【連載】高齢者の機能低下をアセスメント

【誤嚥性肺炎を予防】摂食・嚥下障害の観察・ケアのポイント

解説 藤崎寿美恵

東京都健康長寿医療センター 5階西病棟主任

解説 最上由紀子

東京都健康長寿医療センター 5階西病棟次席


【目次】


誤嚥性肺炎の原因と症状

摂食・嚥下障害に付随して起こる可能性のある誤嚥性肺炎の原因と症状について解説します。

誤嚥性肺炎はどうして起こるの?

一番の原因は加齢による機能低下と抵抗力の低下です。
口腔、咽頭、食道などの嚥下筋力が低下して、食道に運ばれるべき食物や水分、唾液などが誤って気管に入ってしまい、

また、呼吸筋の低下によって、口腔内の細菌や唾液が少しずつ気管内に吸引されていきます。
口腔内に残っている食物残渣や、義歯に汚れが付いていると、それが細菌繁殖の巣窟となります。
唾液の分泌も少なくなっているので、口腔内はさらに細菌が発生しやすい状況となっています。
それでも成人なら肺炎を起こすことはないのですが、特に免疫力が低下している高齢者では、肺炎を起こしやすい条件となります。

脳血管障害や変性疾患などの神経疾患、認知症、胃切除後や食道逆流現象などの胃・食道疾患、腫瘍性疾患、中枢神経作用薬などの薬剤、寝たきりでADLの低下している高齢者なども、肺炎の起こりやすい条件です。
歯を失うことによる咀嚼力の低下、味覚低下、咽頭・声門上部の知覚低下、気管の防御機能の低下、注意・集中力の低下などによる摂食・嚥下機能の変化も、嚥下障害を引き起こしやすく、肺炎の発生に関係します。

誤嚥性肺炎の原因

誤嚥性肺炎はどんな症状?

誤嚥性肺炎は、口腔内の雑菌を含んだ食べ物や唾液、喀痰が気管へ入ることにより起こる肺炎です。
誤嚥すると、通常は気管支や肺の粘膜の繊毛運動により、むせるなどして食物を自然に排泄します。

しかし、高齢者の場合は防御機能や抵抗力が低下しているので、口腔内や咽頭に付着する常在細菌が気道に入ると排泄できずにそのまま残り、肺胞が炎症を起こして肺炎になります。
寝ているときに唾液を誤嚥する不顕性誤嚥による肺炎も同じ原因で起こります。

また、口から物を食べた場合だけでなく、胃や食道からの逆流によって、胃の内容物を誤嚥して起こる肺炎もあります。
この場合は、逆流性食道炎などのように胃や腸管自体に問題があったり、経管栄養を注入するときの体位や腹部の圧迫などが原因として考えられます。

こうした誤嚥性肺炎による死亡者のうち、約90%が65歳以上の高齢者といわれています。
一般に、肺炎の特徴的な症状には、高熱や咳、痰、息切れなどがありますが、高齢者の場合、炎症性の反応も低下しているため、微熱程度の発熱だったり、普段と変わらない咳や軽度の呼吸困難、食欲不振など、非定型的症状を呈することが多くあります。

日頃の様子とのちょっとした変化にいち早く気付くことが早期発見のポイントです。

【誤嚥性肺炎の症状】

  1. むせる
  2. 咳や痰が増える
  3. 痰が絡んだような声になる
  4. 「食べたい」という欲求はあるが食べられない、あるいは食欲が低下する
  5. 発熱する
  6. 呼吸状態が悪くなる
  7. 元気がない
  8. 意識が朦朧としている

※中には食事中にむせなくても誤嚥している場合があるので、注意が必要

摂食・嚥下障害の観察とアセスメント

嚥下障害の疑いがあるかどうかを見る

誤嚥をするからといって、必ずしも肺炎になるわけではありませんが、抵抗力が低下した高齢者では、肺炎になる率は高いと思われます。
そこで、まずは次のような点をアセスメントして、嚥下障害が疑われる場合には耳鼻科でしっかり機能評価を受け、食形態などの指示をもらいましょう。
耳鼻科の専門医による嚥下機能評価として、当センターではパルスオキシメーター、改訂水飲みテスト、食物テスト、頸部聴診法、超音波診断、嚥下前・後のX線撮影検査などを組み合わせて嚥下評価を行っています。

むせがあるかどうか

まず嚥下の前か後か、嚥下中なのか、どんなときにむせるのかを観察します。
前にむせるのは、舌の運動麻痺などが考えられ、口腔内に残っている食物が気管に入り誤嚥が起こります。
また、嚥下時に気道がしっかり閉じないと、誤嚥が起こります。
嚥下後にむせるのは、気管口周辺に残っている食物を吸い込んでしまうからです。

