【連載】不整脈のモニタリング

疾患で特徴的な波形(QSパターンや異常Q波、冠性T波、STの変化)

解説 曽原 寛

葉山ハートセンター 不整脈センター部長

不整脈の原因は加齢のほかに、遺伝的な疾患や心疾患があります。こうした疾患の心電図では、特徴的な波形がよくみられます。
心電図では、波形の異常と不整脈が合わさった波形が描かれることもあるので、不整脈とともに波形の異常も把握しておきましょう。

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞では、典型的な波形の異常を示します。また、経時的な波形の変化がみられます(図1)。特徴的なのは、心筋壊死を示すとされる異常Q波や冠性T波、STの変化です。また、12誘導の波形の異常から、梗塞した部位がわかります(下表)。ただし、梗塞のごく初期では、心電図はまだ正常を示すことがあります。また、心内膜下梗塞では異常Q波がみられないこともあります。

なお、心筋梗塞や狭心症など虚血性心疾患では、不整脈がみられやすく、場合によっては心室細動(VF)を起こすことがあり注意が必要です。

急性心筋梗塞のカテーテル治療後でも注意

急性心筋梗塞のカテーテル治療後、血流が再開しても、その後のリハビリなどで心室細動を起こした例があります。その場合、再梗塞や壊死心筋の破裂の可能性があります。特に心筋の破裂は、梗塞部位が小さいほど、正常な心筋範囲が大きいためにかえって壊死した心筋に負担がかかり、リスクが高まるようです。重症度の高くない心筋梗塞だからといって、軽視しないようにしましょう。

急性心筋梗塞の心電図

12誘導の波形

QSパターン:梗塞巣が広範囲

外膜に達する梗塞が広範囲の場合、外膜に刺激が伝わることを表すR波がなくなり、QとS だけとなる異常Q波をQSパターンといいます。

QSパターン説明図

陳旧性心筋梗塞

時間の経過した心筋梗塞を陳旧性心筋梗塞といいます。治療後も異常Q波は残りますが(図3)、この異常Q波が12誘導心電図のどこに認められるかで(下表)、心臓のどの部位に梗塞が起こったか、責任冠動脈※1や合併症としての心室瘤※2の存在などが推測できます。
※1責任冠動脈……狭窄から閉塞を起こした冠動脈。
※2心室瘤……心筋梗塞によって心筋が薄くもろくなり、瘤状に突出した部分。前壁梗塞例での心尖部に好発し,再疎通療法未施行例に多いとされている。瘤壁は心筋梗塞巣の般痕化にともない収縮能を失い、心機能の低下をきたす。

心筋梗塞発症1年以降
陳旧性心筋梗塞の心電図

梗塞部位と心電図変化の関連 12誘導心電図

異常Q波

異常Q波は心筋梗塞のほかに心筋症、心筋炎、左室肥大などでもみられます。

狭心症

狭心症には、主に労作性狭心症と異型狭心症があります。労作性狭心症は、労作によって一過性の心筋虚血状態となり、胸痛をきたす疾患です。心電図では、発作時にST部分の水平降下を示します(図4)。
異型狭心症では、安静時に狭心発作を起こし、心電図ではST上昇がみられます。冠動脈のスパズム(攣縮)が原因とされています。なお、最近3週間以内に発症した狭心症、あるいは安静時に胸痛発作が起こる狭心症のことを不安定狭心症といい、心筋梗塞に移行しやすく注意が必要です。

狭心症でみられる波形 狭心症でみられる波形説明図

僧帽弁狭窄症(MS)

弁膜の機能障害である心臓弁膜症のひとつで、約3割を占めます。
僧帽弁口面積が減少し、拡張期に左房から左室への血液流入が阻害されるため、心拍出量が減少します。そのため、労作性呼吸困難が症状として現れます。また、心房細動を伴うと、脳梗塞などの塞栓症を起こすリスクが高まります。このMSでも初期に特徴的な波形がみられます(図5)。
ちなみにMSは、リウマチ熱による心臓弁膜症に最も多いとされています。

MSの初期でみられる波形MSの初期でみられる波形説明図

心筋症と不整脈

拡張型心筋症、肥大型心筋症でも、心室頻拍、心房細動を引き起こすことがあります。そして、心房細動を起こすと脳梗塞などの塞栓症になるリスクが高くなります。

電解質異常

電解質(カリウム、カルシウム)の異常が、心筋細胞の再分極に影響を与えるため波形が変化します(図1)。カリウムが高くなると、心室頻拍、心室細動を引き起こす可能性が高くなります。

図1 電解質異常による波形の異常 電解質異常による波形の異常説明図

電解質異常による波形の異常説明図②

STEP UP  ST部分の異常

ST 部分の異常は今まで解説した心筋梗塞、異型狭心症、低カリウム血症のほかに心肥大、低体温(深部体温が35℃未満)などでもみられ、それぞれ特徴的な波形となります。

ST部分の異常説明図

>>次ページは「WPW症候群」「QT延長症候群」等について解説します。

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