【連載】高齢者の機能低下をアセスメント

第8回 麻痺・拘縮はなぜ起きる?

解説 吉崎順子

東京都健康長寿医療センター 救急外来次席

麻痺・拘縮は、ほかの廃用症候群等を招く要因にもなることから予防に努め、ADLを維持・向上させる支援が大切です。最初に、なぜ起こるのかを解説していきます。


どんな症状?

麻痺の症状と種類

脳・神経系に何らかの障害が生じ、随意運動ができなくなる状態が麻痺です。

運動神経に障害が生じた場合は運動麻痺、知覚神経に障害が起これば知覚麻痺となります。
しかし、一般的に麻痺といった場合には、筋収縮の低下による運動麻痺を指します。

運動麻痺には、次のような種類があります。

1. 失調性麻痺
平衡障害、協同運動障害によりバランスを崩しやすく、身体の姿勢保持が難しくなります。

2. 弛緩性麻痺
筋緊張や腱反射が低下あるいは消失してしまった状態で、身体の姿勢保持が難しくなります。

3. 痙性麻痺
筋緊張と腱反射が異常に亢進した状態で、弛緩性麻痺の後に多く出現します。
動作時に筋緊張が高まり、意に反した動きになったり、異常な姿勢になったりします。

こうした運動麻痺が出現すると、全身の活動性が低下し、それによって関節の可動域が縮小され、拘縮や褥瘡などの二次的障害の誘因となります。
それだけに、麻痺が認められる高齢者には二次的障害を予防し、ADLおよびQOLの維持・向上を目標に置いてケアを行うことが重要になります。

拘縮の症状と種類

一方、拘縮は筋力や腱、靭帯、関節包など関節を構成する組織の機能が何らかの原因で低下し、弾力性が失われ、関節可動域が制限された状態を指します。
曲がったままの状態となる屈曲拘縮と、伸ばしたままの状態となる伸展拘縮があります。

拘縮には、皮膚性拘縮、結合組織性拘縮、筋性拘縮、神経性萎縮などがありますが、高齢者の場合は、筋性拘縮が多くなります。

拘縮は、廃用症候群の一つで、特に下肢の拘縮はADLを低下させる要因となります。
また、褥瘡や肺炎、尿路感染症などの廃用症候群を二次的に引き起こすことにもなりかねないので、その予防は高齢者ケアの中でも重要です。

どうして起こるの?

麻痺が出現する主な疾患と要因には、脳血管疾患、脊椎損傷、パーキンソン病、糖尿病、神経炎、電解質異常などがあります。

また、拘縮の場合は、筋力低下、麻痺、さらに関節リウマチ、脳疾患、パーキンソン病などがその要因になります。
筋力低下など加齢によって生じる身体・精神状態の変化により、日常の活動量が減り運動機能が低下する、または疾患などが原因で寝たきりになる、など関節を動かす機会が減少し、関節可動域が狭くなってしまいます。
麻痺などによる筋緊張の高まりで、関節や筋肉が硬くなる場合もあります。

麻痺・拘縮に伴うのはこんな症状

  1. バランスを崩しやすい
  2. 姿勢保持が困難
  3. 異常な姿勢
  4. 関節が伸びない、曲がらない
  5. ADLの低下
  6. 褥瘡
  7. 肺血栓塞栓症

片麻痺のある患者さんがベッドへの移動で脱臼してしまった事例

80歳代の男性・Bさんは、脳梗塞で入院してきました。
右片麻痺が見られたものの認知能力の問題や失語はなく、コミュニケーションは取れる状態でした。
立位保持が困難で移動は車椅子を使用。床上での早期リハビリを実施し、良肢位保持、体位変換などを行っていました。
高度な拘縮は見られず、排泄は全介助ながらトイレで行うなど比較的状態は良好でした。
その日は、車椅子での散歩を終えて病室に戻り、ベッドに移動する際、いつものようにBさんの両脇を抱えて身体を持ち上げ、ベッドに移しました。
そのときは何の訴えもなかったのですが、後日、患者さんから麻痺側の右肩に違和感があるとの訴えがありました。
レントゲンで確認をすると右肩を脱臼していることが判明。
移動時に起こったものと推測され、両脇を抱えて身体を持ち上げたことが原因の可能性があると考えられました。
麻痺や拘縮の患者さんの場合は、容易に脱臼や骨折をしてしまいます。
移動の際の介助方法には十分な注意が必要となることを、身をもって教えられたケースでした。
次回は、拘縮・麻痺の観察、アセスメントの仕方について解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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