【連載】高齢者の機能低下をアセスメント

【高齢者の脱水・食欲不振】アセスメントと予防・ケアのポイント

解説 藤崎寿美恵

東京都健康長寿医療センター 5階西病棟主任

解説 最上由紀子

東京都健康長寿医療センター 5階西病棟次席

脱水・食欲不振は高齢者によく見られる症状の一つです。
器質的要因、心理的要因を考慮して、重篤化を防ぐことが大切です。


【目次】

症状の特徴

脱水ってどんな症状?

 脱水とは、体内への水分の摂取と排出のバランスが崩れ、体内で水分の不足が起きている状態です。体液は細胞内液が3分の2、細胞外液が3分の1の割合になっていますが、高齢者では特に細胞内液の減少が顕著となります。

 また脱水症には、体内の水が失われて血液中のナトリウムの量が多くなった水欠乏型(高張性脱水)と、体内のナトリウムが失われ、細胞外液の不足が著しいナトリウム欠乏型(低張性脱水)、水とナトリウムの両方が不足した混合型(等張性脱水)の3種類があります。高齢者の場合は、このうち混合型が多いといわれています。

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 高齢者は生理機能的に脱水になりやすく、いったん脱水になると、意識障害を来したり、基礎疾患の悪化を招き、回復に困難を伴うことがあります。脱水による血液の濃縮やヘマトクリット値の上昇では、脳血管障害、虚血性心疾患といった高齢者の急死の主たる原因となる疾患を誘引する可能性があるので、特に注意が必要です。

 脱水の主な症状としては、

 ・口渇
 ・尿量の減少
 ・舌、皮膚粘膜の乾燥
 ・意識障害

 などがあります。

 しかし、高齢者は自覚症状に乏しく、皮膚・粘膜の性状から客観的に把握することも困難なため、脱水に気付くのが遅れ、動けない・意識障害などの症状が出てから緊急で運ばれてくる事例も少なくありません。また、水分だけでなくナトリウムも欠乏するため、活気がなく、日中でも寝ていることが多くなります。

 このほかには、血圧低下、頻脈、倦怠感、脱力感、発熱、悪心・嘔吐、不穏状態、痙攣、せん妄などの症状を呈します。高齢者の特徴は、成人と比べて症状が非定型的といわれています。

食欲不振ってどんな症状?

 一方、食欲不振とは、食物を食べたいという欲求が加齢または疾患、環境の変化などにより、抑えられた状態をいいます。しかし、その程度は軽症のものから重症のものまでさまざまです。高齢者では、軽い食欲不振の訴えから検査の結果、重大な疾患が発見されることもあります。

 食欲不振の症状としては、食事摂取量の低下だけでなく、

 ・水分摂取量の低下
 ・悪心、嘔吐
 ・胃もたれ
 ・胸やけ
 ・体重の減少
 ・便秘
 ・活気がない

 といった症状が出現します。

 脱水や食欲不振における高齢者の特徴は、本人にあまり自覚症状がない、あるいは自覚があいまい、寝たきりや認知症の場合では症状を自分で訴えられないところにあります。

 そのため、ひと通り検査をしてから、脱水または食欲不振と診断される場合も多いのです。例えば、食欲不振が続いていても、訴えがないため受診が遅れ、発見されたときにはがんの末期であったり、重篤な疾患につながっているケースがあります。

 脱水の場合も同様で、重篤な状態になって初めて受診するという人もいます。

脱水・食欲不振に伴うのはこんな症状

脱水

 1. 口渇、舌・皮膚粘膜の乾燥
 2. 尿量減少
 3. 意識障害
 4. 活気がなくなる
 5. 傾眠
 6. 血圧低下

食欲不振

 1. 悪心・嘔吐
 2. 胃もたれ、胸焼け
 3. 体重の減少
 4. 便秘

発生要因

脱水はどうして起こるの?

