【連載】看護師のための経腸栄養講座

第2回 経腸栄養剤の種類と分類

監修 日本コヴィディエン株式会社

シングルユース医療機器の製造及び販売、並びにこれらに関連する一切の事業

まとめ

1.経腸栄養剤は窒素源(蛋白質)の分解の程度で分類される。その他にも、栄養剤の剤型(粉末状、液状)、医薬品か食品扱いなどを基準とした分類もできる。
2.栄養剤の種類では一般タイプ、高濃度低濃度タイプ、病態別栄養剤、半固形化栄養剤などの項目も挙げられる。(病態別栄養剤、半固形化栄養剤に関しては、別回に解説する。)
3.経腸栄養剤は、天然食品を原料とした天然濃厚流動食と、天然食品を人工的に処理もしくは人工的に合成したものからなる人工濃厚流動食に分けられる。さらに人工濃厚流動食は、窒素源の違いにより消化が必要か否かが異なり、半消化態栄養剤(タンパク質)、消化態栄養剤(ペプチド)、成分栄養剤(アミノ酸)に分類される。
4.通常の栄養剤は1kcal/mlに調整されている。これより濃い高濃度タイプの栄養剤(1.5,2.0kcal/ml)は現在20種類以上市販されている。高濃度タイプは水分量を少なくして高カロリーの補給が可能であるため、水分制限のある病態用の栄養剤や経口摂取のサプルメント的に使用される。半固形化栄養剤の中には低濃度タイプ(0.75kcal/mlなど)が市販されている。これは栄養剤のみで水分補給が十分になるように工夫されている。


▼経腸栄養について まとめて読むならコチラ
経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント


はじめに

 一般的に、経腸栄養剤は窒素源の分解の程度で分類さますが、その他にも、栄養剤の剤型(粉末状、液状)、医薬品か食品扱いか、などを基準に分けることができます。栄養剤の種類としては一般タイプ、高濃度・低濃度タイプ、病態別栄養剤、半固形化栄養剤などが挙げられます。今回は、まず一般的な分類に関して述べ、その他の剤型、医薬品、食品分類、高濃度・低濃度タイプの栄養剤について説明を加えます。

 近年、疾患に応じて、その病態にふさわしい栄養素や成分を配合し、それぞれの病態に応じた経腸栄養剤が販売されています。このような病態別経腸栄養剤として、肝不全用、腎不全用、糖尿病用、慢性呼吸不全用、免疫能の増強をはかるImmuno-enhanced diet(IED)などが本邦で市販されています。 また、胃食道逆流を予防する目的で開発された半固形化栄養剤もありますが、この病態別および半固形化栄養剤は、別回に分けて解説します。

一般的な経腸栄養剤の分類

 経腸栄養剤は天然食品を原料とした天然濃厚流動食と、天然食品を人工的に処理もしくは人工的に合成したものからなる人工濃厚流動食に分けられます(表1)1)2)。タンパク源、窒素源の違いで、例えば、乳タンパクや卵タンパクを使用した場合は、天然濃厚流動食となるが、乳タンパクをカゼインと乳清タンパクに分けて、これらを原料とした場合は、人工濃厚流動食となります。

窒素源による経腸栄養剤の分類

 人工濃厚流動食は、窒素源の違いによって、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤に分類されます。半消化態栄養剤(polymeric formula)は、窒素源がタンパク質であり、消化の過程が必要です。

 これに対し、消化態栄養剤(oligomeric formula)はアミノ酸と低分子のペプチド(ジないしはトリ)を窒素源とし、消化の過程を必要とせずに吸収されます。成分栄養剤(elemental diet (ED))は窒素源がアミノ酸からだけなる栄養剤で、やはり消化の過程が必要はありません。半消化態、消化態栄養剤では窒素源の違いはありますが、糖質や脂肪の素材は同様で、消化態栄養剤の糖質や脂肪が半消化態栄養剤よりも吸収されやすいということはありません。

