【連載】高齢者の機能低下をアセスメント

第5回 転倒・転落の観察とアセスメント

解説 吉崎順子

東京都健康長寿医療センター 救急外来次席

転倒・転落を防ぐには、身体状態、精神状態、環境などをアセスメントし、要因を洗い出すことで、予防を図る姿勢が必要です。
今回は、観察とアセスメントのポイントについて解説します。


身体症状だけでなく、生活背景や性格などを統合的に見ていくことが大切

身体機能そして環境適応能力が低下している高齢者は、疾患によってそれらの機能・能力がさらに低下しています。
また、生活背景・習慣によってもそのリスクは異なってきます。先にも述べましたが、病室は非日常環境です。
例えば、自宅では布団で寝ていても病院ではベッドを使用し、そのベッドも床から高さがあります。
こうした違いへの適応は、高齢であり、しかも疾患を有する患者さんにとっては非常に難しく、それだけ転倒のリスクも高くなるのです。

従って、高齢者の転倒予防のアセスメントでは、疾患の理解はもちろんのこと、その患者さんの生活背景、習慣、性格など患者さんを総合的に見ていかなければなりません。
患者さんがどの程度動けるのか、どのように動きたいのかなど、生活の全体像を把握する必要があります。
特に、患者さんのことが十分把握できていない入院当日から3から5日目までの間には転倒が起こりやすくなっています。

当センターでは、生活パターンを多少なりとも把握するため、入院時にすべての患者さんを対象に転倒リスクの自己チェックをしてもらい、さらに「転倒転落防止アセスメントシート」を用いて、転倒のリスクを受け持ち看護師がアセスメントし、転倒予防プランを作成しています。

そして、入院後3から5日目にもう一度アセスメントをし、再評価を行って、その状況に合わせてケアプランを見直していきます。

そのアセスメント項目は、神経症状、精神症状、発熱、ADL低下、その他の要因の5項目に分けられ、それぞれチェックをしていきます。

ただし、いずれの項目にも該当せずADLが自立していても、高齢者は転倒のリスクを意識しながらケアしていくことが大切です。

転倒・転落のリスク

  1. 老化による身体機能の低下
  2. 疾患の影響
  3. 薬物の作用
  4. 着慣れない寝衣
  5. 以前との運動イメージのずれ
  6. 一度転んだことへの恐怖心

神経症状

自分の意思を適切に伝えられないと、一人で行動してしまうことが多くなり、リスクが高くなります。
失語・構音障害の有無など意思伝達が十分にできるかどうかをチェックします。
また、失見当識・失認・失行がある場合には、自分が置かれている状況を適切に認識できないため、転倒リスクは高くなります。

精神症状

妄想や幻視、幻聴、せん妄、徘徊、不潔行為といった精神症状では、その状況に左右されて、行動のリスクに関して適切な判断ができなくなります。
さらに昼夜逆転、傾眠傾向といった睡眠覚醒障害があると、ふらついたり、状況判断力が低下したりします。

発熱

ふらつきやめまいといった発熱による二次的障害によって、平衡維持能力が低下し、転倒しやすくなります。

ADL低下

麻痺やしびれ、疼痛、浮腫などによってふらつくと、バランスを崩して転倒しやすくなります。
栄養状態不良による体力低下によってもふらつきやすくなるので、栄養状態もチェックします。
また、転倒の原因としては、排泄に関する動作が一番多いので、夜間も含めた排泄状況をチェックすることが重要になります。

その他の要因

視覚・聴覚障害も転倒リスクを高めるので状態を把握します。
また、麻薬や睡眠薬、向精神病薬などを服用していると副作用によってふらつきやすくなります。
特に、抗パーキンソン病薬は、ADLを一定にコントロールするまで状態に差が生じ、日内変動も大きいため、身体状態の違いから転倒してしまうことが多くなります。

観察のポイント

アセスメントのポイント

次回は、転倒・転落のケアと予防のポイントについて解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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