカテーテルを抜いたところなどから出る場合もあるようです。

――水分が漏れ出るのは、どこからが多いんですか。

小林 口や鼻からですね。ちなみに、重力の影響で下方向(仰臥位の場合、背部方向)に移動する水分が多いので、身体の後面にある開放性の傷などからも水分がしみでやすいということになります。

――体交時や移送時に、便が漏れることもあると聞きますが……。

小林 臨終の直前・直後などには、肛門の弛緩が関係して便が漏れ出ることがあるようですね。また、生前から漏れがちだった方も、引き続き漏れることがあるようです。これも、腐敗したからではありません。

――臨終直後、漏液の可能性が高いのはどんな方ですか。

小林 急死など臨終の直前まで普通に飲食していた方、病状により胃や肺に水分がたまっている方、消化管の出血などが関係している方などです。

――漏液の可能性が高い場合、どんな工夫ができますか。

小林 清拭よりもシャワー浴ができるといいと思います。

――確かにシャワー浴だと、漏液があっても洗い流せますね。

小林 はい。仰向けのままであれば身体を洗うことが可能な場合が多いですし、おっしゃる通り漏液があってもすぐに洗い流せます。

 シャワー浴ができない場合として提案しているのは、清拭の際、ご家族の方たちに上体を少し抱き起こしていただき、その間に背部など体の後面を拭くという方法です。着替えも同様の方法で。

――側臥位にしないわけですね。

小林 これまで、特に着替えの際には側臥位にすることが多かったわけですが、側臥位への体位変換は、体内の水分が漏れ出る可能性が高いので、そうしない工夫です。

――ご家族が背中を支えるのは、ベッドからストレッチャーへの抱き移しにも似ていますね。

小林 背中を支えるときにご家族が、まだぬくもりがあるのを感じることができますし、背中には熱がこもりやすいので、クーリングの効果もあり、腐敗を遅らせることにもつながります。

 それと、退院後の移送の際には頭を低くしないようにすることや、万が一漏液があった場合の対処法をご家族に伝えておくことも大切です。退院時文書に、盛り込んでおくのもいいでしょうね。

――亡くなったあと、清拭前に腸の内容物を押し出す対応をする現場もあるようですが……。

小林 少しでも体内をきれいにする、という意味で行っているようですが、私は必要ないと考えています。内容物を少し押し出しても体内の環境がよくなるわけではないですし、ご遺体は体表面と同様に内臓も脆弱になっており、強く圧迫することで内臓を破損してしまう可能性のほうが心配です。

 また、押し出す行為は時間も結構かかるので、漏れてしまった分だけ拭いてさしあげて、あとは腐敗が進まないように、素早く冷却することのほうが大事で、その時間は、爪きりとかシャンプーとか別のことに使ったほうがいいと思います。

※本記事は、株式会社医学書院のWEBマガジン「かんかん!」の連載記事をもとに再構成したものです。
看護師のためのWEBマガジン「かんかん!」はこちらから

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

第23回 部位別のエンゼルメイク(5)尿道、肛門などのデリケートな部位(6)リンパ

臨終を迎えた患者さんの人格や尊厳が失われないよう、ご遺体がみなさんの手を離れるまでケアを行なう「エンゼルケア(逝去時ケア)」。本連載ではそのエンゼルケアの実践法を解説します。 今回は「尿道口・膣口・肛門」と「リンパ漏れ」の対応について解説します。 尿道口への対

2016/9/17

アクセスランキング

1位

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは?基準は?

*この記事は2016年7月4日に更新しました。 SIRS(全身性炎症反応症候群)について解説します。 SIRS(全身性炎症反応症候群)とは? SIRS(全身性炎症反応...

250839
2位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
3位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
6位

アプガースコア(アプガー指数)

【関連記事】 ●新生児仮死における低酸素虚血性脳症の重症度分類|Sarnat分類 ●小児救急におけるトリアージと適切なアセスメント ●第1回 無痛分娩の麻酔の適応、方法、禁忌、外来での説...

248441
7位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
8位

陰部洗浄の目的・手順・観察項目〜根拠がわかる看護技術

*2020年4月16日改訂 関連記事 * おむつ交換のたびに陰部洗浄は必要? * 膀胱留置カテーテル 陰部洗浄・挿入・固定のコツ * 在宅療養におけるオムツ使用と陰部洗浄について知...

249675
9位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
10位

導尿の看護|手順やカテーテルの種類など

導尿とは?  何らかの原因で自力での排尿が困難な場合、尿道口からカテーテルを挿入し、人工的に尿を排出させることを導尿といいます。 【関連記事】 ●持続的導尿とは? 知っておきたいポイント...

308684