天然濃厚流動食

 天然濃厚流動食はタンパク源が天然食品由来であるため、通常の食事と同様の消化吸収能を要する場合に使用します。長期間の静脈栄養管理後や炎症性腸疾患などにより小腸絨毛が萎縮しているような、消化吸収能が劣っている症例には適しません。浸透圧は500-600Osm/L程度で、人工濃厚流動食の半消化態栄養剤に比較すると、やや高い傾向があります。粘度に関しては、半消化態の粘度が7-8mPa・sに比較して、天然濃厚流動食は30-40mPa・sとやや粘度が高く、経管栄養時の速度調節がやや難しいといえます。天然濃厚流動食は味が良いといわれています。

 現在、市販されている天然濃厚流動食には、オクノス流動食品A、オクノス流動食品C、オクノスNT-3(ホリカフーズ)があり、いずれも食品で、医薬品はありません。

人工濃厚流動食

 人工濃厚流動食は、天然の素材を人工的に処理したり、あるいは合成アミノ酸、低分子ペプチドやビタミン、微量元素を加えた栄養剤です。窒素源の違いから、1)半消化態栄養剤、2)消化態栄養剤、3)成分栄養剤に分類されます(表2)。

 糖質には、デンプンを加水分解したデキストリンが主に用いられ、栄養剤の浸透圧をなるべく低下させています。糖質エネルギー比は50-60%程度で、窒素源には卵白、乳タンパク、カゼイン、大豆タンパクを用いるものと、結晶アミノ酸や低分子ペプチドを用いているものがあります。

 タンパク質エネルギー比は15-20%です。100kcalあたり、3gから5g以上の高蛋白の栄養剤もあり、病態に合わせて使い分けることが必要です。

 脂肪は必須脂肪酸補給のため長鎖脂肪酸(LCT)として大豆、コーン、サフラワー油、特にω−3系脂肪酸補給目的でエゴマ油、中鎖脂肪酸(MCT)のために、ココナッツ油などが用いられています。脂肪エネルギー比は20-30%ほどに調整されています2)

人工濃厚流動食の種類と特徴

(1)半消化態栄養剤

 半消化態栄養剤は吸収するためには消化の過程を経る必要があります(表2)。そのため、消化吸収能が低下している場合や、消化管を安静にする必要がある場合には適当ではありません。

 窒素源はタンパク質の形で配合されています。以前はLRD (low residue diet,低残渣食)と呼ばれましたが、residueになり得る食物繊維を含む栄養剤が多数販売されているため、この名称はもはや適切ではありません。

 半消化態栄養剤には医薬品と食品とがありますが、成分上の明確な違いは無く、両者間に組成上の基本的な相違はありません。医薬品は、医師の処方が必要であり、保険適応になるのに対し、食品は入院中には食事として提供され、外来では医師の処方は必要ありませんが、自己負担となります。

 適応としては、消化管機能が正常か、軽度傷害されている程度の患者です(図1)。浸透圧は低いため下痢を起こしにくいといえます。脂肪も十分配合されているので、長期間投与でも必須アミノ酸欠乏をおこしません。味はよく、経口摂取にも適しています。

 一方、半消化態栄養剤は栄養チューブ先端において腸内細菌の増殖で栄養剤のpHがさがると、タンパク質が変性して、ヨーグルトのように固形化(カード化)します。そのため、細径のチューブは詰まりやすい傾向があります。薬品扱いの半消化態栄養剤には、エンシュア(液体)、ラコール(液体)、ハーモニック(液体)があります。また食品は、100種類以上、多数販売されており、それぞれの特徴を知ることは大切です。

(2)消化態栄養剤

 消化態栄養剤は、窒素源が低分子ペプチド(ジペプチド、トリペプチド)とアミノ酸で構成されています。ペプチド栄養剤と呼ばれることもあります(表2)。

 消化管からの窒素源の吸収は、完全に消化され、アミノ酸として吸収される経路と、低分子ペプチドがそのままの形で吸収される経路があります。これらの吸収系では、小腸の低分子ペプチドの吸収速度はむしろ遊離アミノ酸よりはやく、吸収に必要なエネルギーも少なくてすむといわれおり、消化吸収能の低下している場合にも使用可能です3)