 脱水の発生要因として、まずその前提に、高齢者は体内水分量が減少しているため、容易に脱水に陥りやすい状態にあることを理解しておく必要があるでしょう。

 1. 食欲不振によって、食べ物からの水分摂取量が減少する
 2. 口渇に対する感受性が低下し、水分摂取行動に至らない
 3. ちょっとした風邪や発熱により発汗して体液が失われる
 4. トイレ介助や排泄介助が必要なため、人に遠慮して自ら水分を控える
 5. 腎臓機能低下に伴い、老廃物を排泄するためにより多くの尿排泄が必要となり体液を失う

 ことなどでも生じる可能性があります。

 また、下剤や利尿薬などの薬剤の影響も見落とせません。

 例えば、大腸の内視鏡検査を行う場合、患者さんに下剤の使用に際して水分の必要性を十分に説明しても、高齢者の場合では説明の内容が理解できなかったり、聞こえていない、あるいは聞き間違いや思い込みなどによって十分に水分が取れず、脱水を起こすこともあります。

食欲不振はどうして起こるの?

 一方、食欲不振の発生要因としては、

 1. 義歯が合わない、もしくは義歯を外しているためにしっかり噛めない
 2. 顎の関節などの動きが老化により悪くなり、咀嚼が十分にできない
 3. 唾液の分泌量が減少して嚥下動作が阻害され、乾燥した食品や固形物が食べにくくなる
 4. 消化酵素が減少するため食べたものがなかなか消化されず、空腹を感じにくい
 5. 加齢に伴う視力の低下で「おいしそう」に見えない
 6. 嗅覚が鈍くなって臭いを感じにくいため、「食べてみよう」という欲求が起こらない

 などが考えられます。

 しかし、これら以外にも各臓器の機能が低下しているため、何が原因かはっきりしないことも多く、さまざまな要因が重複している場合があります。

 また、患者さん本人に食欲不振の自覚がなく、食べられないのは「老化のせい」だと思い込み、様子を見ているうちに体重が減ってきて、ようやく周囲が気付くというケースもあります。

ケアと予防のポイント

食欲不振の場合

 高齢者の場合、食欲不振に付随する症状として、嚥下障害があります。

 食べるときにむせるなど嚥下動作に問題があるために、食欲がなくなったという人もいます。しっかり噛むことができるか、飲み込めているかを観察し、嚥下障害があるようなら、食形態の工夫や食べるときの姿勢、食べさせ方などに注意します(摂食・嚥下障害については下記の関連記事を参照)。

【関連記事】
摂食・嚥下障害による誤嚥性肺炎はなぜ起こる?
摂食・嚥下障害--在宅へ向けての視点

 また、食べないことは栄養状態を悪くさせます。低栄養になると、皮膚が脆弱化し、褥瘡を発症しやすくなります。寝たきりなわけではなく、自分で寝起きできる患者さんでも、活動が低下し、同じ姿勢で長時間座ったままでいることで、褥瘡ができるケースがあります。

 さらに、検査で消化器に疾患が見られず、発熱もなく、その上歯もしっかりしている患者さんでも、急に食欲不振になることがあります。その場合は、患者さんの表情や、ベッドで寝てばかりいるなど活動性を観察します。

 動きが少ない、会話しているときの表情が乏しい等の症状が見られるときは医師と相談し、うつ状態を含めた精神疾患も考慮して本人・家族に説明したうえで精神科受診を考えます。精神科から処方された薬で、食欲が出てきたケースもありました。

脱水の場合

 脱水の場合は、まず医師の指示により補液の管理を行います。高齢者では輸液による長時間の拘束は苦痛が大きく、認知症がなくてもせん妄を発症するケースがあります。経口摂取が可能であれば、輸液を減少できるよう勧めていくようにしていきます。

 また、脱水症状のある患者さんの場合には、吸い飲みを準備しておき、食間に水が飲める環境にしておきます。水分補給の量によって輸液の量が変わることもあるので、飲水量を記録しておきます。水分のみを補給していくと体液が薄くなるので、塩分(電解質)や糖分をバランスよく取ることを忘れずに行うことも大切です。

 逆に腎・心機能が低下している患者さんの場合は、水分とともに塩分なども制限されているので注意が必要です。

 脱水を予防するために飲水を勧める場合も、疾患のために制限する場合も一日に飲める水分量を数字で伝えるだけではわかりにくいので、ペットボトルなどに入れて全体量がわかるようにするなど、患者さんや家族にわかりやすく示す工夫が必要です。また液体ではむせてしまう患者さんの場合には、お茶などをゼリーにしたり、とろみをつけるなど形態を変えることもあります。

食事環境の整備や食形態を工夫する!