咳や痰が増える

特に夜間の咳や痰の増量は要注意です。
食事中から咳が出始め、食後も続いていることもあります。

痰が絡んだ声になる

Wet hoarseness(湿性嗄声)といって、うがいをしているようなゴロゴロといった声になっている場合は、食物残渣が咽頭に流れ込んでいることが疑われます。

口腔内に食物残渣があるか

嚥下機能が低下してくると、口腔内に食物が残りやすくなります。

食欲低下

普段の食事の状況と違っているか、十分に観察することが大切です。
例えば、食欲が低下してきた、食事に時間が掛かりすぎる、軟らかいものばかり食べる、お茶を飲まなくなったなど、食事の摂取状況に注意しましょう。

体重の減少

体重の減少や、やせ傾向といった健康状態を観察することも大切です。
高齢者の場合は、体重が減少したことで肺炎に気付くこともあります。
そのほかの身体所見としては、意識状態、呼吸状態、ADLなどを把握しておきます。

バイタルサイン

発熱や呼吸状態のデータはしっかり把握し、繰り返す発熱は肺炎を疑います。また、痰の量や性状なども観察します。
ゼーゼーという呼吸音が聞こえるなども見逃せないポイントです。
普段から呼吸音を聴取しておくことが大切です。
以上のアセスメントや嚥下機能評価によって、摂食・嚥下障害が認められた患者さんに対しては、摂食姿勢や介助方法など食環境の指導、食形態を中心とした食内容の指導、摂食機能訓練を行っていきます。

摂食・嚥下障害のケアと予防のポイント

誤嚥時の対応は早急に!

誤嚥したと思われた場合、むせることができれば、気道に入ったものを吐き出すことができるので、そばにいる人がすぐに軽く背中を叩きます。

それでも吐き出すことができず苦しんでいるときは、病棟であれば吸引器で吸引します。
近くに設備がない場合はハイムリック法を実施したり、さらに強めに背中を叩きますが、高齢者は骨がもろくなっているので、あまり強く叩きすぎると骨折する可能性もあり、力の入れ具合には注意が必要です。
叩くポイントは、肩甲骨の間あたりを中心に行うことです。

むせがひどい場合は、その時点で食事を中止します。
むせが治まったら吸引や肺の音を聴診して、気道に食物が残っていないかを確認します。
また状態に応じて食事形態を変更するなどの対処をします。
誤嚥性肺炎の場合には、経口摂取はもとより経管栄養も中止して抗菌薬を投与するとともに、点滴による補液を行います。

食事時にむせが起こりやすい原因としては、不安定な姿勢、開口状態のままの嚥下、食形態の不適切さ、一口の量が多すぎる、口で呼吸している、などが考えられます。
何が原因かを確認し、これらを改善していくことが予防にもつながります。
向精神薬、睡眠薬などの薬剤が原因であれば、医師の指示に基づきその薬剤を中止・減量することもあります。

適切な食形態・介助方法で誤嚥を防ぐ!

食形態は基本的に嚥下機能評価に基づいて決定されますが、その形態が実際に患者さんに合っているかどうかの観察も大切です。
一般的に飲み込みやすく嚥下しやすい食べ物、逆に嚥下しにくいものを、表にしてみました。

適切な食形態・介助方法

当センターでは嚥下訓練の導入食として、ゼリー食やゼリー食とブレンダー食をセットしたお試し食があります。
どのような形態の食事にするかは、患者さんの様子をみながら進めていきます。
食事介助において気を付けたいことは、まずは環境の整備です。
患者さんが食事に集中できるように、静かで落ち着いた環境を整えましょう。

また、食べ物が口に入っているときは、話しかけてはいけません。
急がせたり、慌てさせないように、患者さんのペースに合わせて嚥下したことを確認しながら介助することが大切です。
次に食事介助時の体位の工夫も重要です。
起座位または上半身をやや高くした体位とし、身体がずり落ちないように、足側もベッドアップをするか、膝の下に枕を入れて固定します。

顎を引いた状態で経口摂取できるように、枕などを利用して頭頸部を固定することもあります。
また、腰が曲がっている円背(えんぱい)の高齢患者さんの場合は、そのままベッドに座ると前のめりになってしまうので、枕などで背部、両脇、頭部などを支えて、食べやすい角度を作ります。
食後30分は上体を起こしておきます。座位保持が可能であれば、1~2時間座っていることが理想とされています。
利用する食器にも配慮が必要です。

スプーンはティースプーンぐらいの大きさで、浅く平たいものが最も安全といえます。
そして一口入れたら、飲み込めたかどうか咽頭で確認しながら食事を進めていきます。
途中で、不安なら患者さんに「あー」と声を出してもらいましょう。
うまく声が出れば大丈夫。出ないようなら誤嚥の可能性があります。
患者さんの顎を引くと、気道が閉じるので誤嚥しにくくなります。

口腔ケアが誤嚥性肺炎発生率抑制のカギ!