 消化吸収能の低下した手術後や、短腸症候群、炎症性大腸疾患などが適応となります(図1)。消化態栄養剤は細菌増殖による固形化(カード化)をおこさず、チューブの閉塞の心配も無いため、外科的にはもっとも使いやすい経腸栄養剤です。成分栄養剤と同様に、浸透圧が高く下痢をおこす危険性が高く、味は良くないため、経口には適さずチューブ栄養に適しています。

 ツインライン(液状)は医薬品扱いで、脂肪も十分含まれています。一方、ペプチーノ(液状)は食品で、脂肪は含まれていません。病態別栄養剤として肝不全用のアミノレバンEN(薬品)があります。

各種栄養剤の適用疾患・病態

(3)成分栄養剤

 成分栄養剤はElemental Diet(ED)と呼ばれます。窒素源はアミノ酸の形で配合されています。消化管からの吸収が容易です(表2)。脂肪の含有量が極めて少なく、全エネルギーの1-2%しか配合されていません。

 長期間EDを投与する場合は、必須脂肪酸欠乏に注意を要し、定期的に脂肪乳剤を経静脈的に投与する必要があります4)。EDはほとんど消化を必要としないため、吸収能の低下した胆、膵疾患、短腸症候群や炎症性大腸疾患(とくにクローン病)に用いられます(図1)。

 脂肪吸収能の低下した状態でも使用が可能です。しかし、浸透圧が高いため、浸透圧性の下痢をおこしやすく、投与方法の工夫が必要とされます。味が悪く、経口摂取するためにはフレーバーで味付けする必要があります。標準タイプのEDは医薬品のエレンタール(粉末)のみです。その他に小児用のエレンタールPと肝不全に対しての特殊病態用栄養剤であるヘパンEDも成分栄養剤です。

粉末状タイプと液状タイプ

 経腸栄養剤はその剤型により、粉末状タイプと液状タイプに分けられます。液状タイプはそのまま使用できますが、粉末状タイプは溶解、調製して使用する手間がかかります。粉末状製剤は軽く、持ち運びに便利で、重たくかさばる液状製剤に比較して、持ち帰りや輸送に手間がかからないという利点があります。

 しかし、粉末栄養剤では調製時に最近汚染の機会が増える可能性が指摘されています。粉末状タイプの栄養剤は製剤上滅菌ができないため、少数(100個程度)ですが粉末状製剤のパック内に細菌が含まれています。このため、ボトルや調製に使う水やお湯に配慮しても、室温で12時間以降に急激に細菌の増殖が認められます1)

 液状タイプは滅菌が可能なので、栄養剤の缶やレトルトバッグ内には細菌は存在しません。最近は、ソフトタイプのバッグでそのままフィーディングチューブに接続可能なクローズドタイプの製品(Ready-to-Hang製剤)も市販されており、これらの製剤を使用することでさらに無菌的な投与が可能です。

 現在、市販されている薬品扱いの経腸栄養剤のうち、成分栄養剤のエレンタール、エレンタールP、ヘパンEDが粉末タイプで、消化態栄養剤のツインラインは液状製剤です(表3)。

 半消化態栄養剤では、アミノレバンENのみが粉末状タイプで、その他、ラコール、エンシュアリキッド、エンシュアH、ハーモニックM、ハーモニックFの5剤は液状製剤です。食品扱いの栄養剤は多数あるが、ごく一部の製剤(カロリアン、ニューメディエフなど)を除いて、そのほとんどが液状製剤となっています。

医薬品経腸栄養剤

医薬品と食品

 本邦で市販されている成分栄養剤と消化態栄養剤は、最近発売されたペプチーノ(消化態)以外は医薬品扱いとなっています。成分栄養剤には一般用の栄養剤としてエレンタール、小児用としてエレンタールP、肝性脳症用としてヘパンEDがあります。