 食事介助が必要な患者さんの場合は、一口当たりの量が多いと、むせやすくなるのでティースプーンのような小さめのスプーンで、一口ずつゆっくり口に入れていきます。

 食形態も舌でつぶせるくらい柔らかく調理したもの、すりつぶしたもの、とろみをつけたものなどさまざまあるので、その患者さんの嚥下状態に合わせた食形態を工夫します。

 さらに、食べてもらうための工夫は食形態だけではなく食事環境も大切です。複数の人と食事をする場を設けることで食欲への刺激になることがあるので、ベッド上で食事をするのではなく、デイルームで一緒に食べてもらうこともあります。

 逆に周りに人がいると気が散ってしまう患者さんの場合は、カーテンを締めるなど、食べることに集中できるような環境を整えます。うつ傾向の患者さんの場合は、無理に進めず本人のペースに合わせます。

口腔ケアは食前・食後に!

 口腔内の清潔を保つことは、食欲を増進させるためにもとても重要です。特に高齢者にとっては、全身ケアと同じくらい大切なことと認識しておくべきでしょう。

 食べる前に、まずアイシングなどにより舌をマッサージすると、唾液の分泌がよくなり、食べやすくなります。口腔ケアは食後も大切ですが、食欲増進のためにはぜひ食前のケアも心掛けてください。

 食後は、自分で歯磨きのできない患者さんには、歯ブラシや口腔ケア用のスポンジブラシを用いて、口腔内の汚れを除去します。義歯が必要な患者さんには、食事時は必ず装着するようにして、食後は義歯も洗浄します。

COLUM 高齢者に必要な水分とは?

 成人に必要な水分の摂取量は一日当たり2100mL。その内訳は、飲料水からがおよそ1200mL、食べ物からが700mL、その他代謝水が200mLとなっています。

 これに対して一日の排出量も2100mLで、尿として排出されるのが1200mL、便からが100mL、その他不感蒸泄が800mLです。

 しかし、加齢によって基礎代謝が低下し、複数の疾患を持つことが多い高齢者では、過剰な水分摂取によってむくみなどが現れることがあり、特に心疾患、腎疾患の合併症を持つ患者さんには注意が必要です。

 必要量の水分摂取方法は、食間に何回かに分けて摂取したり、水分の多い食品を取る、お茶あるいはスポーツ飲料を少量ずつ飲むようにします。

在宅に向けての視点

悪化のサイクルに陥らないよう注意喚起していますか?

 食欲不振の原因ははっきりしないことが多いのですが、食事が取れないことで水分が補給できずにいると、排泄にも影響が及んできます。それによって空腹感が薄れ、ますます食べられずに、脱水と低栄養につながっていくという悪循環に陥ります。

 そのサイクルを断ち切るためにも、水分はこまめにしっかり取るように指導します。便が出ない、嘔吐などの症状があるときは、病状が悪化している場合があるので、できる限り早期に受診を勧めます。

 脱水症状が出現している場合には、水よりも吸収が早いスポーツ飲料などを用いると効果的です。今はスポーツ飲料以外にも水+塩分+糖分の取れる商品が医薬品店で数多く販売されているので、日常から家族が準備しておくのもよいでしょう。

 規則正しい食生活の習慣を身に付けるのも、食欲を保つ上では大切です。一日に4~5回に分けて少量ずつ食べる、食べられそうなものから食べる、休み休み食べる、軽い運動や散歩をする、などの指導も有効です。

患者さんと家族を支える食事のアドバイス

 高齢者の場合は、白米よりもお粥の方が水分も取れ、嚥下障害のある人にも食べやすいので、在宅でもお勧めです。また、嚥下障害がある場合は食事に片栗粉でとろみをつけたり、すりつぶします。すりつぶした食事はその食品が何であるかがわからなくなってしまうので、介助をする場合は「魚の煮物ですよ」などと説明を加えるとよいでしょう。

 食事作りは毎日のことなので負担を感じないように市販品も紹介し、上手に取り入れてもらうように説明しましょう。食事に限らず、在宅での介護で家族の負担が大きくなると、継続させることが出来なくなります。患者さんとともに家族も支えていけるように、病棟の看護師はケアマネジャーや訪問看護師と直接話し合い情報交換していく必要があります。

 また場合によっては、地域の診療所の医師にもカンファレンスに参加してもらうなど、地域の医療スタッフとの連携を図り、現在の患者さんの状況を伝え、情報を共有していくことが在宅支援では大切です。

観察・アセスメントはここに注目!

