【連載】すぐに使える移動・移乗テクニック

寝衣交換の手順・コツ~負担なくできる方法

解説 熊谷祐子

現・自治医科大学看護学部 講師

援助をより効率的に、よりスムーズに行うための基礎理論として、基礎理論の2回目は「力の働く方向と大きさ」に関する原理を取り上げます。


パジャマ交換のコツは「準備」と「3ステップ動作」

パジャマや寝衣を着替える際は、患者さんの腰を上げたままの状態でズボンの上げ下ろしを行うため、重くて腰痛の原因になっていました。今回はこの問題を解消するために、物理学的視点を取り入れた方法で実践してみましょう。さらに、パジャマや寝衣の袖をスムーズに通す方法も実践してみましょう。

前回までに解説した基本原理の中でパジャマ交換に関連するのは、主に作用・反作用とトルクの原理です。作用・反作用の力は患者さんが自分で腰を浮かせるときに用い、トルクはベッド上で患者さんの身体を回転させるときなどに用います。

また、スムーズにパジャマを脱着するには、いくつかの技術があります。中でもポイントになるのが、着替え用のパジャマの準備(たたみ方)と、3ステップに分けた脱着動作です。これらを押さえながら、全体の流れを追うことにします。

  1. 着衣の準備(1)着替え用のパジャマは袖だたみに
  2. 着衣の準備(2)迎い袖しやすいようにたたむ
  3. 着衣時の3ステップ動作:下衣の着衣は無理せず足首・膝・大腿の3段階で(脱衣時は逆になる)

実践方法

上衣を着替える

1.患者さんに「パジャマを着替えますね」と声かけをして、着替え用のパジャマの上衣を患者さんの向こう側に置きます。

[ラクらくのコツ]

着替え用のパジャマは着衣しやすいようにあらかじめ袖だたみにしておきます。パジャマの左右を意識できるので、反対側の袖を通してやり直すといったミスが少なくなります。

2.患者さんの両手を胸の上部で組みます。患者さんの踵をできるだけ臀部に引き寄せる要領で膝を立て、看護師は肩と膝に手を置いて患者さんを手前に倒します。

[ラクらくのコツ]

力が分散してしまわないよう両手は胸の上部で組み、身体をできるだけコンパクトにします(慣性モーメントとトルクの原理)。


3.袖を引き抜き、脱いだパジャマを身体の下にまとめます。

[ラクらくのコツ]

パジャマを脱がせるときは「肩まで」、次に「肘まで」、そして「手首まで」の3つのステップに分けると、スムーズに行うことができます。


4. 着替え用のパジャマの袖を患者さんの手に通します。このとき看護師の手は、片方で患者さんの手を取り、もう片方で袖を伸ばしていきます。袖を通し終わったら、背中部分を整えます。

[ラクらくのコツ]

袖の中で患者さんの手を持ち、腕を伸ばすとスムーズに袖を通すことができます。袖は迎い袖しやすいようにたたんでおきます。


5.「戻りましょうね」と声かけをして、患者さんを仰臥位にし、ベッドの反対側に移動します。反対側の袖も同様の方法で脱着します。最後にボタンを留めてパジャマの乱れを整えます。

[ラクらくのコツ]

パジャマを着るときも「手首まで」、次に「肘まで」、そして「肩まで」の3つのステップに分けると、スムーズに行うことができます。

下衣を着替える(麻痺がない場合)

1.着替え用のパジャマの下衣を患者さんの横に置きます。患者さんの両手を胸の上部で組み、両足の膝を立てます。

2.患者さんに「足底部でベッドを踏んでください」と声かけし、力を入れてもらいます。臀部が上がったら、パジャマのズボンを大腿まで下ろします。

[ラクらくのコツ]

着替え用のパジャマは着衣しやすいようにあらかじめ袖だたみにしておきます。パジャマの左右を意識できるので、反対側の袖を通してやり直すといったミスが少なくなります。


3.腰を下ろしてもらい、ズボンを膝、次に足首まで下ろしたら、片足ずつ脱がせます。

[ラクらくのコツ]

ズボンも同じように、「大腿まで」、次に「膝まで」、そして「足首まで」というように3つのステップに分けると、スムーズに行うことができます。最後は、踵を包み込むようにして足首から外します。


4 着替え用のズボンを足首まではかせ、次に膝までたくし上げながら引き上げます。さらに、ウエストゴム部分を臀部近くまで引き寄せます。

[ラクらくのコツ]

ズボンをはくときも「足首まで」、次に「膝まで」、そして「大腿まで」の3つのステップに分けます。パジャマに足を通すときには、つま先を保持するとスムーズに行えます。ズボンの裾はたくしておきます。


5 再び足底部でベッドを踏んでもらい、臀部が上がったら手早くズボンをウエストまで引き上げます。最後にシワを伸ばして整えます。

下衣を着替える(片麻痺がある場合)

1.健側の膝を立てます。患者さんに「膝を立てた方の足底部でベッドを踏んでください」と声かけし、力を入れてもらいます。臀部が上がったら、パジャマのズボンを大腿まで下ろします。


2.健側の足を伸ばして、患側も同時にズボンを足先に向け下げたら、健側から脱がせます。
[ラクらくのコツ]

片麻痺がある場合、脱ぐときは健側から、着るときは麻痺側から行います。足を保持するときは踵を包み込むように手を添えると、患者さん・看護師ともに余分な力を入れずに済み、楽に行えます。


3.着替え用のズボンを麻痺側に通します。踵を包み込むようにして足を保持し、膝下まで引き上げます。

[ラクらくのコツ]

ズボンに足を通すときは、たくしておいたズボンの中で、患者さんの足を看護師の片手からもう一方の手に手渡すようにしっかり保持しながら行います。


4.ズボンに足を通すときは、たくしておいたズボンの中で、患者さんの足を看護師の片手からもう一方の手に手渡すようにしっかり保持しながら行います。

[ラクらくのコツ]


健側はズボンが膝上にくるまで、膝を立てたまま引き上げておくと、その後、臀部まで引き上げやすくなります。

5.再び健側を立てて足底部でベッドを踏んでもらい、臀部が上がったら手早くズボンをウエストまで引き上げます。最後にシワを伸ばして整えます。

今回の“なるほど”ポイント

  1. 作用・反作用の原理を使い、患者さんの力を活用して身体(臀部)を浮かせる
  2. パジャマの置き方、たたみ方など事前の準備ができれば、よりスムーズに着替えができる
  3. 身体を保持するときは“くびれ”部分を意識して保持すると安定する
  4. 片麻痺がある場合、パジャマを脱ぐときは健側から、着るときは麻痺側から行う

参考文献

自立のための生活支援技術、ナーシングサイエンスアカデミー、2010

看護に生かす物理学、学研メディカル秀潤社、2009

次回は「患者さんが持つ機能を活かして行う車椅子移乗」を解説します。

(『ナース専科マガジン』2011年4月号より転載)

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