 消化態栄養剤には一般用としてツインラインがあり、肝性脳症用にアミノレバンがあります。医薬品扱いの半消化態栄養剤にはラコール、エンシュアリキッド、ハーモニックMと高濃度のエンシュアH、食物繊維を含有するハーモニックFの6種類があります。食品扱いの栄養剤は非常に多数市販されています。

 食品扱いの半消化態栄養剤を半消化態流動食と呼ぶ場合もあります。医薬品扱いのものには臨床治験が必要ですが、食品にはそれが必要ありません(表4)。2000年以降に発売された経腸栄養剤は、医薬品扱いの半消化態栄養剤となんら成分的に遜色がないといわれています。

医薬品と食品の違い

 食品扱いのものは濃厚流動食として入院中は治療食として入院患者に提供されます4)。食品扱いのものを退院後使用する場合は保険適応でないため、患者の自費購入となり、保険適応のある医薬品の栄養剤に比較して、経済的負担は大きくなります。

 在宅における経管栄養を行う場合、在宅成分栄養経管栄養指導管理料の適応となるのは、現在のところ医薬品扱いの成分栄養剤と消化態栄養剤だけで、エレンタール、エレンタールP、ツインラインの3種類のみです。その他の栄養剤を用いて在宅で経管栄養を行う場合、原則的にはこの指導料を請求することができず、在宅寝たきり患者処置指導管理料でまかなうことになります。

 半消化態栄養剤や食品扱いの半消化態流動食でも、在宅での同様の管理ができるにも関わらず、このような制度が変更されずに存続していることに疑問を投げかける声も多い状況です。

高濃度・低濃度タイプ栄養剤

 通常の栄養剤は1kcal/mlに調整されています。これより濃い高濃度タイプの栄養剤は現在20種類以上市販されています。高濃度タイプは水分量が少なく高カロリーの補給が可能であるため、水分制限のある病態においてや、経口摂取のサプルメント的に使用される場合などに使用されます。

 呼吸不全時には肺の間質に水分が貯留して、酸素交換能が低下しやすいので、水分制限が必要です。呼吸不全用の栄養剤であるプルモケアやオキシーパは1.5kcal/mlとなっています。腎不全時にも水分制限は必要で、腎不全用栄養剤のレナウェルやリーナレンも1.6kcal/mlに調整されています。

 一方、食事の摂取量が少ない患者の栄養補給として、サプルメント的に使用される栄養剤は容量は少なく、1.5kcal/ml, 2.0kcal/mlの高カロリーのものが市販されています。薬品扱いの高濃度タイプは1.5kcal/mlのエンシュアHだけです。高濃度タイプの栄養剤を水で薄めて通常の栄養剤のように使用するのは、ビタミンや微量元素の必要量や細菌汚染の観点からも避けるべきです。

 半固形化栄養剤の中には1kcal/ml以下の低濃度タイプの栄養剤が最近市販されています。これは、半固形化栄養剤使用時の水分補給は逆流が心配であり、半固形化した水を用いるのも手間がかかるため、水分補給をほとんどしなくて済むように開発されたものです。0.75kcal/ml程度に調整されています。カームソリッド、ハイネゼリーアクアなどがそれにあたります。

文献

1) 丸山道生:経腸栄養剤と経腸栄養法の合併症、世界の経腸栄養剤、臨床栄養102: 657-665, 2003
2) 山内健:経腸栄養剤の分類、井上善文、足立香代子編集、経腸栄養剤の種類と選択、P26-30、フジメディカル出版、大阪、2005
3) 吉田祥子:人工濃厚流動食の種類と特性、井上善文、足立香代子編集、経腸栄養剤の種類と選択、P35-39、フジメディカル出版、大阪、2005
4) 岩佐幹恵、岩佐正人:経腸栄養剤の種類と特性、日本栄養59増刊号5、静脈経腸栄養:281-292, 2001

ページトップへ