精神的・心理的要素を含めたアセスメントが重要

 患者さん本人から「食欲がない」「食べられない」「喉が乾く」などの訴えは、そう多くはありません。

 看護師が「今日は元気がない」「トイレの回数が少ない」など、いつもと違う患者さんの様子にいち早く気付くことが早期発見の第一歩です。

 脱水において、一般に皮膚状態の観察は大切なポイントですが、高齢者の場合、もともと皮膚の乾燥があるにもかかわらず、目立って皮膚がかさつくなどの症状が出てきた時点で、かなり重篤だと考えたほうがよいでしょう。

 腕の皮膚をつまみ上げて放したとき、しわができたままの場合は脱水傾向にあります。腋下が乾いていないかの確認も大事です。
粘膜の状況としては、口臭がなく、口の中や唇の乾燥がなければ問題ありません。

 また、バイタルサインが安定しているか、急激な尿量の減少がないか、水分の出納のバランスが取れているかなども、しっかりとアセスメントしておく必要があります。

 水分出納バランスについては、患者さんからの聴取も必要ですが、当センターでは、訴えられない患者さんに対しては、おむつ交換時の排尿量も観察の目安にしています。

 自分の勤務時間中に一度も排尿していない、または回数が少ない場合は、水分の摂取量が足りていないと考えることもできますし、あるいは摂取量は足りているけれども、排尿することができないとも考えられます。その場合は腹部の張りなどを観察し、医師と相談の上、導尿も検討します。

 また、食事状況の観察は、患者さんの食欲が目に見えてわかる重要な要素です。食事内容や量、回数に気を付け、特に食べる量が減ってきた場合は、悪心や嘔吐、腹部膨満感、疲労感などの有無、義歯は合っているか、口内炎や舌の荒れがあるかどうかの口腔内のチェックも必要です。

 さらに、高齢者の食欲不振は器質的な障害だけでなく、心理的要素が原因となることが多いので、できれば患者さんが自宅ではどのように食事をしていたのか、住居環境や家族構成・家族関係などについても把握しておくとよいでしょう。

食欲不振になった患者さんに摂食・栄養指導を行った事例

 86歳の夫と二人暮らしの83歳の女性・Dさんは2カ月前に突然嘔吐し、1カ月前に再び嘔吐したため、食欲不振と倦怠感を訴えて当センターを受診しました。

 診断結果は便秘で、その日は下剤を処方されて帰宅しました。その後、嘔吐は落ち着いたものの、食欲不振は変わらず持続し、3週間で4kgも体重が減少したため、精査目的で入院しました。

 検査では、腹部超音波、胃カメラによって胃部びらんと十二指腸狭窄と診断されましたが、CT、MRIなどでは、狭窄の原因となる明らかな圧排は見つかりませんでした。上部消化管造影では、食物の通過異常は認められました。

 そこで、まず食事摂取が困難な原因をアセスメントするため、Dさんに食事の話をしたときの表情、言動を観察し、併せて夫と近所に住む長女から話を聞きました。すると、「3カ月前から上腹部に違和感があり、食べ過ぎると気持ち悪かったため、食べずにいたら食べられなくなった」という言葉が聞かれました。

 このことから、嗜好を取り入れ、食べやすい形態にするといった食事の工夫や、食事量、食事時間、食事回数、食事時の体位などについてDさんに話を聞きながら看護計画を立てることにしました。

 当初、Dさんには脱水症状が見られたため、点滴で補液を行うとともに、Dさんのペースに合わせて三分粥から少しずつ経口食を開始。悪心・嘔吐をチェックしながら、五分粥、七分粥と進め、最終的には点滴をやめて全粥へと移行しました。

 その後、高齢者は食欲の低下から脱水を引き起こしやすいことを本人や夫、長女に説明し、退院後の栄養指導を行いました。

 高齢者の介護は高齢者であることが多く、入院時の情報不足や家族の介護困難などの問題もあります。今回のケースは近くに住む長女の協力を得て、入院前の生活背景の情報収集から退院指導につなげることができたケースでした。

(『ナース専科マガジン』2011年2月号より転載)

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