【連載】なぜ? どうして? 22問でわかる 最新 感染対策

第2回 なぜ必要? 感染対策を行う2つの理由【後編】

監修 藤田昌久

日本医科大学付属病院 医療安全管理部 感染制御室 看護師長 感染管理認定看護師

執筆 藤田昌久

日本医科大学付属病院 医療安全管理部 感染制御室 看護師長 感染管理認定看護師

前編では、安全な医療を提供するための1番の基本であり、医療法でも義務づけられている、という話をしました。
後編では、2つ目の理由について解説します。


理由2 患者さんと自分を守るために欠かせないものだからです

感染対策は病院で働く一人ひとりが行うことに意味がある

 前編で述べたように組織として必要と考えると、制度として取り入れればよいもので、個人が行うものではないような感じを受けるかもしれません。しかし、感染対策というのは、病院で働く全ての人、一人ひとりが行うことに意味があるのです。この中に看護師をはじめとして医療施設で働く全ての人が含まれています。

 病院の中にはさまざまな病気の人がいます。自分が保有している細菌やウイルスで病気を発症する可能性もあるし、ひょっとしたら、インフルエンザや耐性菌などによる院内感染で病気になることもあるかもしれません。そういったゼロではない可能性を考えると、患者さんを守るのはもちろんですが、その患者さんと接する機会の多い看護師自身も守ることが大変重要になってくるのです。

できない理由を考慮しつつ、具体的なやり方を伝えていく

 感染対策というと、手指衛生などの標準予防策が基本となります。100%行うことが理想なのですが、なかなか難しいのが現状です。実施できない理由として「忙しい」「行う理由が理解されていない」ことが理由として多いと感じていましたが、最近では「やらなければと思っているけど、忙しくてできていない」というような状況に変化してきています。ですから、感染対策の実践をより徹底していくためには、病院としてさまざまな方略を駆使していかに対応していくかが重要です。

 今、多くの病院では看護師の人手不足で、臨床現場は非常に忙しくなっています。では、どうしたらいいかというと、この場面ではどの様な感染対策を、どのタイミングでどういう手法で実施するのか、という基本的な知識・技術を身に付けることが必要です。教える・伝える側なら、ただ「感染対策をして」というのではなく、具体的に「この場面で手指衛生をして」と言えば、こういうときには手指衛生が必要なんだと理解してもらえます。さらに、このケースにはこの防護具が必要などと伝えていくようにするとよいでしょう。

 感染管理を看護師が中心として行うというのは、現場の大変さとか、忙しさの中でやりづらさがわかるので、そういった場面をより具体化してできるようなやり方を選択したり、支援をする、というところや、患者さんの背景、現状に合わせた対応を具現化できたり、多職種とのコミュニケーションをとりやすいことが大きなメリットです。

基本の標準予防策を徹底して行うことが大切

 最近、多剤耐性菌の話題がニュースに上りました(memo2)。新しい菌と聞くと何か特別なことをしなければならないと思いがちですが、基本は標準予防策です。この標準予防策を日々正しく行うことがとても重要なことです。

 また、検出部位によって広がりやすい経路もあります。例えば、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)なら腸管に保菌しているので、手洗いの徹底が必要だとか、トイレ環境に菌が付着していることがある、ということを念頭に置いておくとよいですし、アシネトバクターであれば乾燥に強いとか、痰から検出することが多いので痰を吸引しなければならない患者さんがいるなら、環境整備や実施時の防護具の正しい着用が必要とか、環境消毒を一部しようということになります。

 前述したように菌の特徴はいろいろありますが、基本は標準予防策で対応し、もしも菌が検出されたら、検出部位から排菌される状況であれば感染症にかかわらず、接触予防策が必要となります。最近は、さまざまな耐性菌が確認され、院内で発見されたらどうしたらいいのか、と不安になることもあるかもしれません。基本は標準予防策+接触予防策です。この基本がどういうことだったか、もう一度振り返ったり、マニュアルを充実させておくとよいでしょう(point)。

 なぜ必要なのかを忘れずに、確実に行っていってください。

memo2 気をつけたい多剤耐性菌

 多剤耐性菌は、一部判定のための基準がありますが、本来効果ある作用機序の異なる数種類の抗菌薬に耐性をもつ細菌のことをいいます。感染したとしても、通常の免疫状態の人が感染症を発症することは稀ですが、病院のような免疫力の低下している人がいる場所では、感染症を発症する可能性が高まります。

 「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について」(平成19年3月30日医政発第033010号医政局長通知)などに基づいて、適切に院内感染対策を行っていくよう呼びかけています。

Point マニュアルをうまく活用するには

 どうしてもマニュアルは、堅いイメージがありますから、まずは見やすい・使いやすいというイメージと体裁、内容構成を考えることが大切です。今ある、マニュアルが活用しにくいようなら、媒体形式を変更したり、フロー図で対応の流れを示してみるなど改訂し、現場で使用できるものに見直すことも必要です。

 またマニュアルには、現場で対応するあらゆることをカバーしておくことが求められるので、どうしても厚くなる傾向にあります。そういった場合は、マニュアルを抜粋したポケット版を作り、スタッフにはそれを携行してもらい、詳しいことを調べたいときにはマニュアルを参照してもらう、というような形にするのもよいかもしれません。

 マニュアル単独で、使いやすいとか使いにくいとか論じてもなかなか使いやすくはなりません。ポケット版や電子カルテに入れていつでも見られるようにするなどのプラスアルファの工夫と、いつでもそばにあることを前提に考えていくとよいでしょう。

※次回から感染対策関する基礎知識をQ&A形式で解説。

(『ナース専科マガジン』2011年1月号より転載)

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