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【連載】急変を見逃さないためのフィジカルアセスメント

SBAR(エスバー)|分かりやすい報告の仕方

目次

分かりやすく相手に伝える手法 SBAR(エスバー)

フィジカルアセスメントも最終回となりました。
これまで、フィジカルアセスメントのスキルについて、『意識レベル』『呼吸』『脈拍』『血圧異常』『ショック』とお伝えしてきました。
最終回は、これらの異常を「分かりやすく相手に伝えるスキル」についてです。私たち看護師は、受け持ち患者の状態変化をリーダーナースや医師へ報告することが頻繁にあります。
しかし、その報告の方法によっては相手に上手く伝わらず、ジレンマを感じるだけでなく患者にとって不利益を被ることもあり得ます。

今回お伝えするスキルは、アメリカのワシントンDC州にあります、プロビデンス病院の看護師の教育方法として用いられている『SBAR(エスバー)』という手法です。
この『SBAR』は、医療安全対策として多職種が長年の研究結果をもとに作成した『TeamSTEPPS』というプログラムの中の一つを切り取ったものです。つまり、「分かりやすく相手に伝えること」は当然「医療安全」にも関与していることであり、患者の安全・安楽を提供する看護師にとっては、欠かせないスキルと言えます。

SBARの構成

SBARのそれぞれの意味は以下の通りです。

  1. 状況(Situation)
  2. 背景(Background)
  3. アセスメント(Assessment)
  4. 提案(Recommendation)

※新人看護師でも使えるように、または焦ってしまって非効果的な報告とならないようにということから、SBARの前に「報告する前に」という準備段階があるので、正確には5つの要素で構成されています。

医師へ報告する前に、本当に報告が必要なのか?を考える

患者の状態は、日々少しずつ変化している可能性があります。独りよがりの「おかしい」ではなく、他の看護師の観察した情報や最近の経過、医師の治療方針など、あらかじめ再確認しておきます。

これらは、報告する直前に確認すると言うよりは、勤務開始時に確認しておきたい事項とも言えますが、あえて項目を挙げるとすれば、以下のような項目を再確認しましょう。

  1. カルテからの情報収集にてこれまでの経緯を確認
  2. 現病名は?アレルギーや既往歴は?
  3. 経過の過程と、前のシフトなど近い過去のアセスメントはどうだったか確認
  4. 報告前に必要物品の準備として、カルテ、投与している薬剤、検査結果など

最初に伝えることは、起こっている状況 Situation(S)

大事なことは、『起こっている状況 Situation(S)』を一番最初に伝えることです。
起こっていることとは、「血圧低下」「頻脈になっている」ということです。
私たちがよくやりがちなミスは、2番目に伝えましょうとされている『背景 Background(B)』をダラダラと伝えてしまうことです。
この『背景 Background(B)』を長々と話している間に、聞き手は何が問題なのか分かりにくくなります。
相手の顔の見えない電話の場合は、特に聞き手を混乱させてしまいがちです。
参考例としては、以下のように伝えます。
「○○さんが呼吸困難になっているので報告します」
また、医師の指示でSpO2 94%以下コールという指示があった場合は、以下のように伝えます。
「○○さんのSpO2 94%以下でコールの指示があり、現在SpO2 91%が持続しています」
このように、最初に何が起こっているのかを伝えることで、聞き手は「何を伝えられているのか」ということが分かりやすくなります。
  しかし、これだけでは事実が分かりにくいので、収集した情報やデータつまり根拠、もしくは自分が気になる事を伝えます。 
「バイタルサインは、血圧・・・脈拍・・・尿量・・」
「SpO2が急激に低下しています」
「脈拍が急激に上昇しています」
「突然、胸痛を訴えだしました」

次に伝えることは、その患者に関連すること Background(B)

次に伝えることは、情報やデータ、気になること以外の情報について伝えます。
「四肢がダラリとしていて、はっきり話せません」
「皮膚は暖かく 湿潤しています」
「酸素投与は5Lフィスマスクで行っています」
また、夜間休日など、担当以外の医師へ報告する場合、以下のような情報も伝えます。
「この患者は、慢性呼吸不全で在宅酸素使用中です」
「慢性腎不全で人工透析を行っている患者です」
 

実際に患者を看ている看護師の考えたことAssessment (A)

情報やデータ、患者背景を伝えた後、看護師が「こうではないか」と考えたことを伝えます。
  実際に患者の状況を見ているわけですから、より詳しくアセスメントできるはずですね。 
参考例としては、以下のように伝えます。
「心筋梗塞の発作を起こしているようです」
また、何が起こっているのか分からない場合でも、以下のように伝えることでも可能です。
「患者の状態は徐々に悪くなっています」
「問題は何か分かりませんが、患者の状態は悪化しています」
  特に、状態が悪くなっている場合や急変している場合は、その重大性を伝えられることが必要です。

大事なことは看護師としての提案を伝える Recommendation(R)

最後に、看護師が必要だと考えることを提案します。
私たち看護師は、患者のそばにいるわけですから、医師が到着するまでにできることが沢山あります。
参考例としては、以下のように伝えます。 
「この患者をリカバリールームへ移動しておきます」
「何か検査の準備をしておきますか? 採血?画像?心電図?」
また、看護師がコールしても、医師が診察に来てくれないというジレンマも耳にします。
こちらの報告の方法を変えると同時に、何をして欲しいのか以下のように率直に伝えてください。
「すぐに患者を診にいらしてくださいませんか」
加えて、医師の診察や処置が終了した後は、以下のことを確認します。
「バイタルサインは、今は4時間ごとですが1時間ごとの観察として良いでしょうか?」
「次の状態変化時のDrコールは、どの状態としますか? 今は血圧80mmHg以下コールの指示ですが、現状からみて100mmHg以下コールとしてよろしいでしょうか?」

フィジカルアセスメントの重要性

フィジカルアセスメントには、その情報を収集するためのスキル(基礎看護技術)とその情報を評価する能力(アセスメント能力)、さらに「おかしい」と気付いた後の対処(看護技術や蘇生技術)、報告するスキル(今回紹介したSBARが一例)などがあります。
どれか一つができても、またはどれか一つが欠けても患者にとっての安全・安楽は障害されてしまいます。
私たちは常に能力やスキルを研鑽し、看護師としての責務を担えるようにしなければなりませんね。

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