【連載】高齢者の機能低下をアセスメント

第3回 加齢による3つの機能低下と症状

解説 前田孝子

東京都健康長寿医療センター 医療安全室 専任リスクマネージャー 看護師長

今回は、日常生活機能、精神機能、内臓機能の3つに分けて、実際の低下の内容について見ていきます。


日常生活機能低下

加齢により運動機能が低下し、それによってADLもまた低下することになります。
機能低下する運動器官と症状、主な疾患は次の通りです。

骨を形成するカルシウムの減少により骨組織がスカスカになります。
そのため外からの力に対してもろくなってしまいます。
主な疾患は、大腿骨骨折、骨粗鬆症などです。

関節

関節の軟骨が硬くなり、周囲の組織の弾力性が低下し、関節の屈伸、可動域が狭くなります。
主な疾患には、変形性関節炎、リウマチがあります。

筋肉

筋線維が細く脆弱になり、筋肉量が低下します。
また、長期臥床や安静により廃用症候群が起こりやすく、ADLが阻害され、自立した生活が送れなくなることがあります。
関節拘縮、褥瘡、深部の静脈血栓、尿路感染、食欲不振、肺炎、便秘といった合併症には注意が必要です。

精神機能低下

高齢者に比較的多く見られる精神機能低下は次の通りです。

感情障害

感情鈍麻、感情失禁、不安状態、うつ状態、躁状態などが現れます。

見当識障害

時間や場所が分からなくなります。

記憶障害

記銘力障害、想起障害。新しいことを覚えたり、一度覚えたことを思い出したりするのが難しくなります。

認識障害

せん妄、朦朧状態。環境の変化に対応できずに、意識混濁、幻覚・妄想、強い不安、興奮、てんかん、ヒステリーなどが見られます。

知覚障害

幻覚、妄想、心気症が見られます。

認知症状

物忘れやせん妄、徘徊、異食などの症状が見られます。
また、精神機能が低下し、活動性も低下することで脱水や食欲不振、排便障害といった身体的症状を呈することがあります。

内臓機能低下

加齢によりいずれの内臓機能も低下するため、身体的にもさまざまな変化が見られます。
各器官の機能低下と症状・疾患は次の通りです。

呼吸器

肺の弾力性が低下して大きな呼吸ができなくなり、小さく浅い呼吸になります。
肺活量、1秒率、最大換気量など肺機能そのものが低下します。主な疾患は、肺炎、肺がん、肺気腫、肺線維症などです。

循環器

左心室からの血液拍出力、心臓の予備能力、刺激発生機能が低下し、動悸、息苦しさ、胸痛、むくみが出現します。主な疾患には、虚血性心疾患、不整脈などがあります。

消化器

唾液、消化液の減少、嚥下反射の低下などが生じ、消化不良、胃部不快、便秘、食欲不振などが出現します。
主な疾患には、潰瘍、肝硬変などがあります。

泌尿器

膀胱が委縮し、頻尿や残尿が起こります。また、尿道括約筋の低下あるいは亢進によって失禁してしまうことがあります。
主な疾患には、腎不全、尿路感染、前立腺肥大などがあります。
次回からは、機能低下に伴うさまざまな症状をどのようにアセスメントすればよいのか、症状ごとに具体的に解説します。まずは、転倒・転落から解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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