【連載】検査値をケアに活かす!

【膵疾患】メカニズムと検査値編

解説 小野寺 由美子

埼玉協同病院 副看護部長

解説 村上 純子

埼玉協同病院 臨床検査部 部長

臨床の現場で検査値を活用していくためには、疾患のメカニズムとのかかわりを念頭に置きながら読み取っていくことが大切です。

臓器の働きや疾患がどのようにして起こるかを確認し、検査値の動きと読み取るためのポイントを解説します。


膵疾患のメカニズム

膵臓は、蛋白質分解酵素のトリプシンや脂肪分解酵素のリパーゼ、糖質分解酵素のアミラーゼといった消化酵素を産生する外分泌機能と、インスリンやグルカゴンといったホルモンを産生する内分泌機能を持っています。

消化酵素は、膵臓内では働かず、食物が十二指腸を通過するときに分泌され、消化管内で初めて酵素活性を発揮して消化・分解に寄与します。

ところが、何らかの原因によって消化管への分泌が阻害されると、防御機構が破綻して膵臓内で消化酵素が活性化し、膵組織や周辺組織の自己消化を始めます。

こうして起きた炎症が膵炎です。膵炎では、血中・尿中膵酵素値の上昇のほか、大量の消化酵素が血液中に入ることで血管内皮が損傷されるため、凝固系の障害を示す検査値の変化にも注意が必要です。

急性膵炎の原因の大半は、アルコールと総胆管結石です。発症頻度の性差が大きく、男性:女性=3:1と言われています。男性の急性膵炎はアルコールに起因する割合が女性に比して著しく高くなります。重症例になると多臓器不全に陥ることがあります。

慢性膵炎は、炎症が6カ月以上持続し、膵臓が線維化した状態です。膵機能が保たれている「代償期」、膵機能低下をきたした「非代償期」に分類され、非代償期には消化酵素の減少による脂肪性の下痢、体重低下などがみられます。また、内分泌機能も低下するためインスリン分泌が減少し、血糖値の上昇を引き起こします。

3つの消化酵素の役割説明図

(図)3つの消化酵素の役割

続いて「“膵疾患・胆道系疾患”で行う臨床検査」と「膵疾患を示す検査値」について解説します。

“膵疾患・胆道系疾患”で行う臨床検査

  1. 血液生化学検査
  2. 血液一般検査
  3. 便検査
  4. 画像検査(腹部エコー、CT、MRI)
  5. ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)

膵疾患を示す検査値


UP

  1. Amy
  2. リパーゼ
  3. トリプシン
  4. FDP
  5. D- ダイマー
  6. Glu


DOWN

  1. Ca


所見

  1. [急性膵炎] 膵臓の腫大、滲出液の貯留
  2. [慢性膵炎] 膵石、膵管の不整と拡張、膵嚢胞

判断のカギ「アミラーゼ」と「リパーゼ」

糖質分解酵素のアミラーゼは分子量が小さく、膵炎や膵がんなどによって膵組織が破壊されたり、膵液がうっ帯すると、誘導酵素および逸脱酵素として容易に血中や尿中へ流入します。アミラーゼは膵臓のほか唾液腺からも分泌されているので、数値の上昇=膵炎と判断することはできません。

また、上昇の程度が重症度を示すものでもありません。アミラーゼには、分子構造の異なる膵臓型(P型)と唾液腺型(S型)の2種類のアイソザイムがあるので、膵臓由来かどうかはアイソザイムを調べることで確認できます。

これに対し、脂質分解酵素のリパーゼは膵臓特異性が高く、その大半が膵臓で産生されます。従って、アミラーゼ値とともにリパーゼ値も上昇していれば、膵炎と考えることができます。

慢性膵炎でみられる脂肪性の下痢は、リパーゼが十分に産生されず、脂質の消化吸収ができない状態を反映しています。

膵臓由来の逸脱酵素には、このほかエラスターゼⅠ、トリプシン(PSTI)などがあります。

次回は「胆管閉塞のメカニズムと検査値」について解説します。

(『ナース専科マガジン』2012年8月号から転載)

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