口腔内の細菌数を減少させるためにも、経口摂取している人はもちろん、そうでない人にとっても口腔ケアは重要です。
1回当たりの所要時間は短くてもよいので、毎日数回行うことが大切です。
口腔ケアによって、肺炎の発生率が40~45%も減少したという調査結果があるなど、誤嚥性肺炎の予防では、口腔ケアが非常に大きなウエイトを占めています。

ケアの実際としては、舌苔の細菌が肺炎の原因となることもあるので、舌苔を舌ブラシや歯ブラシで取ります。
舌にこびりついていて取りにくい場合は、口腔内を保湿し軟らかくなってから取り除きます。
比較的取りやすいようであれば、スポンジブラシを使用しても構いません。
唾液の分泌が多く口腔内が潤っている患者さんであれば、洗浄綿で拭くだけでもよいでしょう。

しかし、1日1回はブラッシングすることをお勧めします。
歯磨きには、ブラッシングすることで刺激を与え、唾液を出しやすくする働きもあるので、食事前後の口腔ケアは大切です。

食事前の口腔ケアでは、舌運動を活発にするためにもアイシングマッサージが効果的です。
あまり唾液が出ていないようであれば、唾液腺マッサージを行うなどの対応が必要です。
STや摂食・嚥下障害看護認定看護師にコンサルテーションするのもよいでしょう。
なお、嚥下訓練は口腔ケアの前提条件です。

嚥下訓練には食物を使わない間接訓練と、食物を用いる直接訓練があります。
間接訓練には摂食嚥下体操、口腔ケア、姿勢保持訓練、呼吸訓練、筋訓練などがあります。
直接訓練には嚥下訓練、摂食訓練、咀嚼訓練、水分摂食訓練などがあります。

摂食・嚥下障害ー在宅へ向けての視点

摂食・嚥下障害がある患者さんが在宅へ戻る際に、どんなことに気を付ければよいのか、どんなことを家族に伝えたらよいのかを紹介します。

脱水や低栄養に陥りやすいことを伝える

1日に必要なエネルギーがすべて経口で摂取できるようになればよいのですが、摂食・嚥下障害があるとスムーズにはいきません。
必要なエネルギーをどのような方法で摂取するか、すべて経口摂取か、経鼻経管栄養や胃瘻からの注入かなどは、患者さんの摂食・嚥下障害の程度にもよりますが、本人の意思も含め、家族と医師が十分に話し合うことが大切です。
エネルギー摂取の方法が決まったら、看護師と栄養士が協力して、食べられる食品の取り方や調理の方法、水分の摂り方を説明します。
家族の負担を軽減するために栄養補助食品などを使うこともあります。
摂食・嚥下障害があると誤嚥、窒息、脱水、低栄養に陥りやすいことを、理解してもらうことも大切です。
その上で、観察する項目やどのように変化したらどこに連絡をするか、誤嚥や窒息時の対応方法についても説明しておきます。

≪介助者への説明項目≫

  1. 嚥下障害に伴う誤嚥の危険性
  2. 嚥下しやすい体位、食事中の観察
  3. 食材の選択、調理方法
  4. むせ込んだときの対処法
  5. 食欲、体温、呼吸状態、排便状態などの日常の状態観察
  6. 発熱、嘔吐などの状態変化時および緊急時の連絡方法

食形態の改善によって誤嚥性肺炎の再発を防いだ事例

誤嚥性肺炎の既往のある80歳の男性・Cさんは嚥下機能の低下があったために、これまでにも誤嚥性肺炎でたびたび入退院を繰り返していました。
自宅では市販のゼリー食を食べていましたが、発熱したため、誤嚥性肺炎の疑いで緊急入院となりました。
食事を止めて、抗菌薬と点滴の補液による治療で、3日後には症状は改善しましたが、特にこの患者さんの場合は、誤嚥してもむせないために、発熱するまで肺炎であることに気付かなかったようです。
熱も下がり、再びゼリー食から食事を開始しましたが、ゼリー食だと食欲が出ない様子で、試しにブレンダー食に替えてみたところ、食欲も戻り、むせもなくしっかり飲み込むことができました。
その後、自宅に戻ったときの食形態についてCさんの妻から相談を受けました。
「ゼリー食はおいしくない」「Cさんの食が進まないことがある」ということでした。
自宅にはまだゼリー食が残っていて、奥さんはそれを食べさせたかったようですが、奥さんと同じ食事をミキサーやすり鉢ですりつぶして、Cさんに食べてもらうのはどうかと提案しました。
市販のゼリー食は味が均一になりやすいため、食欲が低下する場合もあり、食べる楽しみも減ってきます。
ミキサーやすり鉢ですりつぶすブレンダー食なら、家庭の食事を利用できるので味覚も広がります。
患者さんの欲求も満たすことができ、QOL向上につながったと思われます。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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